第15発目 騎士団長との邂逅
「楽でいいわね~…」
炎陽村に向かう中、10式戦車の運転席に乗っている雪婆が、乗ってみた感想を述べる。
「雪婆、このペースだと、炎陽村まであとどれだけかかりそう…?」
「そうですね~…後、30分くらいでしょうか? 炎陽村はあまり遠くない所にあるので……」
「なるほどねぇ………10式戦車の最高速度ならすぐか…」
雪婆からあとどれくらいかかるかを聞き、俺は小さな声で10式戦車ならそうかからないことを呟いた。
速度を出せない理由としては、10式戦車を4人では乗れないため、ミハイルと虎徹に歩いてもらっているからだ。
10式戦車を挟むようにミハイルと虎徹が歩いているという状態のまま、俺らは30分かけて炎陽村に向かって行った。
「止まれ!!」
炎陽村の門が見えてきた辺りで、門の前にいる2人の兵士に命じられ、俺らはその場で止まった。
「何者だ、貴様ら!」
2人の兵士達は持っていた槍をこちらに向けて来たため、ミハイルと虎徹もそれぞれ剣を抜けるように身構えた。
「待て待て、俺らは……誰だっけ?」
「レオン・ナパルト騎士団長でございます…」
「そうだった……レオン・ナパルト騎士団長と話しがしたく、やってきた…!」
雪婆に、騎士団長の名前を聞きながら、話し合いをするつもりで来たということを話した。
「貴様らは敵対国だ! 誰がそんなことを信じるか!」
槍の先を向けたまま、兵士の1人が叫ぶ。
「……俺が神使だと言ってもか…?」
「なっ!?」
「はぁ!?」
俺の発言に、兵士達は声を出す程に驚いた。
「ふ、巫山戯るな!」
「そうだ! 神使様がこんなとこに居るわけがない!」
動揺しながら、兵士達は嘘だと言い切る。
「…私が彼の身分を保証しよう…」
「何者だ!?」
「ミハイル・フォン・シュヴァリエだ…それを保証するのはこれで良いだろう?」
真京に入るの時と同じように、ミハイルは兵士に自己紹介を行いながら、紋章入りの首飾りを見せた。
「っ! た、大変申し訳ございませんでした!! 今すぐにナパルト騎士団長に報告して参ります!! おい、このことをナパルト騎士団長に伝えてくれ!」
「は、はい!」
あの時と同じように、ミハイルの首飾りを見た兵士達は、慌てながらナパルト騎士団長を呼びに行った。
やはり、ミハイルの家系はやばそうだな…今度色々と尋ねてみるか……
そんなことを思いつつ、俺らはレオンが来るまで待つことにした。
○
「……敵都市に向かって玉砕せよ……それ程私の存在が邪魔なのかっ…!」
朝日を眺めながら葉巻を吸っているレオンは、昨日の夜にメフィストから受けた命令に、怒りが湧いていた。
「……ダメだ、下手に歯向かえば、私や部下達の家族にも危害が及ぶ……」
一瞬命令を無視するという案を思いついたが、自分の妻や子供の顔が脳内に浮かび、レオンは案をなかったことにする。
「ナパルト騎士団長…!」
「…なんだ?」
部下が無駄に命を散らさない方法を考えていたレオンの元に、1人の兵士がやってきた。
「はっ…陽月国の者と神使と名乗る者が、ナパルト騎士団長と話し合いがしたいとのことです」
「…神使だと? 本当か…?」
「はい。神聖皇国のシュヴァリエ家の者が同伴しているようなので、嘘ではないかと……」
「そうか……」
報告を聞いたレオンは、手を顎に当てて考え始める。
(あの者が慌ててやってきた所を見た所、神使とシュヴァリエ家の者が来ているということは本当だろうが……やはり、一度会って見なければ、真偽は分からんな……会ってみるとしよう…!)
考えた末、レオンは会ってみることにした。
「……分かった……その者達と会ってみよう…副長も呼んでくれ!」
「はっ!!」
レオンはミシェルと複数の護衛と共に、大翔と会うために門へと向かって行った。
○
暫くそのまま待っていると、立派な鎧を着た男が、複数の兵士を引き連れて、俺らの間に現れた。
「私は、コルッツ王国第四騎士団団長! レオン・ナパルトである!!」
堂々とした立ち振る舞いの男は、大きな声で自己紹介を行ってくれた。
「…俺は十代目神使の永山大翔だ! 今日は陽月国側として、君達に話をするためにやってきた!」
レオンに対して、俺も大きな声で自己紹介を行いつつ、要件を伝えた。
「…お1つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「…なんだ?」
「北西から迫ってきていた軍を蹴散らしたという地竜使いというの貴方様ことでしょうか…?」
「…ん?」
レオンからいきなり来た質問に、俺は首を傾げる。
地竜…?あっ、もしかして10式のことか!?まぁ、確かにこの世界の人から見たら、龍に見えなくもないの…か?
「…その通りだな…だが、こいつは地竜ではなく、戦車という兵器だ! 生物では無い!」
軍を撃退したことを認めつつ、俺は10式戦車が地竜ではなく兵器ということを話す。
「………そうでしたか…分かりました。どうぞお入りください…但し、入れるのは神使である永山様とミハイル殿だけでお願いします…」
「分かった」
俺らが本物だと分かってくれたレオンは、俺とミハエルだけ中に入ることを許可した。
まぁ、敵を入れるのはデメリットがあるからな…仕方ない
レオンの言葉に納得し、俺は雪婆と虎徹、10式戦車をその場に置いて、俺とミハエルだけで門を潜った。
「話し合いができる場所をご用意致しましたので、ご案内致します…」
「ありがとう」
俺らはレオンに案内され、とあるテントの中に入った。
「どうぞ、お座り下さい…」
レオンに勧められ、俺はテントの中に用意されていた椅子に座り、ミハエルは俺の後ろに立った。
「……それでは…お話をお聞かせください…」
俺と対面になるように席に座ったレオンは、話の詳細を求めてきた。
「……俺はこういうのあまりやった事がないから、単刀直入に言わせてもらおう…ナパルト騎士団長、共にコルッツ王国と戦わないか?」
「私に祖国を裏切れと…?」
俺の発言に、テントの中の空気は重々しくなる。
「…言い方が悪かった。コルッツ王国の現体制…つまり、王族や貴族に対して、国民と共に革命を起こさないか? という話だ…」
空気が重々しくなったことに謝りつつ、俺はレオンに革命を行うことを提案する。
「革命…?」
「ああ…コルッツ王国の内情は聞いている。俺からしても酷いと思っているし、メリューナも気に入ってないようだった。だから、現体制を滅ぼし、国民が権利を握る新体制を樹立したいと俺は思っているんだ」
革命という単語に、レオンは首を傾げながら質問したため、俺は詳細を話した。
「なら、何故私なのですか? 国民に直接問いかけてもよろしいのでは…?」
「それはダメだ。集団で大きなことをする時は、必ずリーダーが居る…部外者の俺や陽月国の者がリーダーになっても、纏まる可能性は低い…だから、国民からの信頼が高い君をリーダーにしたいと思ったんだ」
リーダーについての質問に、俺はレオンを選んだ理由を述べた。
「それに君なら、王族や貴族よりも、国民の方に色んなツテがあるだろうと思ってさ……勿論、答えは直ぐにじゃなくていい…ただ、早く決めないと国民の生活はこれ以上にキツくなるとだけ覚えておいてくれ……」
「………………少々お時間を頂きたい…暫くこちらでお待ちください………」
苦悶に満ちた顔をしていたレオンは、間を開けた後時間が欲しいと述べ、2名だけ兵を残して、テントを去って行った。
「……ナパルト騎士団長は、乗ってくれるでしょうか…?」
ミハイルが耳打ちで、質問してきた。
「さぁな…ただ、俺的には良い奴に見えた……」
質問に対し俺は、小さな声でレオンを見た率直な感想をミハエルに伝えた。
戦争で亡くすのは惜しい人っぽいし、このまま協力してくれ…頼む……
レオンが帰ってくるの待っている間、俺はレオンがこちら側について仲間になってくれることを願い続けることにした。
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