第19発目 騎士達の暗躍
第四騎士団と大翔達が密談を行ってから5日後、コルッツ王城の玉座の間では、帰還したミシェルとシャルブラムと対面していた。
「……では聞こう…第四騎士団副団長、ミシェル・ロレーヌ…お主が見たものを…」
「……はっ」
欠伸をした後、シャルブラムは気だるそうに、ミシェルに報告内容を尋ね、ミシェルは内心腹を立てながら、内容を話すことにした。
「歯が立たなかった…それがあの地竜と戦った感想です。魔法や槍、弓矢は効かず、重装歩兵の盾は軽々と貫通…相当な実力者を十数名集めなければ、歯が立ちません」
ミシェルは第三騎士団の報告を元に、嘘の戦闘報告を伝えた。
「それだけではありません…地竜のみならず、陽月国には相当な実力者が居ます…実際、何個かの小隊はその者に制圧されていました…」
続けてミシェルは、陽月国への総攻撃を行う期間できるだけ伸ばさせるため、名前を伏せつつミハエルのことを報告する。
だが、
「…それは、第四騎士団が弱いだけではないのか…?」
「…………」
シャルブラムは興味がなさそうに弱さを指摘し、ミシェルは出かかった言葉をぐっと抑え込む。
「…確かに、第四騎士団は他の軍団と比べ、数は少ない…ですが、質は王国一と言っても過言ではありません…」
湧いて来る怒りを抑えながら、ミシェルは第四騎士団の強さを伝える。
ミシェルの自信は事実で、定期的に行われる演習で、第四騎士団に所属している者は、常に好成績を納めている。
「ああそう……そんなことより、余の果物を持ってこい!」
「畏まりました」
シャルブラムとって、興味がないことのようで、腹が減ったのか、執事に果物を沢山乗せた皿を持ってこさせる。
「取り敢えず…第四騎士団はほぼ壊滅ということで良いな?」
「…はい…」
作戦とは言え、ミシェルは第三騎士団や第四騎士団を失ってもなお、慌てないシャルブラムの態度に、余計怒りが湧いてくる。
「……それでは、私はこれにて…失礼します」
もうこの国はダメだと再確認したミシェルは、玉座の間から出て行った。
「さて、下らない報告も終わったし、儂はそろそろ楽しみに~「失礼します国王陛下! 軍事大臣殿がお越しです!」
王座から立ち上がろうとしたシャルブラムの元に、一人の兵士がやってきて、メフィストのことを伝える。
「何だ…次から次へと…」
イライラとしながら、シャルブラムは王座に座り直した。
「失礼いたします陛下…」
シャルブラムが座り直したタイミングで、玉座の間にメフィストが入ってきて、シャルブラムの前に跪いた。
「それで、此度は何用か?」
ミシェルの時とは打って変わって、シャルブラムはメフィストに訪れた理由を尋ねた。
「はっ、この度は、第三騎士団と第四騎士団の壊滅を国民に伝える許可を頂きたく、参りました…」
「ほう? どのような形で、報告するのだ…?」
少し興味が湧いたシャルブラムは、メフィストに詳細を尋ねた。
「はい…地竜のことは伏せ、両軍とも陽月国の卑劣な技でやられたことに致します」
「…待て、第三騎士団は兎も角、第四騎士団はそれよりも貶める物に変えるべきでは…?」
内容を聞いたシャルブラムは、メフィストに第四騎士団を貶めない理由を尋ねた。
「それは私も思いましたが…奴らは一応国民からの人気がありました…そんな人気者が、陽月国の卑劣な罠で亡くなったとなれば…国民への戦争協力度はより高まり、戦後、陽月国への搾り取りは妥当と認めるでしょう…そうすれば、富はより増えますよ」
「ほう? それは良いな…!」
メフィストから悪巧みの内容を聞き、シャルブラムはその案に賛成した。
「それではご許可を頂けますか…?」
「無論だ。自由にやり給え…」
「ありがとうございます…!」
シャルブラムは許可を出し、メフィストは頭を下げて礼を述べた。
「では、裏で色々と行う必要があるため、私はこれで失礼致します」
「有無ご苦労!」
「それでは…!」
メフィストは立ち上がり、そのまま玉座の間から出て行った。
「成功した暁には、奴に国王名誉賞を与えてもよいかもしれんな!」
気分が良くなったシャルブラムは、メフィストへの褒美を考えながら、そのまま自室へ戻っていった。
そして、それから2日後、陽月国の卑劣な罠で、第三騎士団と第四騎士団が壊滅したという新聞が、出ることになった。
〇
第三騎士団と第四騎士団の壊滅の話で、巷が騒然としている中、バレルの屋敷にミシェルの姿があった。
「……つまり、この記事に書かれてあることは、第三騎士団壊滅以外嘘だと…?」
「その通りです」
対面に座っているバレルに、ミシェルは頷きながら答える。
「陽月国には、神使様が付いており、神使様のお力で第三騎士団は壊滅しました。その後、神使様から国を変えないかと提案され、我々第四騎士団は同じように壊滅したと見せつつ、国を変えるための準備を行っているのです」
「なるほど……それで国民に様々な伝手がある俺に、協力を申し出て来たのか…」
「その通りです」
ミシェルから詳細を聞き、バレルは頼られた理由に納得した。
「……でもまぁ…
最初新聞を見た時、驚いき思わず泣いてしまったバレルは、レオンが生存していることも分かり安堵する。
「それで…どうでしょう? 協力していただけますか…?」
「…無論だ。俺も上の連中には頭を抱えていたからな……是非協力しよう…!」
「ありがとうございます。では、作戦の書類と、連絡のための連絡晶をお渡しします」
バレルに協力を取り付けたミシェルは、鞄から書類とビー玉サイズの水晶玉を取り出し、机の上に置いた。
「確かに受け取った…信頼できる市長や組合長などにも教えて置こう…」
書類をぱらぱらとめくり、バレルは軽く内容を確認した。
「よろしくお願いいたします。私の方は、可能な限り騎士団の者をこちら側に取り込んでみます」
「では、善は急げだ…各自動くとするか」
「はい。ああ、それと…この武力蜂起のことは、公共の場では離さないように徹底させてください…連中にバレると、めんどくさいことになるので」
「了解した。他の者にはそう釘を刺しておこう…」
こうして、春風作戦にバレルは参加した。
バレルの伝手は手広く、あっという間に春風作戦のことは、殆どの街や村に知れ渡り、国民は王族や貴族に築かれないように、準備を始めた。
武器が少ない場所には、国内の商人が預かった陽月国の武器を秘密裏に配り、兵が少ない所には、秘密裏に潜入した陽月国の武士が近くに待機するなど、武力蜂起を起こす準備は着々と整っていった。
その一方、何も知らない王族や貴族達は、建国祭への準備を進めた。
そして、第四騎士団と大翔達が密談を行ってから三週間後の建国祭当日。世界に衝撃を与え、後の世にコルッツの春と呼ばれる革命が起きようとしていた。
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