第11話 真実の罠

夜明け前の静けさを裂くように、捜査本部の駐車場では激しい攻防が繰り広げられていた。黒服の男たちが一斉に押し寄せ、捜査員たちは必死に応戦している。斉藤康隆はその最前線で指揮を執りながら、何とか彼らを食い止めようと奮闘していた。


「奴らの狙いはUSBメモリだ! 絶対に渡すな!」


斉藤の叫び声が響く中、黒服の一人が鋭い目つきで彼に近づいてきた。手にはスタンガンが握られている。斉藤は素早く身を翻し、その男を地面に押し倒した。


「次は誰だ?」


彼の背後で、また別の男が銃を構えたが、すかさず応援の刑事がその男を取り押さえた。斉藤は冷たい汗を拭いながら、心の中で計画を巡らせていた。


一方、捜査本部内では、芹沢孝次郎が資料をにらみつけながら、新たな矛盾点を発見していた。USBメモリの内容をさらに掘り下げた結果、計画書に記された名前の中に、ある異質なものを見つけたのだ。


「この名前……?」


それは大山家と直接的な関係がないように見える人物だったが、その役職が目に留まった。


「中央官庁の高官……。この再開発計画は、大山家単独のものではない。もっと上層部が絡んでいる。」


芹沢は唇を引き結び、椅子から立ち上がった。資料を手に取り、会議室を飛び出して斉藤がいる現場へ向かおうとする。しかし、廊下に出た瞬間、背後から足音が迫った。


「動くな。」


冷たい声が響き、芹沢は立ち止まった。振り返ると、黒服の男が拳銃を構えている。


「あなたが芹沢孝次郎だな。USBメモリを渡してもらおうか。」


芹沢は落ち着いた表情で男を見据えた。


「あなた方が欲しいのは、本当にこのメモリだけですか? それとも、私が知り得た情報すべてを葬り去りたいのですか?」


男はわずかに眉を動かした。


「余計な詮索は無用だ。手間をかけさせるな。」


芹沢は一瞬の隙を見つけ、手に持っていたファイルを床に落とした。その音に反応して男の視線が下がった瞬間、芹沢は廊下の角に身を隠し、懐から携帯電話を取り出した。


「斉藤さん、今すぐ本部内へ戻ってきてください。内部に侵入者がいます。」


「分かった。すぐに行く。」


芹沢が通話を終えると、男が再び姿を現した。芹沢は走り出し、資料を抱えたまま別の階へと向かった。


駐車場での戦闘がようやく収束し、斉藤が捜査本部に戻ると、芹沢は書庫の一角に身を潜めていた。手には新たな発見が記されたメモが握られている。


「斉藤さん、これはただの再開発計画ではありません。」


芹沢は息を整えながら話し始めた。


「計画書とUSBメモリには、表向きの情報と裏の情報が混在しています。そして、その裏の情報には、地元経済を超えて中央政界の利権が深く絡んでいることが示唆されています。」


「中央政界……そんな大事に発展するのか?」


「ええ。大山家はその一部を担っているだけに過ぎません。この再開発計画は、国家レベルで仕組まれたものであり、その利益は特定の人物や団体に流れる構造になっています。」


斉藤はその言葉に顔を険しくした。


「それが事実だとしたら、ますますこの証拠は重要だな。しかし、それを公にするにはさらなる証拠が必要だ。」


芹沢は頷き、言葉を続けた。


「そのためには、計画書に記された取引現場を直接調査する必要があります。それがこの『北城倉庫』です。」


芹沢が指差したのは、USBメモリに記録されていた具体的な取引場所の一つだった。


「そこに、さらなる証拠が隠されている可能性が高い。」


斉藤はすぐに指示を出した。


「よし、部下を連れてそこへ向かう。芹沢さん、君も同行してくれるか?」


芹沢は軽く笑みを浮かべた。


「もちろんです。ここまで来たら最後まで付き合いますよ。」


数時間後、斉藤たちは北城倉庫に到着した。その場所は人気のない郊外にあり、外観はただの古びた倉庫に見えた。しかし、内部には何かが隠されているという確信があった。


「周囲を警戒しろ。敵が潜んでいる可能性がある。」


斉藤が部下に指示を飛ばす中、芹沢は倉庫の入り口で立ち止まり、視線を周囲に巡らせた。


「この場所……ただの倉庫ではないようですね。」


彼が手袋をはめてドアを押すと、中には膨大な書類の山と複数のコンピュータが設置されていた。その一角に目立つ形で置かれていたのは、計画書とは異なる厚いファイルだった。


「これは……?」


芹沢が手に取ると、それは地元住民の名前が記されたリストだった。リストには、一人一人の経済状況や土地の評価額が詳細に記録されている。


「これが、大山家が圧力をかけるために使った資料だ……!」


斉藤がその言葉に答えた瞬間、倉庫の外からまたしてもエンジン音が近づいてきた。


5. 新たな追撃


「奴らが来たか!」


斉藤はすぐに拳銃を構え、部下たちに緊急事態を伝えた。芹沢は冷静にファイルをバッグに押し込み、斉藤に一言告げた。


「これを守り抜けば、彼らの計画を完全に暴けます。」


「だが、それは命がけだ。」


「覚悟の上です。」


次の瞬間、倉庫内は再び激しい攻防の場と化した――。


次回予告


北城倉庫で発見された新たな証拠。その背後には、大山家を超えた更なる黒幕の存在が浮かび上がる。果たして芹沢と斉藤は、この真実を守り抜けるのか?

次回、「最後の砦」――真実と正義を賭けた戦いが、ついに佳境を迎える。


読者へのメッセージ


最後までお読みいただきありがとうございます!

事件の背後に隠された巨大な構造がついに明らかになりつつあります。大山家を超えた更なる陰謀に挑む斉藤と芹沢の戦いが、次回も熱く展開します。ぜひご期待ください! コメントやご感想もお待ちしています!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る