美醜逆転異世界に転移したおっさんは気付かない

仙道

第1話 おっさん、転移してしまう

 柴田宏(しばたひろし)は学生時代から不細工といじめられ、ニートになった。


 40代も半ば、いつものように買い物に行くために外に出た。

笑いながら話す女子学生4人とすれ違うと、「ヒエッ」という声が聞こえた。柴田はそうした光景に(またか……)と思いながら、楽しそうに青春時代を過ごしている女子学生たちに嫉妬やいら立ちを覚えていた。

(クソが、俺の学生時代の思い出なんて、不細工といじめられたことだけだぞ……!)


 公園を通りかかると、子供たちが元気に遊ぶ声が聞こえた。柴田は、子供の頃から友達なんていなかった。

(最近のガキはうるせーなー……)

柴田の外見はひどいものだったが、内面も長年にわたるいじめでひねくれ、腐りきっていた。

そんなときボールとともに子供が一人道路に飛び出していった。向こうからはトラックが走ってくる。

柴田はとっさに子供を突き飛ばすが、バランスを崩しその場に倒れこんでトラックにひかれた。


(クソッ、これ死ぬんじゃねーか?つくづく運がない人生だったな)

薄れゆく意識の中で柴田は自分の人生を呪っていた。


……


 柴田は目を開け、自分がトラックにひかれたことを思い出す。

(助かったのか……?絶対死んだと思ったのに)


 しかしあたりを見回すと、病院のベッドでも、さっきの道路でもなく、草原が広がっている。夢でも見ているのかと思ったが、たるんだ腹を見てこれは現実だと思いなおした。


「は?」


 柴田はなぜ自分が草原で寝ていたのか、理解できないでいた。

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