第12話 北城倉庫の罠

夜の闇に包まれた北城倉庫。その内部では、斉藤康隆と芹沢孝次郎を中心とした捜査チームが、膨大な資料を解析しつつ、不意の襲撃に備えていた。外ではSUVのエンジン音が次第に近づき、緊迫した空気が倉庫全体を包み込んでいた。


「来たぞ……!」


斉藤が低く呟き、拳銃を手に入口へ向かった。その背後で芹沢は捜査員とともに資料の隠匿を進めていた。資料を詰めたバッグを見つめ、芹沢は静かに言う。


「この資料が外に出れば、彼らの計画は崩壊する。だからこそ、必死で追いかけてくる。」


斉藤はバッグに視線を移し、短く頷いた。


「必ず守る。お前は資料と一緒に裏口から出ろ。俺たちが時間を稼ぐ。」


芹沢は一瞬躊躇したものの、バッグを肩にかけ、捜査員に指示を出した。


「わかりました。ただし、無駄に命を賭けるのはやめてください。」


「お前こそだ。」


斉藤がそう言い残し、入口へと駆け戻る。


2. 銃声と炎の中で


外部では、SUVから降りた黒服の男たちが倉庫に向かって展開を始めていた。銃口が一斉に倉庫の入り口に向けられる。


「突入準備、開始!」


黒服のリーダーと思われる男の指示が飛ぶと、閃光弾が放たれ、倉庫内部が一瞬白い光に包まれた。その間に、複数の男たちが一気に押し入ってくる。


「動くな!」


斉藤は素早く遮蔽物に身を隠し、冷静に拳銃を構えた。銃声が響き渡り、火花が散る中、彼は正確な射撃で侵入者たちを押し返す。


「芹沢、今だ! 裏口から出ろ!」


芹沢は斉藤の声に応じ、捜査員とともに裏口へと走った。しかし、裏口にも黒服の男たちが待ち構えていた。


「迂回します!」


芹沢は捜査員に指示を出し、倉庫の横手へ向かった。だが、その道もすぐに敵の包囲網に塞がれる。


「さすがに用意周到ですね……。」


芹沢は冷静に辺りを見渡し、目の前の黒服たちを観察する。その動きの中に、一瞬の隙を見出した。


「今だ!」


芹沢は隠し持っていた催涙スプレーを素早く使い、黒服たちの目を眩ませた。その隙に捜査員とともに駆け抜け、倉庫の反対側へと出ることに成功する。


「芹沢さん、こっちです!」


捜査員が呼ぶ方向へ駆け寄ると、そこには倉庫の裏手に隠された小道が続いていた。


「この道を抜ければ外に出られる!」


しかし、黒服の男たちもすぐに追いかけてきた。足音が背後から迫る中、芹沢たちは必死に走り続けた。バッグの中の資料が揺れ、彼の心臓は高鳴る。


「絶対に失うわけにはいかない……!」


その時、捜査員の一人が振り返り、追手に向かって銃を放った。


「ここで抑えます! 先に行ってください!」


「だが……!」


芹沢が止まろうとした瞬間、捜査員が強い声で言い放った。


「ここが踏ん張りどころです! 行け!」


芹沢は唇を噛みしめながら、その場を後にした。


小道を抜けると、そこには待機していた車が一台停まっていた。若手刑事が車から顔を出し、芹沢に叫ぶ。


「早く乗ってください!」


芹沢は車に飛び乗ると、すぐにエンジンが唸りを上げ、小道を駆け抜けていった。


「斉藤さんは?」


「まだ応戦中です! でも、彼ならきっと大丈夫だ。」


芹沢は助手席でバッグを抱えながら、祈るような気持ちで背後を振り返った。


その頃、倉庫内では斉藤が孤軍奮闘していた。周囲の捜査員たちは次々と黒服の男たちに倒され、彼一人が最後の防衛線として立っていた。


「来いよ……どんな手を使おうと、俺は倒れない。」


彼の背後には、資料の一部が隠されたロッカーがあった。それは、芹沢たちが運び出せなかった分を咄嗟に隠したものだった。


黒服のリーダーが斉藤に向けて銃口を向ける。


「無駄な抵抗はやめろ。お前一人で何ができる?」


斉藤は深い息をつきながら答えた。


「俺一人でも……正義を守るには十分だ。」


次の瞬間、再び銃声が響き渡る――。


次回予告


激しい戦いの中、斉藤と芹沢が守り抜こうとする真実。その裏で、大山家のさらなる陰謀が動き出す。果たして、彼らは計画書を公にできるのか? 次回、「真実の代償」――正義の光が闇を貫くときが来る。


読者へのメッセージ


最後までお読みいただきありがとうございました!

今回のシーンでは、真実を巡る攻防がさらに激化しました。斉藤と芹沢が守り抜こうとする正義がどのような形で花開くのか、次回もぜひご期待ください! あなたの感想やコメントが、次の物語を紡ぐ原動力になります。お待ちしています!

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