第2話 弱肉強食でいうところの弱者

(痛っ!)

 柴田は立ち上がる時に痛みで少しふらついた。トラックにひかれた時の痛みが残っていたようだ。


(歩くのもやっとだな。それにしても、ここはどこなんだ……?)


 周りを見渡してまず目についたのが、右に広がっている森である。高い木が並んでいて、獣やら虫やらがたくさんいそうだ。

(ここに入ったら迷って死ぬな)


 森以外の方向は、水平線まで見える草原が広がっている。


(北海道か、アフリカあたりの外国か?だとすると拉致されたかな?監視の人は……ん?)


 後ろを見たときに沢山の視線に気づいた。遠くに2mはあるライオンのような獣の集団がこちらを見つめている。毛並みは輝いており、獣というよりも神獣の様な見た目をしている。その間に1人の少女もいるようだ。短い金髪で毛皮を服代わりに体に巻いている。しかし距離があって顔はよく見えない。だが柴田にとって今はそんなことはどうでもよかった。


「フ、フヒッ……」


 思わず声が出た。


(もしかして、俺はあの化け物のエサとして連れてこられたのか……?)


 柴田は気が動転してわけのわからないことを考えながら、すぐに隣の森に逃げ込んで走り出した。事故の痛みは強かったが、そんなことを言っている場合ではない。少しでも距離を稼がなくてはならないのだ。


「ハア、ハアッ……これ死ぬやつだっ!」


 ……どれくらい走っただろうか。森の中は薄暗く、大分深くまできたようだ。


「フウッ、フウッ、ここまでくれば流石に大丈夫か……」


 勢いで森に入ってしまったが、これはこれでこのまま森の中で野垂れ死んでしまうパターンに思えた。


「フウッ、フウッ、……あっちが明るいぞ?ここにいても仕方ないし、行ってみるか」


 森の奥に青白く光っている部分を見つけた。出口ではなさそうだったが、柴田はそちらへ向かうことにした。

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