悪魔に捧げる鎮魂歌

　井上晴秀が殺害された。夜中に空き巣と遭遇し、もみ合った末に殺害された。捕まらない犯人に苛立った家族は、名探偵として名高い弓月知泉を招き、事件の解決を依頼する。弓月は学生時代、友人の辻花良悦が殺害された事件で、蛭間昭雄が犯人であることを見抜き、一躍、有名になった。蛭間は自殺し、弓月は都内で探偵事務所を開いていた。
　秘書兼ボディガードの藤川を連れ、弓月は意気揚々と大阪平野にある井上家に乗り込んで来た。家族から事情聴取を行い、みなの前で犯人を暴き出すと約束する。
　夕食の席で藤川は意識を失い、翌朝、ホテルで目を覚ます。弓月の姿がない。井上家を尋ねたが、そこに屋敷はなく、見知らぬ老人が一人、庭いじりをしていただけだった。
　老人の手を借り、井上家を探し当てることが出来た。そこは、辻花家だった。辻…続きを読む