第6話 奴隷を買おう

(街中で仮面をつけてる人はいないな、よかった)


ずっと醜い女の仮面しか見ていなかったせいで、柴田は安心していた。


(ただちょっと不細工な人が多いかな。あそこでいちゃいちゃしてるカップルも……俺が言うのもなんだが……よく外であんなことできるな!)


しかしすれ違う不細工な女たちは、皆こっちを観察しながら歩いていた。


(自分より下の奴を見て心を落ち着けてるのか。そう思うとイライラしてきたぞ。そういえばこの世界は奴隷がいるんだったな。可愛い奴隷でも買って、癒されたいな。どのくらいの値段なんだろう)


「フヒヒ」


柴田は気持ち悪い笑みを浮かべながら、妄想に浸っていた。そんな中、普通くらいの可愛さの女がずっとこっちをみていた。柴田は妄想してるのがばれたと思い、とっさに言い訳をする。


「フヒッ、はっ、犯罪とかじゃ!」

「ッ!!」


女は突然話しかけられたからか、目を大きくして驚いていた。


「わっ、私ですか!?犯罪!?えっ、そんなつもりじゃ……」

「へっ?そうなの?よかったー。奴隷なら犯罪じゃないよね。フヒヒ……」

「ど、奴隷!?」

「フッ、フヒッ、奴隷の店っ!探しててっ!だから奴隷買ったらとか考えてたわけじゃ……フヒッ!」

「奴隷の店を探してるんですか」

「そうそうっ!やましい気持ちとかじゃなくて……フヒヒ」

「クスクス。疑ってませんよ。お店はあっちにありますよ。あ、案内しましょうか!?」

「フヒッ、つ、ついてこなくても大丈夫!」


(ついてこようとするなんて、犯罪疑ってるんだろうな)


「そ、そうですよね。私何勘違いしてるんだろう……」

「フヒヒ、そう、勘違いだよ。気を付けてくれよ!」

「はい……ごめんなさい」

「わかればいいんだよ。フヒヒ」


女と別れると、柴田はそれらしき店を見つけた。中に人が入った檻がいくつか置いてある。


「誰かいますかー?」

「はいはい~」


店員と思われるおばさんが出てきた。


「フヒッ、ここは奴隷の店ですか?」

「そうだよ。お客さん、どんな奴隷をお探しで?」

「フヒッ、今は金をこのくらいしか持ってないんですが、いくらするのかなーって思いましてー。フヒヒ」

「ちょっと見せてくれるかい?……お客さん、この金じゃ奴隷買うには足りないよー」

「一番安くてどのくらいですか?」

「奴隷はね、安けりゃいいってもんじゃない。安いとね、いろいろ訳ありになっちゃうんだよ。そうだ、この店で一番安い奴隷を見てみるかい?」

「フヒヒ、はい」

「ついてきな」


そうして、目立たない隅の方にある檻へ案内された。


「これなんだけどね……これならお客さんのお金でも買えるけど、わかってもらうには一番いいかな。あたいらも売れない商品には苦労していてね。どうも食費ばかりかかって。」


檻の中に薄汚れた服を着ている女がいるのが見えたが、檻が低かったため、柴田は顔を見るためにかがんで覗き込んだ。


「あっ、お客さん!やめときな!見ない方がいいよ!」

「……」


柴田は女の顔を見て言葉を失った。風呂にしばらく入れられていないのか、金髪の汚れた髪が伸びきったような女だったが、今まで雑誌でも見たことのないような美少女と目があった。柴田はそのまましばらく固まっていた。


「あー、言わんこっちゃない。これはしばらく眠れないね。あたいは止めたからね!」

「いくらだ……」

「え?」

「これはいくらだと聞いてるんだ」

「ああ、値段を確認するんだったね。そんなに怒るなよ。悪かったって。でもこれで納得してもらえたか「いくらだって聞いてんだよ!」」


柴田は店員に詰め寄った。店員は目を丸くして後ずさった。


「い、いやね、お客さんの金で買える奴隷ってこのくらいって「買うよ!」」


「……ハハ、お客さん、落ち着いて。悪かったって「いいからさっさとしてくれ!!」」


「……そんなに急いで奴隷がほしかったのかい。そうとは知らずに悪かったよ。あたいの負けだ。あたいとしても、不良在庫が処分できるから嬉しいんだけどね。ただし、返品はなしだよ?」

「ああ」

「じゃ、契約成立、っと」


そういって店員は奴隷を檻から出した。


「お前も運がいいな。この店で一生過ごして死ぬのかと思ってたよ。」


奴隷もそう思っていたらしく、驚きながら柴田を見つめていた。

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