第2発目 異世界転生

「それじゃあ、異世界転生するために、色々と説明や準備を始めようか…!」


そう言うと、メリューナは分厚い本を1冊取り出して、俺に渡してきた。


「そこには、ある程度のチート能力やチート武器の詳細が書いてあるわ。勿論!そこになくても、欲しいものがあれば可能な限り用意するわよ!」


メリューナのその言葉に、本を開こうとしていた俺はピンッと来た。


「……それってさ、現代兵器でもいいの…?」


「勿論…!まぁ、核兵器とかそう言った物はちょっと勘弁して欲しいわね」


それを聞き、俺は自然と笑みを浮かべた。

核兵器とかでなければ良い…それなら、俺の夢を叶えられるかもしれない…!

俺は恐る恐るメリューナに、欲しい物を伝えることにした。


「俺が憧れていた戦車…10式戦車を欲しいと言ったらダメか…?」


「…それなら、勿論良いよ!大翔くんが陸上自衛隊の機甲科を目指して頑張って居たのは知っているから!」


「よしっ!」


10式戦車の使用許可が降りて、俺は思わずガッツポーズを決めた。


「用意するからちょっと待ってね…私は軍事にそんなに詳しくないから、知り合いにちょっと聞いて来る」


そう言うと、メリューナは空中からスマホを出現させ、そのスマホを使って電話をかけ始めた。


「もしも~し、ルーちゃん?今いいかな~?」


メリューナは電話が繋がった相手と話始める。


「いや~…新しい子が来たんだけど、軍事系の兵器が欲しいらしくてね~…それで今度スイーツ奢るから、用意してくれない?…あっ、兵器名が確か…10式戦車だったかな?………ありがとう~!待ってるね!」


どうやらルーちゃんと呼ばれる者に、10式戦車を用意してくれる約束を取り付けたメリューナは電話を切り、そのままスマホをマジックのように消した。


「さて、戦車を用意してもらっている今のうちに、ある程度私の世界を説明しよう」


「お願いします」


世界の説明をするっということで、俺は座り直し話をしっかりと聞くことにした。


「まぁ、私の世界はよくある剣と魔法のファンタジーだよ。だから、こんなことができる」


そう言って、メリューナは手のひらから炎を出し、その炎で鳥を作り出して、大空に向かって羽ばたかせた。


「お~…」


メリューナが作り出した火の鳥が綺麗だったため、俺は声を出しながら拍手を送る。


「ふふっ、ありがとう…こういったことができる世界で、貴方には神使として世界の平穏を守ってほしいのよ」


「…魔王討伐とか?」


平穏を守ってほしいと言われ、俺は首を傾げながら詳しい内容をメリューナに聞いた。


「どっちかというと~…そうね、パトロールと言った方が良いかしら?」


「パトロール…?」


「そう!元々はそんなことして居なかったんだけど~…大昔に世界の存亡がかかった事件が起きてねぇ…それ以降、監視するためにも貴方のような転生者を送って居るのよ」


「…俺以外にも居るんですか?」


「ええ…九代目を除いて、大半が寿命や病気で既に死んでいる。そして…貴方が十代目神使よ…」


「俺が、十代目…」


自分が十人目の転生者だと知り、俺はまだ存命だという九代目に興味が湧いた。

その時、突如眩い光が辺りを照らした。


「お届けに参りました」


光が収まると、そこには10式戦車と背中から四つの翼を生やした銀髪の女性が姿を現した。


「ありがとう、ルーちゃ~ん!」


「いえ、大したことはしておりませんので…」


「あっ、そうだ!この後お茶でもしていかない?」


「今は忙しいのでお断りします」


2人が会話している中、俺は10式戦車に駆け寄りじっくりと見つめる。


「何度見ても、10式戦車は良いなぁ~」


「んんっ…それでは、この10式戦車についてご説明いたします…」


「あっはい……」


ボディを触りっていると、ルーちゃんが咳払いして、説明すると伝えてきたため、俺は大人しく説明を聞くことにした。


「性能は史実の10式戦車と全く変わりません。しかしながら、一部こちらで改造させて貰いました。まず、一人で動かせれるように、運転と砲撃は自動化させております。無論、手動で動かすこともできますが、恐らくこちらの方が便利かと…操作方法としては、運転は速度と動く方向を、砲撃は狙う目標を口頭で述べるだけで、自動的動いてくれます。他にも燃料や弾幕の無限化や、特別なクーラーの設置し車室冷却機能を搭載などの単機運用能力を高めました」


ルーちゃんは、少し誇らしそうに10式戦車に加えた改造の内容を説明してくれた。

そして続くように、


「それと、この10式戦車は、メリューナ様の世界では超越した技術オーバーテクノロジーです。そのためセキュリティも万全にしています。登録した者やその者が許可をした者以外が、使用しようとした、もしくはハッチを開けようとした場合、強力な電流が流れるようになっていたり、登録者の命令に応じてどんな場所に居ても、転移して必ず駆けつけるようになっております。また、分解やエンジンが掛かっていない状態の破壊を行おうとした時は、神でも破れない防壁を展開させます。なお、この防壁は登録者のみが解除することが可能となっております」


特別なセキュリティシステムを搭載していることも話してくれた。

確かに、剣と魔法のファンタジーに、10式戦車は異色し過ぎるな…万全にしておいて不測はないか…

セキュリティシステムを搭載する理由に納得しつつ俺はあることを聞くことにした。


「それで…どうやって登録するのですか…?」


「ハッチの所に左手を付けて、血を一滴だけそこに垂らしてください。そうすれば、登録されます。無論、これは誰であろうと上書きなどをすることはできません」


「…やってみます」


ルーちゃんから、登録の仕方を教えて貰った俺は、早速やることにした。

10式戦車の上に昇った俺は、ハッチに左手を置いた。すると魔方陣が現れ、俺は左手を置いたまま、右手の親指を歯で切り、そこから魔方陣に向けて一滴血を垂らした。血が触れた魔方陣は光り輝き、垂らした血は、魔方陣と共に戦車に吸い込まれるように消えて行った。


「これにて登録は完了です。その10式戦車は貴方様の者です。おめでとうございます」


「おめでと~!」


登録が完了したのを見て、ルーちゃんとメリューナはそれぞれ祝ってくれた。


「それでは私はこれで…」


「態々ありがとうね~」


「いえ…それでは失礼いたします」


ルーちゃんは一礼した後、そのまま光となって消えて行った。


「さてと、大翔くん、ちょっとこっちに来て!」


「?はい」


メリューナに呼ばれ、俺は言われたまま10式戦車から降りて、メリューナの元に駆け寄った。


「今のその服装で送るわけにも行かないから…」


俺の作業着を一度見たメリューナが、パチンと指を鳴らすと、俺の服はボロボロだった作業着から、黒と金色を基調とした軍服に変わった。


「お~…!」


「それとこれは特別にね…!」


軍服を見つめていると、メリューナは俺の額に右手の当て何か力を込めた。


「…はい、これで君は空間魔法の空間収納を覚えたよ、そこに今着ている服の予備2着、直してといた君の作業着などを入れておいたよ」


「作業着は愛着があったので、色々とありがとうございます…」


「ふふっ、それほどでも…!」


俺が礼を述べると、メリューナは笑みを浮かべて照れていた。


「さてと、まだ説明することあるけど…実践を行いながらの方が分かりやすいから、転送後にしましょう…!転送の準備を進めるから、10式戦車に乗って!」


「分かりました」


両手を合わせ切り替えたメリューナに言われた通り、俺は10式戦車の上に昇り、ハッチを開けて下半身を中に入れた。


「それじゃあ行くわよ?」


それと同時に10式戦車の下に魔方陣が現れた。


「大翔、私の世界を頼んだわよ…!」


「はいっ!!」


メリューナに世界を任せられ、俺は敬礼しながら返事を返し、俺の視界はそのまま真っ白になった。

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戦車で行く、異世界奇譚 焼飯学生 @yakimesigakusei

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