この物語は、ある有名な庭師ガデニアの長い長い人生の一端である。
わたしはこの作品を、文章とイラストを通じて知っていきました。登場人物を想像し、描くことは難しいものですが、なぜかガデニア様の周りにいる彼らは頭にパッと浮かんできたのです。
彼らは作者や物語の中だけでなく、読者の中でも生きている。そう実感しました。
この物語の確信は、後半にギュッと詰まっています。最初の掴みも上手く、貴葵さんの手腕が存分に発揮されています。
最後のシーンにはアッと驚かされますし、最後の最後でガデニアの物語なんだなと思わされました。
彼女たちは、童話のようなこの世界で生きています。
花を愛するちょっとおかしな彼らの日常を、みなさんもご覧あれ。
ガデニアは庭師なのに、いつも黒づくめの服を纏っています。その理由はラストまで明かされません。そして不思議な力を持つ庭を造ります。何のために?誰のために?……それは依頼人のためであると同時に、ガデニア自身の喪失感を埋めるためでもあるのでしょう。
花の色、緑の木漏れ日、水の音。その価値を本能的に理解している人のためにしか、庭を造ろうとはしない、不思議な庭師ガデニア。それは彼女自身が美しいものが失われる哀しみを知っているから。そして命の再生の歓びを人々に伝えたいから。そんな美しいファンタジーが、限られた字数の中できちんと回収されていきます。作者様の構成力に脱帽です。
ヴァレリア王国にいる庭師、ガデニア。彼女が手がけた庭には、幸運が舞い込むという噂がある。
平民が大金持ちになり、廃れた店が大繁盛して、大病が完治する。
にわかには信じがたいかもしれない。しかし、これらは全て真実であった。
不思議な力を持つ偏屈で美人な庭師。そんな彼女の元に新たな依頼が舞い込んできた。
魅力的なキャラクター、色鮮やかな表現力、緻密に作り上げられた構成。
そして最後に明かされる物語の根幹。
全5話、1万字の短編小説。それなのに読み終えた後の爽快感と満足感は長編作品にも匹敵する。
この感覚だけは実際に読んでいただかないと味わうことが出来ないと思います。
不思議な庭師が紡ぐ物語。是非、最後までご覧ください!
彼女が庭を手がけたなら、幸運が舞い込む。そんな奇跡の庭を創るヴァレリア王国一の庭師・ガデニアの話は紛れもない真実でした。
庭師の仕事が年中ひっきりなしにやって大変そう。と思いきや、ガデニアは「私は肩書で庭を創ったりしない」と依頼人の前で言い切る芯の強い女性でした。彼女の弟子と交渉人は苦労していそうだと同情しつつも、ふつくしいガデニアに好感度が急上昇してしまうのが不思議です。
義母と義妹にしいたげられる少女のために創る庭は、どのような出来になるのでしょうか。
壮大なハイファンタジーになりそうな予感に、続きを望む方は少なくないはず。カクヨムネクスト賞の受賞をともに祈りましょう!