第12話 襲来
柴田がいつものようにギルドに行くと、人だかりができていた。
「何かあったのか?」
その辺の冒険者っぽい人に聞いてみた。
「緊急招集らしいぞ。どうやら街の近くにフェンリルが出たらしい」
「フェンリル……?」
「そうだ。そこらの村ならば壊滅するだろうが、この街は冒険者が沢山いるから何とかなるかもしれないな。幸か不幸か、イリーナ隊長もいるし」
「待て、フェンリルって何だ?」
「え?知らないのか?」
「ああ……この辺りには来たばかりでな」
「凶暴な魔獣だよ。軍隊が出動するようなやつさ」
「フヒッ!?軍隊!?」
「ああ、ただ今回のやつは、どうも門の前でくつろいでいるらしい。今冒険者と守備隊が向かい合っているところじゃないか?ただ、隊長も出ているから、あまり冒険者は集まっていないみたいだが」
「イリーナが……?ああそうか、討伐どころじゃないもんな」
「ああ、討伐する前に死んでしまったら本末転倒だ。俺も今回は遠慮しようと思ってる」
柴田はその話を聞くと、フェンリルのいる場所へ向かった。
……
「イリーナさんがいるのに、行って大丈夫ですか?」
「ああ、この前は何とかなった」
「え!?会ったことがあるんですね」
「訓練の時にな」
「生き延びたんですね。ご主人様は、私を見た時も大丈夫そうでしたし」
「フヒ、そこらの奴と一緒にするなよ」
……
門の前には、大きい獣と、イリーナがいた。イリーナがこっちに気づいた。
「柴田殿……!?」
イリーナがこっちをみて驚愕している。仮面は着けていないようだ。
(目の前にフェンリルとかいう化け物がいるのに、それ以上の化け物を見た時みたいな反応だな。まあ、否定はしないけど。しかし相変わらず美人だな。フヒ)
「こ、これは違うのだ。フェンリル、そう、フェンリルにやられて!」
「……?」
(イリーナは何を言ってるんだ?)
そう思ってあたりを見渡すと、冒険者が数人倒れているのに気付いた。
「……」
フェンリルは心なしか憐みの視線をイリーナに向けている。
「決して私が仮面を取った瞬間に倒れたとかじゃないぞ!決してな!」
「えぇ……」
聞いてもいないことをペラペラとしゃべりだすイリーナに、柴田も少しあきれた。
「大きい獣ですね。これがフェンリルですか」
図体は大きいがおとなしく座っていて、どう見ても村を滅ぼすような害獣には見えない。
「あれ、この獣ってもしかしてエルフに連れてこられた時にいたやつか?」
「エルフ?ウッ……その名はやめてくれ。トラウマが……」
「そうだったな、すまんすまん。フヒ」
そんなやり取りをしていると、突然フェンリルが遠吠えをした。
「アオーン!」
「うわっ」
あまりにも大きい声に、柴田は耳をふさいだ。しかし空気の振動に圧倒され、尻餅をついた。
「ご主人様、大丈夫ですか!?」
ソーニャが駆け寄ってくる。
「フヒ。大丈夫だ。ん……?」
向こうからすごい勢いでフェンリルの群れが駆け寄ってくるのが見える。
「何……あんなに沢山!?」
イリーナも驚いているようだ。
「ご主人様!逃げましょう!」
「腰が抜けて立てない……」
「……」
そうこうしているうちに、フェンリルの群れが到着した。群れの一頭の上に女の子が乗っていた。飛び降りると、柴田の前にきた。この女も、かなりの美少女である。
「探したぞ!」
「フヒッ、エルフ!?」
「エルフだと?愚弄(ぐろう)するでない!」
「ヒッ、すいません……!」
柴田は気迫におされ、とりあえず謝った。
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