第5発目 10式対古龍
おにぎりを食べ終えた俺は、景色を楽しみながらメリューナに指定された場所に向かっていた。
「ん?……えっ…なんか燃えてね…?」
景色を眺めていると、目的地っぽい村が見えて来たのだが、村の何ヶ所かが激しく燃えており、更に上空には無数の竜が飛んでいた。
『メリューナダヨ!メリューナカラノチャクシンダヨ!』
目を凝らして燃えている村を見つめていると、スマートウォッチにメリューナからの電話がかかってきた。
「…さーて、メリューナさん?あれはどういうことかなぁ~?」
電話に出た俺は、メリューナが喋る前に村で起きている惨劇について問いただした。
『あー…いやぁ~…あそこが言っていた護衛する村なんだけどぉ~…どうやら、思っていたよりドラゴン達の移動が早かったみたいで、現在進行形で襲われちゃっている』
「……はぁ、報酬弾んでくれよ?」
『も、勿論!』
メリューナの杜撰さに呆れつつ、俺は報酬の追加を約束させた。
「なら、行きますか…10式戦車、最大速度!」
俺はメリューナと電話を繋げたまま、坂道を10式戦車の最大速度70kmで下りながら、竜に襲われている村に向かうことにした。
坂道が下りだったのもあり、あっという間に、俺は村の近くまでやってきていた。
「あれは…騎士か?」
何百m先に、竜と退治している人影が見えたため、目を凝らして見ると、その人影が中世ヨーロッパ風の騎士ということが分かった。
「苦戦しているようだし…俺も加勢するか」
騎士達が苦戦していると判断した俺は、10式戦車の中にあった防音イヤーマフを付けた後、俺は10式戦車に命令を出すことにした。
「目標、前方敵竜!撃てぇ!」
――ドォーン!!
俺の命令を受け、10式戦車は竜に向けて44口径120mm滑空砲から、今唯一使える砲弾、120mmTKG対戦車榴弾を放った。
放たれた砲弾は、爆発音を周囲に響かせながら、勢いよく竜の方へと飛んでいき、竜に見事命中、竜の身体の一部を吹き飛ばすことが出来た。
「よぉーし!十分戦えるな!」
『はいはーい!大翔ちゃん、そこから11時方向にちょっとやばめの巨龍がいるから、討伐をお願いしまーす』
「…あー、ハイハイわかりましたよ!!」
スマートウォッチを通して、メリューナから討伐して欲しい龍の位置情報を伝えられ、俺は素直に従うことにした。
「おおっと、あれか…」
メリューナに言われた方向に進んでいると、他の竜と比べて大きい龍と、その龍の前に跪いている騎士を見つけた。
「…そのままあの龍に全力疾走!ぶつかる寸前で、左に思いっきりドリフトをしてくれ!その後は目標の捉えろ!」
騎士と建物が近くある事ため、砲撃は出来ないと判断した俺は、龍を戦車の体当たりで追っ払うことにし、その命令を出した俺は車内に入り、ハッチを閉めた。
「意外とデカッ!」
車長用サイトを通して、龍の姿を見ていたら、10式戦車は速度を維持したまま、左にドリフトをし、車体の右側面で龍とぶつかり、そのまま盛大に吹き飛ばした。
「痛たた…」
ぶつけた所を片手で撫でながら、俺はハッチを開けて上半身を出した。
上半身を出すと、辺りは土煙が漂っていたが、主砲が動いていた。恐らく、龍を追尾しているのだろう。
「…さぁて、10式戦車の初陣だ…盛大に暴れるか!」
気を取り直し、俺は龍に挑むことにした。
「そこの騎士さん、耳塞いどいた方がいいぞ」
「?」
騎士は訳が分からないようだったが、両手でそれぞれ左右の耳を塞いでくれた。
「よし、目標巨龍!対戦榴弾撃てぇ!」
――ドォッン!!
爆音と共に10式戦車の体当たりで怯んでいる龍が居るだろう土煙に向け、砲弾が勢いよく飛んでいく。
――ガキィィィン…!!
「ガァアアァァ!!」
鈍い音が響いたと思ったら、今度は龍の叫び声が響き渡った。
「……うっわ…」
土煙が治まったことで、俺は龍が叫んだ理由が分かり、思わず引いた。
龍は砲弾を尻尾で弾こうとしたようだが、砲弾の貫徹力が高かったため、弾けずに尻尾を持っていかれたようだ。
「…尻尾とは言え、
10式戦車の砲弾が、龍の尻尾を吹き飛ばしたのを見た後ろの騎士は、とても驚いていた。
「グガッ!!」
騎士の言葉に誇らしく思っていると、尻尾を吹き飛ばされた龍は、翼を広げた。
「おっと!逃がすか!」
――ダダダダダダダ!!!!!!
逃げると判断した俺は、搭載している12.7mm重機関銃M2を龍の翼目掛けて乱射する。
「グルゴアァァアァーーーー!!!!」
M2から放たれた銃弾の雨は、見事に龍の翼を貫き、飛べないようにして行く。
「ガァ!!」
逃走手段を封じられた龍は、顔をこちらに向け、口から火の玉を放った。
「不味い!逃げ…!」
「撃てぇ!!」
俺を助けようとする騎士を無視して、俺は砲弾を放たせた。
放った砲弾は真っ直ぐと龍の方へと飛んでいき、ブレスを貫き、龍へと向かっていく。
まさかブレスを貫かれるとは思わなかっただろう龍は、驚いた表情を浮かべて固まってしまったため、砲弾を避けることなく、顔から食らってしまい、そのまま地に伏せた。
「さてと、後は…」
龍が絶命したのを確認した俺は、他の竜達を見る。
「対空砲があったら、便利だったんだろうなぁ…」
空を飛んで居る連中を見て、対空兵装が欲しくなる。
まぁ、無いものを強請っても意味は無いから何とかするしかないな…
「……あの…」
「うん?」
他の竜への対処方法を考えていると、助けた騎士に呼ばれた。
「助けてくださり、ありがとうございました……」
騎士の方を振り返ると、深々と頭を下げて礼を伝えてきた。
でもなぁ…助けたい!で戦ったんじゃなくて…報酬目当てやったからなぁ……
「人助けは当たり前だろ?それより、残りの連中だ…」
少しカッコつけて、俺は話を逸らすことにした。
ごめんなさい。
一応、心の中で謝ってはおく。
「それなら大丈夫です…リーダー格であった
騎士の言葉に、少し疑問を抱いたが、その意味は直ぐに分かることになった。
「ギャオォーーーーー!!!!」
何処からともなく竜の叫び声が響いたと思ったら、村を襲っていた竜達が、次々と散りながら去って行く。
「これで終わりかな?」
竜が引き上げて行ったため、俺は戦いが終わったと判断し、10式戦車から降りた。
「…貴方は、いっ…た、い……」
「おっと!」
俺の傍に近づいてきた騎士が、突如フラつき、前のめりに倒れたため、俺は咄嗟に騎士を受け止めた。
「…結構疲弊しているみたいだな……ここに置いておくのもなんだし…他の騎士達に渡すか…」
気を失っている騎士を抱えて、俺は村の中央へと向かうことにした。
〇
村の歩く度に、俺は村の惨劇に胸を痛めた。
「…本当に酷いな…」
気を失っている騎士を抱えながら、俺は辺りを見渡す。
抉り取られている地面、燃えカスとなった家屋、頭を切り落とされ胴体と離れている竜、仰向けになってピクリとも動かない騎士、これらが如何に激しい戦闘が起きたか物語っていた。
「……おっ、あれか?」
瓦礫の中、少し迷ったものの俺は、怪我人が運ばれている半壊状態の建物を見つけた。
「さっさとこの人を預けて、10式の強化時間と行こ「待て」
ドスの利いた声が後ろから聞こえたと思うと同時に、剣が後ろから伸びて来た。
「貴様、その御方を誰かと知っての無礼か…!?」
後ろに居るであろう男性がそう質問すると同時に、剣を構えた騎士達が俺を囲った。
ああ…早く10式の強化タイムに突入したぁい…
面倒くさいことになった。そう理解できた俺は、心の中でそう叫んだ。
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