第二章 東方戦争篇
第8発目 極東の国陽月国
道に沿って陽月国へと向かっていると、所々で竹林を見掛けるようになってきた。
俺が思った通り、和風っぽい国…
「……あそこが良さそうだな…10式戦車、右に90°超信地旋回…!」
辺りを見渡していると丁度10式戦車を隠せそうな洞窟を見つけたため、10式戦車をそこに誘導し始める。
「何をするつもり…?」
突如道を外れたため、ミハイルはこちらを見上げながら驚いていた。
「このまま街に行ったら、混乱を招く可能性がある。だから、10式を隠す。いざとなれば、召喚できるからな!」
「そんなことが…」
洞窟の前まで来た10式戦車をバックで洞窟内に入れながら、ミハイルからの質問に答える。
「必要な荷物だけ持って、他は中に入れるか」
10式戦車が止まり、俺はミハイルを外に出した後、食料が入った袋を中へと入れ、そのままハッチを閉めた。
「それじゃあ、ここからは徒歩で向かうとしようか」
「あぁ…陽月国で、ゆっくりと観光したことがないから楽しみだ…!」
俺とミハイルはそこから歩いて、近くの陽月国の街を目指すことにした。
○
それから2時間後、少し長い道程を得て、俺らは無月村という看板が建っている所に辿り着いた。
「…商店とかはやっていないようだな……」
「というより、人が居ない…?」
無月村に入って見たのだが、商店らしき建物はあるが、人の気配がなかった。
「……なーんか、不気味だな…争った跡とかないし…」
「ああ…となると、戦場となる可能性があるため避難した…が正しいか?」
「かもな…」
「んじゃあ、首都の方に向かうか…流石にそっちなら人とかも居るだろ…」
「……まずい…」
首都方面に向かおうと提案した時、ミハイルはいきなり腰の鞘に納めているレイピアをいつでも抜刀できるように身構えた。
「おやおや…
ミハイルが睨みつけている方を見てみると、無駄に長く黒ひげを伸ばしている男が、その髭を触りながら、十数人の騎士を引き連れ、こちらに向かって歩み寄って来ていた。
どうやら、俺らを兵士と誤認しているようだ。
「あの…!俺らただの旅人なんだけど!?」
「ふっ、旅人がそんな服を着る訳がないでしょう…?この私を騙すのであれば、もっとましな嘘をつくことです」
男は、俺らの話を聞く耳持たずと言った感じだった。
「…恐らくあの態度だと、僕の言葉も聞かないな…大翔くん、走る準備をしてくれ…」
「いや、10式を呼ぶ。そっちの方が安全だからな…」
「分かった…僕に合わせてくれ」
「了解…!」
俺とミハイルは、この場から脱出するため、耳打ちした後、それぞれ身構える。
「何をコソコソと……捕まえなさい!」
男は俺らが話しているのを見て不審に思ったのか、兵士達に命令した。
「今だ!」
「出てよ、10式戦車!」
兵士達が向かってくる中、俺は10式戦車を目の前に呼び出すことに成功した。
「うおっ!?」
「な、なんだこれ!?」
「竜か!?」
突然に魔法陣から出現した10式戦車に兵士達は驚き、その場に足を止めた。
「聖なる炎よ! 今こそ我が剣に纏わり、我が敵を薙ぎ払え! 魔剣流焔!
兵士が足を止めたタイミングで、10式戦車を足場にして空に飛び上がったミハイルは、炎を纏わしたレイピアを兵士達目掛けて振った。
レイピアを振ると、炎が大きな斬撃となり兵士達に向かっていき、危険だと判断した兵士達は後ろへと下がった。
「大地の息吹よ、今こそ吹け! 風魔法、
ミハイルはそこに風魔法を追加する。すると、地面で燃えていた炎が、一瞬にして2m近くまで激しく燃え始める。
「ミハエル!」
「はいっ!」
炎の壁で兵士達を足止めしている間に、俺はミハイルを10式戦車中へと入れた後、俺も中に入り動かし始める。
「小癪な! 水魔法でこんな壁、消し去ってしまえ!!」
向こうは火を消すことに必死になっており、火の壁もそう長く持たないだろう。
「ミハイル、首都の方向は!?」
「ここから南東の方角です!」
「了解! 10式戦車、道に反って南東へ!!」
炎の壁があるうちに、俺はミハイルから陽月国の首都の方角を聞き、その方向に移動するよう10式戦車に命じた。
10式戦車は命じられた通り、南へ向かうべく、そのまま炎の壁へと突っ込んで行った。
「な、何だ!?」
いきなり炎の壁から10式戦車が出てきたため、男は驚き目の前に居た兵士達は避けようと道を開ける。
――キュラララララララ!!!!
そのまま10式戦車は、驚きのあまり硬直している兵士達を置いて、南の方に伸びている道へと入って行く。
「なっ、何をしておる! 早くあれを追わんかーー!!」
恐らく首都へと伸びているだろう道に入る直属、男の声でそんな叫び声が聞こえてきたが、キャタピラ音などでよく聞こえないため、無視することにした。
○
「ふぅ~…何とか撒けたようだな……」
無月村を出てから数十分後、道に沿って10式戦車が走る中、俺は撒けたことを確認し、一息ついた。
「ですが、ここからが大変だ…あの兵士達が掲げていた国旗は、コルッツ王国の物…あの男の報告次第では…コルッツ王国とは敵対関係になる可能性が十分にある……」
砲手席から、ミハイルが先程によりコルッツ王国との関係が悪くなると伝えてくる。
だかなぁ…絶対王政を敷いている国と仲良くなりたいとは一切思ってないんだよなぁ……
「まぁ何となるだろ…」
俺はミハイルに楽観的な回答をする。
「…」
俺の回答を聞いて、ミハイルがジト目でこちらを見てきているような気がするが気のせいだろう。
「そう言えば、陽月国の政治体制とかどんな感じなんだ…?」
話題を逸らすことにした。
「そうだな…将軍と呼ばれる王が政治や軍事を仕切っているが…コルッツ王国とは違い、国民の声にはしっかりと耳を傾けて、改善できる所は改善するといった、善良な王と言ったところだろう…」
「つまり2つの国は、政治体制は似ているが、政策とかは正反対っていったところか……」
「その通りだ」
ミハイルから陽月国の政治体制を聞き、俺は顎に手を当て考え始める。
もし仮に、戦争に巻き込まれることになったら、味方になるなら、陽月国だな…親近感が湧いているのもあるが、今聞いている両国の様子からに、陽月国が圧倒的にまともに聞こえる。
そんなこと考えていると、
「止まれ!!」
前から声が聞こえたため、言われた通りに10式戦車をそこで止めた。
コルッツ王国の兵士なら面倒くさい、そう思いながら声がした方を向いてみると、そこには和風の鎧をつけ、腰に帯刀している2人の武士が居た。
「おい降りろ!」
「…わかったよ」
2人の武士を陽月国の者だと理解した俺は、武士の言う通りにした。
なお、ミハイルのことには気づいていないようで、念の為に待機してもらう事にした。
「それで、貴様何者だ?」
「自分で言うのもあれだけど、神使なんだけど…」
「巫山戯るな!」
神使ということを信じさせることは、そう簡単なことではなかった。
「貴様怪しいな…奉行所まで共に来てもらうぞ…!」
武士達が俺を捕まえようとしてきたその時、
「その者の身分は私が保証しよう…」
隠れるように待機させておいたミハイルが顔を出した。
「…誰だ?」
「ミハイル・フォン・シュヴァリエだ…一度この国に挨拶にやってきたが…」
「っ! す、すぐに将軍に報告にお伝えいたします! 暫くお待ちください!!」
ミハイルを睨みつけた武士だったが、ミハイルが自己紹介と懐から取り出した紋章入りの首飾りを見て、驚いた様子で何処かへ向かって行った。
ミハイルの家系って、もしかして結構高貴な家系なのか……?
暫く待っていると、息を切らしながら先程の武士が戻ってきた。
「か、確認できました…私に、付いて来てください…」
「ああ」
俺らは武士の歩く速さに10式戦車の速度を合わせついて行くことにした。
〇
数分後、俺らの前に岩でできた壁が見えてきた。
「悪いんだけど、これここに止めて良いかな?」
「構いません。しっかりと我々が御守りいたします!」
「じゃあ頼む!」
案内してくれている武士に、10式戦車を壁に沿うよう置かせてもらった。
「こちらです」
「お~…!」
岩の門を潜ると、そこには和風の街並みが広がっており、奥を見つめてみると、日に照らされてキラキラと光る海が見えた。
「ここが、陽月国の都真京です。将軍がいらっしゃる陽月御殿まで案内いたします」
俺は街中を観察しながら、歩き進む。
建物は江戸風だな…店は、魚や野菜、飴…これも和風のが多いな。
「こちらです」
俺が街を観察している間に、陽月御殿に着いたようだ。
兵士の方を見ると、そこには立派な白い城が建っていた。
そして、門の前には屈強な武士と着物を着た白髪の御婆さんが居た。
「いらっしゃいませ…神使様、ミハイル様…我が主、陽月将軍がお待ちです…お手数ですが、私の手を握って下ださい…」
「…えっ? あっはい」
老婆の言葉に困惑したが、ミハイルが老婆の片手を握ったため、俺はもう片方の老婆の手を取った。
「
老婆がそう呟くと、周りの景色が変わり、 和風庭園に俺らは立っていた。
何が起きたか分からず混乱していると、正面の奥の襖が開き、その奥には、白と金を基調とした袴を着た、黒髪に茶色の瞳の体格が良い男が座っていた。
「お初にお目にかかります神使様…私が、陽月国を治める将軍…
爽やかな笑みを浮かべながら、陽月国の将軍牙王は自己紹介をしてきた。
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