第4発目 村に迫る軍勢
遥か昔、剣聖と呼ばれたヴォールッシュ・シュヴァリエは、女神メリューナに選ばれ、力の一部を分け与えられた。ヴォールッシュは分け与えられたその力を使い、数多の敵から国を守り抜いた。そして、ヴォールッシュの死後、その力は子供達に受け継げられ、一番力が強い者が本家、力はあるものの本家には劣る者を分家とし、本家と分家が協力し合って国を守り栄えてきた。
そして今、本家から1人の剣士が、脅威から人々を守るために部下と共に、とある村に派遣されていた。
〇
「おお! まさか、シュヴァリエ家と神騎軍団レギオンの皆様方が、遥々この極東の村まで来て下さるとは…有難い限りであります…!」
とある国の東部にある村の入口にて、杖をつくほど老いている老人ミーレル村長は、やってきた騎士達に対し深々と頭を下げる。
「いえ、礼には及びません…人々を守るのが、我々の役目ですから」
頭を下げているミーレルに、黒髪で真紅の瞳をしている他と違い少し豪華なコートを羽織っている騎士が優しく返す。
騎士は、シュヴァリエ家の本家から派遣されてきたミハイル・フォン・シュヴァリエ。今回、生息域から離れた竜の群れが、この村を襲うという情報を神託として、メリューナから聞かされたため、西にある祖国から遥々やって来たのだ。
「おお、有難い限りであります…では、皆様のためにご用意した宿までご案内致します」
「頼む」
ミーレルに案内され、ミハイル一行は宿に向かうことにした。
「……幾ら
宿に案内される中、部下の一人がミハイルに質問する。
「この時期になると、
部下の方を見ることなく、ミハイルは歩きながら質問に答えた。
「なるほど…我々でも繁殖期の
「ああ…それに、メリューナ様直々の神託だ…それ程脅威という訳だろう…」
「それもそうですね…今は罠などを仕掛け、英気をしっかりと養いましょう」
「そうだな…荷物を宿に降ろし次第、罠設置に取り掛かろうか」
「はっ!」
2人は会話しながら、ミーレルの後を追い、宿に荷物を降ろしに向かった。
その後荷物を宿に残し、ミハイル一行は村の周辺に、対竜の罠を仕掛けることにした。
〇
ミハイル一行が辿り着いてから丸二日が経過した。
「
「現在7割ぐらいですね…三日もあれば設置は容易かと…」
神騎軍団が寝泊まりしている宿の一部屋にて、ミハイルは今回の遠征隊の副長として連れて来たネルス・ミトゥールと、現状を確認していた。
「村人達の方はどうだ?」
「戦える者はこちらで用意した武器で演習中、老人や子供は迅速に避難先に移動するように何度も練習しています」
「こちらも戦力は余りない…できる限り、村人達の力も借りないとな…」
ミハイルとネルスが話し合っていたその時、
――カンッ!!カンッ!!カンッ!!カンッ!!
突如として、警鐘が鳴り響いた。
「何事だ!?」
突然の警鐘に、ミハイルが驚いていると、部下の1人が慌てながら部屋に入って来た。
「た、大変です!
「何!? 予定より早いではないか?!」
「ですが、実際に村の北東部方面から、
部下からの報告をネルスは疑うが、部下は必死になって真実だと伝える。
「今すぐ、非戦闘員を避難させろ! 少々早いが、
「「はっ!!」」
予定より早い
〇
「ゴガァーーーーー!!!!」
「ひっ!」
「ガアッ!!」
「もう終わりだァ!」
村人の1人が
「大地に息吹く風達よ、今こそ我が剣に纏え! 魔剣術風!
愛剣の
「ゴガァ!?」
諸に攻撃を食らった
「怪我をしているのではあれば、避難所に…なければ他の所の援護に迎え!」
「は、はい!」
ミハイルに言われ、村人達は怪我人と共にその場から離れて行った。
「さて次は…」
村人達を安全な場所に移動させたミハイルが、レイピアを腰に収めた時、
――ドゴォーンッ!!
爆音と共に部下の重装備兵が飛んで来た。
「どうした!? 何があった!?」
「……み、ミハイル…様っ……お、お逃げ…くだ、さ……」
吹き飛んできた部下の元に駆け寄って、ミハイルは何があった問い詰めるも、部下は逃げるように伝えたのち、そのまま息絶えてしまった。
「一体何がっ…!」
幾ら
「…え……
ミハイルと目が合ったのは、他の竜の倍以上の大きさを誇り、長い髭を2本生やしている龍だった。
「…本来ならば、神騎軍団全軍で挑むべき相手だが…まだ無属性…つまり進化して間もない…私一人で十分だ!!」
目が合った
〇
ミハイルが
空は暗くなり始めており、2人の周辺は激しい戦闘で、建物はほぼ壊滅、地面は大きくえぐれていた。
「ゲホッ、ガハッ!」
地面にレイピアを突き立て支えにして、瀕死のミハイルは跪く。
一方の
(全力を出し切ったが…私ではまだ、
息を整えながら、ミハイルはレイピアを構え直し、最後の奥の手を使おうと試みる。
「……我が剣よ、魔を纏い今こそ光りかが…」
ミハイルが奥の手を使おうとしたその時、
――キュラララララ!!!!!!
何処からともなく声と謎の音が聞こえてきて、思わずミハイルは音の方を振り返ろうとした。
だが、間に合うことなくその物体は、
「なん…っ!」
周囲に漂っていた砂煙が晴れると、ミハイルの前に10式戦車が姿を現した。
「…さぁて、10式戦車の初陣だ…盛大に暴れるか!」
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