第3話 森の中で
光の元にたどり着いてみると、大樹があった。周りに青白い火の玉が浮いている。
「すげー……」
昔父母に連れられて屋久杉を見に行ったことがあったが、それ以上に大きかった。しばらく柴田は圧倒されていたが、次第に気持ちが沈んでいった。
「北海道にこんな場所あるなんて聞いたことないし、ライオンみたいな獣はいるし、外国確定だなこれは……」
気持ちが落ち込むと、今まで必死だったため忘れていた痛みがぶり返してきた。
「くっ、これはもうだめだ。やっぱり俺は死ぬのか。だが最後に見る景色としては、まあ悪くはないかな。拉致した奴らもここまでは追ってこれないだろう……」
柴田はその場に倒れこみ、意識を失った。そこに近づく人影がひとつ……。
……
目が覚めると、ベッドの中にいた。木の天井が目に入る。
(そうだ、今までのは夢で、ちゃんと近くの小さな病院に運ばれたんだ。間違っても拉致されたなんてこと……ないよな?)
柴田はそんな願望を抱き、あたりを見回す。小屋の中のようだが、近くに仮面をつけた人が座っていた。
「フヒッ!」
その仮面は醜い老婆のような仮面だったので、柴田は驚いて声を上げた。
(医者じゃなくて不審者がいるなんて、やはり拉致されたんだ……しかも痛みはまだ残っているし逃げられないぞ)
向こうがこっちに気づいたようで、立ち上がって向かってくる。修道服のような体型のわかりにくい服を着ていたが、それでも女であることははっきりとわかった。耳が横に伸びて長い。柴田はとにかく、得体のしれないものが近づいてくる恐怖に身をすくませた。
(誰か助けて……)
「あら、目が醒めたのですね?」
透き通るような声で話しかけられた。柴田はとりあえず話してみることにした。
「何の組織だお前らは?反社(反社会的勢力)か!?」
「そんなに驚かないでください。ハンシャ……?というのはわかりませんが、私はエルフのものです。」
(エルフだと……?聞いたことがないな。外国のマフィアみたいなものか?)
「……俺を獣の餌にでもするつもりか?」
「餌……?餌になんてするわけないじゃないですか!気持ち悪いこと言わないでください!」
「気持ち悪いだと!?気持ち悪いのはお前だろ、不細工な仮面なんかつけやがって!」
「この仮面はエルフの中でも評判の自慢の仮面です!で、でも確かにあなたに比べれば私の仮面なんて不細工かもしれないですけど(クスクス」
(俺の顔面の方が不細工だよ!嫌味まで言うのかよこいつ。俺も嫌味くらい言ってやろう)
「お前ら仮面の自慢とかしてんの?暇なの?」
「エルフは皆仮面を持ってますよ。人間は、エルフの顔を見ると一生うなされて廃人のように過ごすらしいですから」
(顔を見られると口封じに何かするってことか?怖っ!)
「やっぱり碌でもない集団じゃないか……」
「そんなことありません!私たちは見た目は悪いですけど……それでも心はとても綺麗です。精霊とも対話できますし」
(精霊……?あー、アウト。狂信集団だこれ。はやく逃げなきゃ)
柴田はドアの位置を確認すると一目散に走りだした。
(やっぱりまだ痛みが残ってるな。でも今はそんなこと言ってられない)
「駄目ッ!!」
(逃げられると困るだろうけど、構うかよ!)
バタッ!
ドアを開けて目に飛び込んできたのは、空……?今まで柴田がいた場所は木の上に建てられた小屋だった。柴田は止まろうとするが遅かった。
「え……?」
もう駄目かと思ったが、仮面の女が手をつかんで支えてくれたようだ。
「大丈夫ですか!?」
「あ……ああ、助かった」
「私たちエルフは森の住人、木の上に家を建てて暮らしているんです」
(森の住人って、くまさんかよ……)
「怪我をしてるんだから、おとなしくしていてくださいね(ニコッ」
(終わった……)
柴田はもう逃げられないことを悟った。
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