第4話 怪我を治そう

「なあ、他のエルフの人はどこにいるんだ?」

「エルフなのに人ですか?冗談もお上手ですね(クスクス」

「は?」

「え?」


(エルフの人は人を超えた何かってことがいいたいのか?そういう教義なのだろうか?この話題は触れるとやばそうだな)


「いや、何でもない。ハハ、人な訳がないよな」

「クスクス、あなたならば大歓迎ですけどね」

「ハハハ……」


(狂信集団に入るなんてお断りします!)


仮面の女は、急にうつむくと、つぶやく。


「他のエルフの居場所なんて、私が教えてほしいくらいです……(グス」


(仲間の居場所を知らないなんて、情報統制がすごい組織なんだろうな。そしてこいつは多分新入りで知らされていない、と。味方につけて損はなさそうだな)


「ハハ、心配すんなよ。そのうちわかるって!」


仮面の女は顔を上げ、


「そうですよね!ありがとうございます!お優しいんですね」

「ハハハ……、ところで、ここってどこの国?日本であってる?」

「ええ、ここは国ではなく森ですね」

「?」

「世界樹の森です」

「は?」

「?」

「……日本語は何で使えてるの?」

「?」

「いや言葉だよ。きみが今喋ってる言葉」

「普通の言葉ですが……。」


(何この会話にならない感じ)


「とりあえず近くの街まで行きたいんだけど」

「駄目です」

「えっ?」

「駄目でしょう?」

「俺に聞かれても……」

「エリクサーがありますが、それを使うとあなたがここにいる理由もなくなってしまいますし……」

「襟草(えりくさ)?それが俺をここへ連れてきた目的と関係があるのか?」

「ええ。そ、それは少しは期待していましたが、その見た目なので……まあ、相手にはされませんよね」


残念そうに女は言った。


(俺が不細工すぎて相手にされないってことか?クッソディスられてるんだが……)


「ふざけるなよ!わかってるならとっとと帰らせてくれ」

「ヒッ!わ、わかりました……これがエリクサーです」


そういうと仮面の女は装飾がゴテゴテしたガラス瓶のようなものを渡してきた。中に緑色の液体が入っている。


(襟草を煎(せん)じたものだろうか?聞いたことのない名前の草だが)


「え?何?」

「使ってください。それ1本で国が買えますが……」

「使うって、これ飲めってこと……?で、後で金を請求すると?俺に払えると思う……?」

「いえ、請求はしませんが、それを飲まないと帰れませんよ……」

「これを飲めば帰してくれるのか?」

「そ……そんなに帰りたいですか?まあ、嫌ですよね……」

「当たり前だろ」

「で、では飲んだ後で帰します」

「約束だぞ?」

「ええ、必ず近くの街まで運びますわ。」

「それなら……」


(何かの儀式か?でも、この状況だと飲むしかないか……。)


「その前に私の名前を。私はエルフの、アデル・エスムといいます。」

「え、ああ」


(名前言い合って進める儀式なんだろうな。アデル・エスム……外国人の名前だ。コードネームかもしれないが。)


「俺は柴田宏だ。もう知っているかもしれないが」

「その名は一生忘れません。では……飲んでください」

「ああ……」


柴田は覚悟を決めると、瓶の中の液体を一気に飲み干した。


(体が熱い……。毒だったか……?)


柴田は体が熱くなるのを感じながら、意識を失った。

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