ルイス-3
さぁ、昔の話はここら辺で終わらせておこう。
先輩と別れた後、僕は何とかギリギリでバスに乗れた。
息を切らしながら運転手に
「Hi、なんとか乗れたよ」と軽い挨拶をして、オイスターカードをタッチしてから
僕は中央のドアに近い場所へと立った
イギリスのシンボルとも言える赤いバス -これは1階建てだが- の中には僕と同じ学校の生徒たちがちらほらと見える。
僕が通う学校はあの田舎町からは少し離れていて、まだ都会と言えるような場所にある、ここら辺では唯一の進学校だ
過去にはスタンフォード大学への進学実績もあると聞いたけど
…本当かな
そんな進学校に通っている人間はみんな勉学が得意だと思われるかもしれないけど
勘違いしないで欲しい。
僕自身、勉強はそんなに好きじゃないんだ。
ただ父さんが
「勉強をしていれば、大抵の出来事は解決できるだろう」と、僕をこの高校へ進学させてくれた。
僕はずば抜けて頭がいい訳でもないし、学校では常に平均点ギリギリで、仲良く話せる友達もいないけど
せっかく父さんが入学させてくれたから、僕は感謝しないといけない。
でもどうしてそんな偉そうな学校に片親の僕が通えてるかって? -入学に片親かどうかは関係ないと思うけれど-
僕の母さんはちょうど僕がチャーリーから離れた頃(13歳の時)に、父さん以外の男と関係を持ってね。いわば浮気だ
それなのにバカな母さんは浮気の証拠を一切隠さなかったから、それを発見した父さんは怒りと虚しさが混ざったような顔をして、すぐさま離婚の申し立てをしたんだ。
でも母さんが離婚をなかなか認めてくれなくて、1年近く別居しながら、互いに弁護士を挟んで裁判をしていた。
そしてしばらく裁判が続いたのち
両親の離婚が正式に決定された。
その時僕は14歳だった
だから今僕が通っている高校の学費は、裁判中に決めた財産分与と母さんからの養育費、それと父さんが血のにじむような思いで働いたお金から払われている。
でも僕は今も考えるよ
あの時母さんが浮気の証拠を隠していれば、僕はあと3.4ヶ月は楽しく幸せに家族3人で過ごせていただろうに、って
だから浮気をした母さんも、夫と息子がいるのを分かっていたのに母さんと関係を絶たなかった浮気相手の人も、どっちも僕は生涯ゆるせる気がしない。
でも母さんと違って僕は父さんが好きだし、父さんの仕事にも誇りがあるから
僕がたくさんのことを学んで、自立をして、出来るだけ早く父さんに自分の時間を持ってもらうんだ
その為なら僕は1人でも頑張れる
“次は、ホルト・セントラル高校前、ホルト・セントラル高校前”
考え事をしてると、案外すぐに目的の時間がやってくる
バスのアナウンスが流れると共に生徒の誰かが降車ボタンを押した。
乗客のガサガサと降りる準備をする音や、あくびをする音が聞こえる。
僕も少しだけドアのそばに寄った
しばらく待っていると、僕らが通っている学校が木々から顔を出す
“ご乗車ありがとうございました。”
そうアナウンスが流れてバスが止まった後に、僕は一息ついて、中央のドアからバスを降りた。
7月に入って本格的な夏が始まるぞと言わんばかりに眩しい日が照りつける。
それでも毎日のように見ている校舎に向かっていく生徒たち、いつもと同じ風景
でも今日は少しだけ違うところがあった。
いつも校門の前には数学教師のハンス先生が居て、僕たちに挨拶をしてくるけれど
今日はハンス先生の横に髪を結んだ知らない男性が立っていた。
「Morning ルイス、髪が乱れてるな、寝坊したのか?」
「おはようございますハンス先生、実は昨日夜更かししちゃって…後で髪を治しておきます」
僕はにへらと笑いながら答える。
そしてハンス先生と短い会話を終えた後
横に立っていた男が名簿らしき書類を抱えながら話しかけてきた。
「君がルイスくんか、初めまして。」
男は僕に右手を突き出して
「私はベリアル・バンディ、今日からこの学校の先生になるんだ。どうぞよろしく」
と、すごく人当たりの良さそうな顔で言った
その態度に気分が良くなったので、僕も笑顔で右手を出して
「バンディ先生、こちらこそよろしくお願いします。」
と言い、僕は彼と握手を交わした。
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