概要
庭を与えられた平民が大金持ちになった。
閉店寸前の寂れた食事処が王室御用達店に変貌。
その庭で過ごした主人の大病が完治した。
どれも信憑性のない与太話だと思うだろう。だが、全て事実である。
庭師の名はガデニア。人気のない西の森で暮らす、偏屈で美しい女性だ。
仲介人のルーツに連れられてランドール家を嫌々訪れたガデニアは、廃れた中庭で長女デイジーと出会う。
父の目が届かないところで継母と義妹に虐げられるデイジーは、亡き母の思い出が詰まった庭を、わがままな義妹への誕生日プレゼントとして奪われようとしていた。
そこでガデニアは「デイジーのためなら庭を創る」と宣言したのだが、激昂した継母に「一晩で庭を完成させなければ、ヴァレリア王国中に醜聞を言いふらす」
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!色艶やかな人物・情景描写。まるで花が咲き誇るよう。
本当に素敵なファンタジー作品です。花が咲くシーンが本当に色艶やかで、瞼の裏にその情景が浮かぶようでした。
貴葵さんは人物の丁寧な心情描写や色鮮やかな情景描写が強みだと勝手に感じているのですが、それが十二分に生かされた作品だと思います。本当に大事に丁寧に書かれているのがよく分かりました。この文章を読めば、皆様の瞼の裏にも豊かな色彩が呼び起こされると思います。あと個人的に、キャラクターの発する言葉の独特な言葉遊びと言うべきか、言い回しがすごく好きです。
また、一万字という字数制限のある中で不遇描写やスカッとする展開、世界観の説明まで全て網羅し、きちんと一万字以内(しかもぴったり)に収める技量が素…続きを読む - ★★★ Excellent!!!朽ち果てた庭を真に救えるのは、ガデニア様しかいないでしょう
たかが庭、されど庭。
庭一つで人生を変えてくれる庭師が森で暮らしていた。
庭師の名前は、ガデニア。偏屈な美女であるが、腕はたしか。
そんな彼女の元には、今日もやっかいかつ難題な庭師の仕事が舞い込んでくる。
この作品、本当に一万文字ですか。
と、言いたくなるほど、濃密でわくわくが詰まった作品。
世界観の描写も色鮮やかで美しく、幻想的でまさに童話のよう。
読んでいるだけで、花や木の香りがぶわっと感じるほどだ。
庭師が人生を変えるなんて、と最初は思うが、読んだら最後。
ガデニア様なら出来る、と言い切れるほどに彼女の手腕は素晴らしい。
勿論、庭だけではなく、ガデニア様。
彼女自身の魅力もたくさん…続きを読む - ★★★ Excellent!!!いつか、再び花開く日まで
ガデニアは庭師なのに、いつも黒づくめの服を纏っています。その理由はラストまで明かされません。そして不思議な力を持つ庭を造ります。何のために?誰のために?……それは依頼人のためであると同時に、ガデニア自身の喪失感を埋めるためでもあるのでしょう。
花の色、緑の木漏れ日、水の音。その価値を本能的に理解している人のためにしか、庭を造ろうとはしない、不思議な庭師ガデニア。それは彼女自身が美しいものが失われる哀しみを知っているから。そして命の再生の歓びを人々に伝えたいから。そんな美しいファンタジーが、限られた字数の中できちんと回収されていきます。作者様の構成力に脱帽です。 - ★★★ Excellent!!!最後に解き明かされる彼女の秘密
ヴァレリア王国にいる庭師、ガデニア。彼女が手がけた庭には、幸運が舞い込むという噂がある。
平民が大金持ちになり、廃れた店が大繁盛して、大病が完治する。
にわかには信じがたいかもしれない。しかし、これらは全て真実であった。
不思議な力を持つ偏屈で美人な庭師。そんな彼女の元に新たな依頼が舞い込んできた。
魅力的なキャラクター、色鮮やかな表現力、緻密に作り上げられた構成。
そして最後に明かされる物語の根幹。
全5話、1万字の短編小説。それなのに読み終えた後の爽快感と満足感は長編作品にも匹敵する。
この感覚だけは実際に読んでいただかないと味わうことが出来ないと思います。…続きを読む