神秘的な技術を持つガデニア。彼女の物語をもっと読みたくなりました

 ファンタジーとして「味わいたい」と思うものをたくさんくれる、素敵な作品でした。

 ヴァレリア王国の中で「庭師」として名を馳せているというガデニア。
 彼女は、とある貴族の屋敷に呼ばれ、庭を蘇らせることを依頼される。

 長女であるデイジーは、継母であるマージョリーや、義妹となった太った娘リリィに虐げられる日々を送っている。デイジーの亡き母が遺してくれた庭すらも、わがままなリリィに奪われようとしていた。

 ガデニアはそんなデイジーのためになら庭の手入れをしてもいいと条件を出し、瞬く間にそこを美しいネモフィラでいっぱいにしてみせる。

 ガデニアという女性の謎めいた魅力。どことなく「女性版ブラック・ジャック」のような厳しさと、そして人間離れした高い技術。
 庭を再生することにより、同時にそこに眠っていた「人の想い」を蘇らせ、わだかまっていた問題も解決してみせる。

 更に、彼女の持つ「技術」にはある秘密があり、それがこの世界観に更なる深みを与えてくれているのが素晴らしかったです。

 連作でもいいし、長編としてのストーリーでもいいし、もっとこのガデニアの物語を読みたいなと思わされました。

 ガデニアはどんな生まれを持ち、どういう経緯でこんな神秘的な技術を持つ存在となったか。彼女の力の根源となる「存在」との過去とか。
 とにかくポテンシャルに満ちた作品で、読む人それぞれに様々な感興を与えてくれることと思います。壮大で、そして不思議なあたたかみのある作品、是非とも手に取ってみてください。

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