第23発目 王の抵抗
「神使様ー!」
10式戦車で行ける所まで進んでいた俺達の元に一人の兵士が走って来た。
「…何かあったのか?」
俺はハッチから顔を出し、走って来た兵士の話を聞くことにした。
「事態は作戦通りに進み、大広間に居た王族や貴族達の確保は出来たのですが…その大広間に肝心のコルッツ王が居らず、現在捜索中です…」
「となると、最初の報告で逃げたのか?」
「そうみたいです。身柄を確保した外務大臣曰く、一目散に逃げ出した可能性が高いとのこと」
報告を聞き、俺は頭を抱えた。
クソ…慢心して、その場から逃げないだろうと思っていたが、裏目に出たか…
「…報告ありがとう、俺らも捜索に参加するよ」
「はっ! それでは失礼します!」
兵士に礼を述べ、俺らもコルッツ王捜索に参加することにした。
「………今の父上が行く場所に当てがあります…」
10式戦車の中に居たエルメスが声をかけた。
「……案内してくれ」
俺は10式戦車の中に詰め込んでいた俺のコートをエルメスに渡し、場所への案内を頼んだ。
「…はい!」
コートを着たエルメスは、元気良い返事を返した。
〇
「探せー!」
「コルッツ王何処だーー!!」
城内で多くの者がコルッツ王を探している中、俺らはエルメスに案内され、真っすぐと向かっていた。
「こんなに多くの人が捜しているのに、影一つ見つからないということは、もう城外に逃げたのでは…?」
「…それはないです。この城から出るには、正門を通るしかありません…転移しようにも、父上は魔法を使えませんし、王宮魔術師も恐らく裏切りか確保されている…そんな中、父上が一人で逃げるには…っ!」
エルメスは春菜の疑問を否定し、とある壁の前で立ち止まった。
「父上は、この先に居ます…」
壁を見つめながら、エルメスはそう呟く。
えっ?別に変な箇所とかない普通の壁だと思うんだけど…
「……認識阻害か…?」
何の変哲もない壁を真っすぐと見るエルメスを見て、ミハイルは何か心当たりがあるようだ。
「その通りです…玉座の間には緊急時、認識阻害の結界が張れるようになっているんです…それを無効化できるのは、大昔にこれを張った王宮魔術師か…王族のみです…」
エルメスが手で壁を押すと、その手は壁の中へと沈んでいった。
「ついて来てください」
そう言い残し、エルメスは壁の中へと入っていった。
「……」
戸惑いながら俺らも壁の中へと入った。
壁を潜ると、そこには空いている台と巨大な像が何個か並べられていた。
「…これ、空間を拡張しているのか…?」
「はい…玉座の間には、歴代王の像が置かれるため、空間を拡張されています…空の台にもいずれ父上や僕などの像が作られたことでしょう……」
魔法で広さを拡張された玉座の間を歩き進めていると、
「クソ! 王宮魔術師共め…劣勢になった瞬間裏切りやがって…!」
奥の方で王座をどかし、その下にあった魔方陣で何かしようとしているコルッツ王が居た。
「……緊急時用の転移魔法といった感じか…?」
「なっ、何者だ!」
ミハイルが魔方陣の種類を当てると、驚いた表情でコルッツ王がこちらを見て来た。
「何故ここに入れた! 今の玉座の間には、認識阻害の結界を展開させているはずだぞ!!」
「……しかし、王族の場合は認識阻害できない…そうでしたよね…?」
コルッツ王が入れた理由を問いただすと、エルメスがフードを脱ぎ、結界の弱点を答えた。
「エルメス!?」
エルメスの顔を見たコルッツ王は、目を見開いて驚いた。
「エルメス、お前も裏切ったのか!」
「いえ…裏切ってはいませんよ…元々敵だっただけです」
「ふざけるな! 親の恩を忘れたのか!」
「…母上が亡くなって以降、遊び惚けて親の面を見せない者を、心の底から親だと思う者が居ますか?」
エルメスは冷たい目で見ながら、コルッツ王を軽蔑する。
「……余は…余はコルッツ王国の王なのだぞ! 全員平伏せぇ!!」
コルッツ王は、エルメスの態度でストレスの限界が来たのか、顔を真っ赤にしながら発狂し始める。
「ミハイル、春奈…さっさとコルッツ王を確保しようか」
「ああ…!」
「はい!」
ミハイルはレイピアを構え、春奈は矢を一本取り出し和弓を構えた。
「余を下に見るではないっ! コルッツ王国の守護者よ! 今こそ目覚めよ!!」
「…は?」
コルッツ王がそう叫ぶと、コルッツ王の後ろの壁の一部が音を立てながら上にスライドし、そこから5mぐらいの大きさがあり、全身を鎧で覆った巨人が二体姿を現した。
「
「何故ここに!?」
思わない伏兵に、2人は驚く。
やっぱり、あれってゴーレムか…
「行け!
『攻撃命令を承認…戦闘モードへ移行します…』
ゴーレムの目が赤く光り、大きな片手斧を持ってこちらに向かってくる。
「2人は下がって、身を隠してくれ!」
「私達がお相手です…!」
向かってくるゴーレムを倒すため、ミハイルはゴーレムへ接近して行き、春奈は矢を引き直した。
「正直なところ、ゴーレムは苦手だが……聖なる炎よ! 今こそ我が剣に纏わり、我が敵を爆ぜよ! 魔剣流焔!
一蹴りでゴーレムと間合いを詰めたミハイルは、レイピアをゴーレムの胸部に突き付けた。
――ドォン!!
「くっ、ダメか!」
爆発と共にゴーレムは反動で後ろへと倒れたが、鎧に傷は付いていなかった。
「壁の向こう側に空間があることは把握してましたが……まさか、あんなのが居たとは…」
離れた場所に移動した俺とエルメスは、戦闘を見守っていた。
「……この広さなら、10式戦車が呼べるな…狙われたらヤバいが……」
辺りを見渡し、広さが十分あると分かった俺は、10式戦車を呼ぶことにした。
「…僕にも、何か手伝えることはありませんか!? 僕一人だけ何もしないのは嫌なのです…!」
10式戦車を呼ぼうとした時、エルメスが戦闘への参加を懇願してきた。
「……氷系の魔法は使える…?」
「はい! 使えます!」
「よし、なら春奈が蓮水華を放った後、その水を凍らせてくれ…頼むぞ?」
「はい!!」
エルメスの頼みを受けれ、やって欲しいことを頼んだ後、俺は左手を前に向けた。
「10式戦車召喚…!」
10式戦車を出し、俺は中へ乗り込み、エルメスは10式戦車の後部の上に乗った。
「春奈! ゴーレム達の足元に特大の蓮水華を放ってくれ!」
「はい!!」
返事をしながら、春奈はもう1本の矢を取り出し、2本の矢先をゴーレム達の足元に向け引いた。
「……月光流弓術…拾蓮水華!」
矢先にオーラを纏った2本の矢はそれぞれゴーレムの足元へ飛んでいき、水で出来た蓮華を咲かせた。
「今だ頼む!!」
「あらゆる物を等しく凍らせる自然の力よ…我の敵を凍えさせよ! 上級魔法
エルメスは片手を伸ばし、出現した魔方陣から冷たい風を吹かせ、その風をゴーレム達に浴びせる。
風があったゴーレム達は何ともないが、足元で咲いていた水の蓮華はゴーレムの足を巻き込んで、一瞬にして凍り付いた。
「さぁて、これで狙いやすくなった…10式戦車! 主砲徹甲弾装填!! 目標、各ゴーレムの胸部! それぞれ一撃で仕留めろ…撃てぇ!!」
――ドォン!!ドォン!!
ゴーレムに狙いを定めた10式戦車は、それぞれのゴーレムに向かって徹甲弾を放った。
――バゴンッ!ドゴォン!
鈍い音を立て、徹甲弾はゴーレムの胸部を貫いた。
一体のゴーレムは反動で足元の氷を壊しながら後ろへと倒れ、そのまま動かなくなったが、もう一体のゴーレムは同じように吹き飛ばされたものの、まだ動けるのか、立ち上がろうとしていた。
「しぶといな…徹甲弾装填、目標変更…ゴーレム頭部! 撃てぇ!」
――ドォン!!
10式戦車から再び徹甲弾が放たれた。
『…危険分子を確認、データを送信しmドゴォン!!
徹甲弾はこちらを向きながら立ち上がろうとしているゴーレムの頭部を貫いた。
胸と顔を破壊され、ゴーレムは倒れ伏した。
「そんな…! 馬鹿なぁっ!!」
目前の光景を見て、コルッツ王は冷や汗をダラダラと流しながら狼狽える。
「大金をはたいて、手に入れた
コルッツ王が大きな声で嘆く中、エルメスは1人でコルッツ王へと近づいた。
「…父上、この結果は貴方が欲に走った結果です…もう終わりにしましょう…」
「黙れぇ!! 余はコルッツ王国の王!! こんなところで死ぬはずがぁ!!」
「
「がっ!!」
喚くコルッツ王に、エルメスは手のひらを向け、そこから雷を流し、流されたコルッツ王は白目を向き、そのまま前のめりに倒れた。
「…それでは、父上を連れて行きましょうか」
「嗚呼…だが、どうやって連れて行くか…」
流石に大の大人を運ぶのは疲れると思ったため、運ぶ方法を考えていると、ミハイルがコルッツ王の元に駆け寄った。
「なら、これを使うがいい…
気絶しているコルッツ王に、ミハイルが触ると、コルッツ王は宙に1メートル程浮いた。
「おお! それじゃあ、これを引っ張って、連れて行くか…」
魔法に関心した後、俺がコルッツ王を引っ張り、持って行くことにした。
「それにしても、デカかったですね…」
「まぁな……」
扉の方へと歩きながら、俺らは残骸となったゴーレム達のことを話す。
しかし…コルッツ王が大金はたいてと言っていたのが気になる…軍を動かして手に入れたのか……はたまた何処から買って来たのか……まっ、それは後で調べることにするか!
疑問を抱きつつ、俺らはゴーレムと10式戦車を置いて、玉座の間から出ていった。
それぞれのゴーレムから不穏な音が出ていることに気がつくことなく…
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