第18話 資金源への道
夜明け前の薄暗い空の下、芹沢と斉藤は車を走らせながら、次なる目標について話し合っていた。目的地は、地方銀行の理事長・村上修一が普段訪れるという別荘地。資料によると、その別荘は再開発計画の資金運用に関する重要な拠点とされていた。
「村上修一……計画の資金源を握る男か。」
斉藤はハンドルを握りながら低く呟いた。
「やつを突き止めるだけじゃ足りない。資金の流れそのものを抑えなきゃ、計画の全貌は明らかにならないぞ。」
芹沢は助手席で資料をめくりながら答えた。
「その通りです。資金の流れを示す具体的な記録が見つかれば、計画の全貌だけでなく、背後にいる他の黒幕たちも明らかになるはずです。」
「だが、その村上ってやつが簡単に口を割るとは思えない。」
斉藤が険しい表情で言うと、芹沢は静かに微笑んだ。
「彼の口を割らせる必要はありません。彼の行動や心理を観察すれば、十分な情報を引き出すことができるでしょう。」
数時間後、二人は別荘地の入り口に到着した。高いフェンスで囲まれた敷地内には、いくつもの豪華な建物が並んでいる。その一角に村上の所有する別荘があった。
「厳重に警備されているな……。」
斉藤は遠くに見える黒服の警備員たちを観察しながら言った。
「このまま突入すれば、間違いなく返り討ちに遭う。」
芹沢は周囲を見渡しながら、慎重に考えを巡らせた。
「まずは彼らの警備体制を観察しましょう。敵の動きに隙があるはずです。」
二人は車を少し離れた林の中に隠し、徒歩で接近を開始した。
別荘近くの茂みに身を潜めながら、芹沢は村上の行動を監視した。村上は敷地内を悠然と歩きながら、部下たちに指示を出している。その姿からは、自信と余裕が感じられる。
「彼は自分が安全だと信じている……だが、その余裕が逆に彼の弱点になる。」
芹沢は村上が部下と話している様子をじっと見つめた。
「斉藤さん、彼が言葉を選ぶとき、わずかに間を置いています。恐らく、隠したい事実があるからでしょう。」
斉藤は双眼鏡を下ろしながら言った。
「それが分かったとして、どうする?」
「その隙をついて、彼の行動を誘導します。」
芹沢は資料を手に取り、村上に関する記述を再確認した。そこには、彼が定期的に別荘内で開かれる非公式の会合を主催していることが記されていた。
「村上がもっとも警戒しているのは、この非公式の会合に関する情報です。それを逆手に取る作戦を考えます。」
その夜、芹沢は村上を混乱させるための計画を実行に移した。彼は村上が使用するフェンスの近くに、小型のメモを仕掛けた。そのメモには、彼の秘密の会合について警告するような文面が書かれていた。
「これを見た彼がどう反応するかで、次の手が決まります。」
数時間後、警備員の一人がメモを発見し、それを村上に届けた。村上はそれを読み、目を見開いた。
「これは……どういうことだ?」
彼は慌てた様子で電話をかけ始めた。その表情は先ほどまでの余裕を失い、どこか苛立ちが感じられる。
「やはり動揺していますね。」
芹沢は遠くからその様子を観察し、静かに呟いた。
「彼の次の行動が、この状況の鍵になります。」
その後、村上は部下たちに急な指示を出し始めた。どうやら、秘密の会合を予定より早めて行おうとしている様子だった。
「今夜、ここで何かが起こる……。」
芹沢は村上の動きから、それを確信した。
「斉藤さん、今夜が勝負です。会合の現場に潜入し、資金の流れに関する具体的な証拠を押さえましょう。」
斉藤は緊張しながら拳銃を確認し、頷いた。
「やるしかないな。お前の計画に賭ける。」
夜が更け、別荘には高級車が次々と到着していた。その中からスーツ姿の男たちが降り立ち、建物内へと入っていく。村上が主催する会合が始まろうとしていた。
「今がチャンスです。」
芹沢と斉藤は警備員の隙をついて、別荘の裏手から内部への潜入を試みた。慎重に進む二人は、会合が開かれている部屋の近くまでたどり着いた。
その部屋では、村上と数名の参加者が議論を交わしていた。テーブルの上には、一冊の分厚いファイルが置かれている。その中には、計画に関する詳細な情報が隠されているに違いない。
「目標はあのファイルですね……。」
芹沢が囁いた瞬間、背後から微かな足音が聞こえた。二人は振り返ると、黒服の男が銃を構えて立っていた。
「動くな。」
芹沢と斉藤は息を飲み、静かな闇の中で次の一手を考え始めた――。
次回予告
潜入作戦中に捕らえられた芹沢と斉藤。彼らの前に立ちはだかる村上修一の正体が明らかになる――。
次回、「黒幕の取引」――心理戦と行動力のすべてを賭けた最後の戦いが始まる。
読者へのメッセージ
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました! 村上との対決がいよいよ始まります。芹沢と斉藤が追い求める真実は、彼らをどこへ導くのか。次回もどうぞお楽しみに! コメントやご感想をお寄せください!
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