第6発目 初報酬
「えーっと、俺はただ、怪我をしているこの人を運びに来ただけで…決して怪しい者では……」
騎士達の誤解を解こうと試みてみるが、
「黙れ。卑劣で忌まわしき部外者め…!」
俺の後ろにいる男は、俺の言葉を信じることなく、睨みつけてくる。
10式戦車をここに召喚して無茶苦茶にしてぇ…
そんな気持ちを抑えつつ、俺の言葉は通じないと判断した。
「そんなことより、早く手当してやれ…相当酷い怪我だぞ?」
取り敢えず、このままではミハイルという騎士の手当が出来んと判断し、そのことを説得してみる。
「…その者に、ミハイル様を引き渡せ……」
「…はいよ…」
一歩前に出てきた女性騎士に、俺は男が言う通りにミハイルを渡した。
「で~、解放して欲しいんだが~…」
ミハイルを渡しても、相変わらず俺を逃がさないよう取り囲んで騎士達、解放して欲しいと伝えてみる。
だが、
「そんな訳がなかろう…貴様がミハイル様にやったことは重罪……いや、極刑だ…! 私直々処してやろう!」
男はいきなりそんなことを言ってくる。
ダメだ、話が通じねぇ!というかこれ、俺があのミハイルに傷を負わせたということになっているのか?どういう神経してんだよ!
「最後に遺言だけ聞いておこう…今から30秒内にあるなら、言え」
内心ブチ切れていたら、何故か30秒間の猶予を俺にくれた。
さて、どうする…こっちは丸腰…それに、このスペースだと、10式は呼べても動けない自体になる可能性が高い…それに、無関係の人が被害に合わせる訳には行かないし…走るしかないか……
「さて、30秒経過した…何も言わないということは、遺言は無いと見ていいな?」
「残念ながらこんなところで死ぬつもりは無いんでね…遺言なんて要らないよ」
「そうか…それがお前の遺言k「大馬鹿者っ!!」
男が剣を振るおうとしたその時、大声が辺りに響き渡った。
声の方を見ると、つい先程運ばれて行ったはずのミハイルの姿があり、後ろでは連れて行った女性騎士が、オロオロとしていた。
「み、ミハイル様!? お身体は大丈夫なので「そんなことはどうでも良い! 貴様ら、私の恩人に何をしようとしていた!!」
「お、恩人…?」
ミハイルが俺のことを恩人と言った後、後ろを振り返ってみると、俺に剣を突きつけていた男の顔が、面白いほど青ざめていた。
「そうだ…
「…申し訳ありませn「私ではないだろう?」
ミハイルの圧に、当人ではない俺もやられそうになり、震えてしまう。
そして叱られている騎士達は、俺の前に一列で並び、
「「「「「大ッッッ変、申し訳ございませんでした!!!!」」」」」
っと、頭を深々と下げて謝罪してきた。
「ま、まぁ誤解が解けたならそれでいいよ」
勢いの良い謝罪に少し引きながら、十分だということを伝えた。
「全く…恩人様、申し訳ありません。一度落ち着く場所話し合うことはできませんか?」
「うん。まぁ、時間はあるし…いいよ」
折角なのでミハイルからの話し合いの誘いに乗ることにした。
「ではこちらに…」
「ああ…」
ミハイルに案内され、俺は近くにあった宿っぽい建物の一室にやって来た。
「ここは、我々が村から借りている場所でね…避難場所にもしてたから、唯一無傷なんだ。だから、ゆっくりと話うことが出来る…」
建物について説明をしながら、ミハイルは部屋にあったソファに座り、俺はその反対側に座ることにした。
「というか、傷は大丈夫なのか?」
「ええ…念の為に多く持ってきていた
重症だったことをミハイルに聞くと、ポーションで治したと話した。
しかしポーションか……珈琲飲みたい……
「貴方に質問したいことがあるのですが……よろしいでしょうか……?」
「俺に? まぁいいけど…」
余計なことを考えていると、ミハイルから質問して良いかと聞かれたため、俺は不思議に思いながら、内容を聞くことにした。
「…それでは、単刀直入に聞きます…貴方、いえ貴方様は神使ですね…?」
「…」
俺は黙り込んだ。
どうしよう…神使のことを話していいのか?通話して聞きたいけど、逆に怪しまれるよなぁ……
そうやって悩んでいると、
『ピンポーン! 流石ミハイルちゃん! その通りだよー!』
スマートウォッチから
「め、めめっ…! メリューナ様!?」
ホログラムとは言え、メリューナが現れたことに、ミハイルは今までの冷静な態度からは思えないほど驚き、慌てるように跪いて頭を下げた。
まぁ、ホログラムとかこの世界からしたら訳分からん物だよな…ん?ホログラムで出てきて大丈夫か?
『ミハイルちゃんの言う通り、この子は十代目神使よ。大翔ちゃん、自分が神使ということは、大々的に話していいからね~…それじゃあ! あとはお若い2人に任せる!』
スマートウォッチを通して、俺とミハイルそれぞれに話をしたメリューナは、嵐のように来て去って行った。
「……と、取り敢えず…貴方様が十代目神使ということは分かりました…それで……これからどうするおつもりですか…?」
メリューナが居なくなり、ミハイルは姿勢よくソファに座り直し、敬語を使いながら今後のことを尋ねてきた。
「メリューナから依頼は今はないし、特には決まってないかな? 強いて言うなら……世界中を旅する準備がしたいって言ったくらいか?」
「なるほど…」
俺から質問の答えを聞くと、ミハイルは何か考え始める。
「……それでしたら、私をお供として連れて行ってはくれませんか…?」
「えっ?」
ミハイルからの頼みに、俺は思わず声を出してしまった。
「ダメでしたか…?」
「いや、ダメというわけではないが…良いのか? それなりに偉い役職なんじゃ……」
「それならご心配には及びません。神使様を我が国に案内するということであれば、皆納得してくれるはずです」
「それなら…良いか……」
ミハイルから大丈夫ということを聞き、俺は首を傾げながら良いと認めた。
「それでは! 直ぐに準備致します神使様!」
俺が認めると、ミハイルは意気揚々とし始めたが、俺は様やら敬語でムズ痒い思いを感じた。
「神使はやめろ…俺は永山大翔だ。それと、敬語も要らないからな?」
「分かりました。それでは、私はミハイルと呼んでいただいて構いません…」
遅まきながら互いに自己紹介をし、
「それじゃあ、これから色々よろしく。ミハイル」
「こちらもこそよろしく…大翔くん」
笑みをそれぞれ浮かべながら、固い握手を交わした。
〇
ミハイルが仲間になってたからその晩、食事を貰った俺は10式戦車の中に居た。
「通話は~……これか!」
スマートウォッチを弄っていた俺は、通話機能を捜し当て、メリューナに電話をかけることにした。
『はーい、もしもーし!』
「報酬」
出てきたメリューナに、俺は前振りもなく報酬を要求した。
『がめついね~…それじゃあまず、砲弾としては徹甲弾でいいかな?』
少し呆れながら、メリューナは報酬の1つとして、追加する砲弾の種類を提案した。
「ああ、10式120mm装弾筒付翼安定徹甲弾でいいよ」
『……』
なんだろう、メリューナが引いているような気がする。
『そ、それじゃあ次は、戦車の強化だね!そのスマートウォッチにさ、戦車のマークがあるアプリみたいなのあるでしょ?それ押して』
「分かった」
メリューナに言われ通話を繋げたまま、俺はスマートウォッチを操作し、言われた通りのアプリを起動させた。
すると、10式戦車のステータス画面のような物が、ホログラムのように空間に現れた。
『そこにある数値が、戦車の火力、装甲、速度、抵抗力を表しているよ!』
「これか…」
出てきたステータス画面の中にある数字を見つめてみる。
今の10式戦車のステータスはこんな感じだ。
10式戦車。火力58 装甲28 速度35 抵抗力21
「これ、何が基準なんだ…?」
『そうだね~…火力は50で100mmの装甲を貫通できるくらいかな?装甲は10で20mm鉄板、50で240mm鉄板、100でダイヤモンドぐらいだね。速度は最高速度で換算しているから、100で時速200kmってな感じかな?』
「ふむ……」
メリューナから基準を聞いた俺は、納得しながら次の質問を出すことにした。
「もう1つ質問、抵抗力ってなんだ?」
ステータス画面にある抵抗力の意味が分からなかったため、詳細を聞いてみた。
『ああ…それは~、魔法にどれだけ抵抗できるとかを表した物だよ。魔法で作られた雷や、武器を封じる魔法を防ぐ際に必要になるよ』
「面倒くさ…」
メリューナから詳細を聞いた俺は、思ったことをオブラートに包むことなく、素直に述べた。
『取り敢えず今回は、私のミスがあったから、特別に10個分をステータスを上げることができるよ』
「ふむ…」
それを聞き、俺はステータス画面と睨めっこする。
火力はあの巨龍に通じていた所を見る限り、申し分ないし…10式戦車の最大速度は時速70kmだから必要ない…そうとなると……
昼間の戦闘と、10式戦車の性能を元に、俺は上げるステータスを決めた。
「それじゃあ…装甲に8、残りを抵抗力に回してくれ」
『りょうかーい!』
強化するステータスをメリューナに伝えると、装甲が30、抵抗力が23に増えた。
『これで報酬は終わりかな? それじゃあ! これからも頑張ってねー!』
メリューナはそう言うと、通話を切った。
「もうこんな時間か…寝るか」
電話が終わると、スマートウォッチの時計が、11時58分を表示していたため、俺は10式戦車の中で眠ることにし、明日に備えることにした。
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