第6話 体の重み
貴方には……重さはあるのですね……。分かります、貴方の頭は確かに重みがあります……。私は知りたいです……。貴方の重さを……胸以外でも感じてみたいのです……。
(ノイズ交じりのヴァイオリンの音色。アリアの服の衣擦れの音。椅子がずれる音)
今は私が貴方の膝の上に載っていますが今度は……逆になりましょう……。床に座っていいですか……私の膝の上、太ももになるのでしょうか……そこに……貴方の頭を置いてください……。大事にしますから……。
(ヴァイオリンの音に被さるように二人の動く衣擦れの音。ザザ……というレコードの雑音)
貴方の頭の重みで……私の太ももは少し窪んでいます……。このような体験は初めてです……。人間の頭とは……確かに重たい者なんですね……。そして貴方の髪の毛……触れてもいいでしょうか……。
(アリアが貴方の髪をかき上げる音。ヴァイオリンの音、少し小さくなる)
私の髪は絹糸のように出来ていますが……貴方の髪は何に例えられるでしょう……オレンジの香りのする黒いふさふさの束……。人間とは……なんて不思議なものなのでしょう……。魂ではなく肉体なのに……魂のようによく出来ています……。
(ザザ……という雑音、ヴァイオリンの演奏)
私は貴方によって重みを知りました……。今度は太ももと膝ではなく……私の肩に頭をのせていただけませんか……。いろんな部分で貴方の頭の重みを知りたい……。
(姿勢を変える二人の衣擦れの音。レコードのヴァイオリンの音色)
肩に頭を乗せてくださると……オレンジの香りが……また近くになって嬉しい……私も……貴方と同じ香りになりたい……。私もシャンプーという物を付ければ……貴方と同じ香りの髪になれますか……。どうしました?また顔が赤くなっています……。
シャンプーは……また今度?……もっと仲良くなってから……。分かりました……貴方がそうおっしゃるのでしたら……私もそうします……。貴方の言う通りにします……。
(姿勢を直す貴方の衣擦れの音。ヴァイオリンの音色)
いい方法がある……。それは何でしょう……。貴方と私が同じ香りになる方法ですか?嬉しい……どんな方法でしょう……。コロン?それは何でしょう……。香りのする液体なのですか……。一つの同じ容器に入っているコロンを共有すれば……貴方と私は同じ香りになれるのですね……。ぜひ……そうさせてください……。コロンはこの部屋にある……。そんなに素晴らしいものがすぐ近くにあったのですね……。
(立ち上がる二人の衣擦れの音。回り続けるレコードの音。足音。引き出しを開ける音。再び足音。コロンの容器を置く音)
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