抱擁するアリア

作者様ご自身もおっしゃいますが、「こえけん」の、どちらかといえば明るいものを求められている作品とは、いわば真逆を行くものでしょう

しかし、大人の雰囲気、耽溺といえば悪い印象かもしれませんが、深く沈み込むような声をはっきりと「聴く」ことが出来ました

さらに音や声だけでなく、香りや触感、五感をフルに刺激されます

文字で、読むだけではあまり伝わりづらいかもしれません

これはやはり聴くものでしょう

そのための台本であると認識すれば「……」の余韻（ノイズ）のなかにも読者に聴こえてくるものがあると思います

時代が進み、レコードはおろかCDショップですらも街から消えゆく昨今。
あえて恋物語の主役をレコードに託し、一曲のアリアが演奏されている間にヒロインと男性の恋物語をサクッと始めてきっちりとまとめあげる技量は実にお見事です。
衣擦れの音、レモネードやコロンの香り、お互いの身体が触れあう感触、飲み物の味、そして流れ続けるアリア。この作品は人間の五感で受け止められるもの全てを言語で表現したもの、それも詩的かつ耽美に表現しようと挑戦したものに感じられました。ここで奏でられる恋の歌はどこまでも美しく、切なく、そしてレトロなのです。

お互いに体重を預け、髪をなでるだけで通じる想いもある。
そんな素朴で純…続きを読む

レトロな雰囲気がお好きな方にすっごくすっごくおススメします！
古いレコードの音色に宿った魂が美しい乙女のかたちをとって現れるという設定からしてもう素敵！

しかもレコードの乙女は外見だけが美しいのではない、とても純粋無垢ではじめて感じるものすべてに美しさと祝福を見出しているのです。

その反応がまたうぶだし、感性の豊かさもうかがえます。
もうもうすべての方に読んで欲しいと思うくらい素敵です。

自信をもっておススメします！