第17話 なんだろうね
バベル語…
どうやらミィナやおやっさんが話している言葉の事らしい。
しっかし、言語の名称にバベルかぁ。なかなかにパンチのある名称だなぁ。
バベルと言って思い出すのは、やはり俺たちの世界にあった旧約聖書に出てくるバベルの塔だろう。
神に近づこうとした人間が建てたすげぇ高い塔で、その行為が神の怒りに触れてしまい、塔は破壊されたのだ。
その時、再び人間が同じことをしないようにするため、言語をバラバラにしたとかそんな話だったと思う。
詳細は良く知らないのだが。
「あ、そっか。じゃあ私が何言ってるか分からないのか…」
ミィナがびっくりしたような表情でそう言うのに対し、俺は首を横に振って応えた。
「あれ? もしかして…伝わってる?」
俺は笑顔で頷いた。
「すごい! でも話せないんだよね? なんで?」
肩をすくめて応えたけど、これってアメリカンな反応だよな? 異世界で意味通じるんだろうか…
「分かんない…って事かな? ん~。なんだろうね。不思議~」
ミィナはどことなくぽやぽやっとしている雰囲気を持ってる女性だ。
何と言うか…すごく癒し枠である気がする。
歳は多分、十代後半くらいか。
薄い茶色の髪は肩のあたりでふっつりと綺麗に切り揃えられている。
光の加減によって髪が光って見えるのだが、その瞬間なんかは女神みたいだ。
頬にはそばかすが少しあるが、気にならない程度だ。
タレ目の中にある瞳は青く、とても澄んで見えた。
「そうだわ、お茶を出すように兄さんに言われてたんだった。ごめんなさいね、すぐ用意するからちょっとだけ待っててくださいね」
彼女は苦笑いをして立ち上がると、肩をすくめて見せた。
なんだ、アメリカンな感じ、いけるんじゃん。
キッチンへ向かう彼女の後姿を見ながら、ふと思う。
そう言えばこの世界、キッチンに水道なんて無いんだろうか。
まぁ中世くらいの文化レベルとすると、さすがに無いんだろうな。
じゃあ水は普段どうしてるんだろうか。
やっぱり井戸とかから汲み上げて来たものを
うん。たぶんそうなんだろうな。
中世のころは実際に水瓶を使っていたらしいし、この世界でもきっとそうなのだろうと思う。
なにしろ水瓶という単語があるくらいだ。それくらいには普段使うものだったのだろうし。
ただ、もしかしたら違うかもしれない。
理由はひとつ。
そう、魔法だ。
この世界に魔法が有れば、話は変わって来る。
今のところ、魔物が居るのは間違いない。
なにしろ初めに会ったこの世界の生物は、魔物であるタブンスライムだったわけだし。
そしてタブンスライムは、俺たちの世界には存在しない生物…生物だよな? まぁいいか、とにかく俺たちの世界には存在しないのだ。
それに幽霊も存在する。
いや、幽霊に関しては俺たちの世界にも居ると言い張る人たちが居ると思うが、見たことが無いのだから居るとは思えないので、一旦俺たちの世界には居ないものとして考えよう。
となると、やはりこの世界は俺たちの世界とはいろいろな何かが違うのは間違いない。
では、魔法はどうだろうか。
今のところ、魔法のようなものとなると、師匠がグーロを呼んだアレだろうか。俺が鼻や目から血を流したアレだ。
だがアレは、スキル、だったと思う。
俺が使えるものと同じだ。
てか、よく考えたら俺もスキル使えるんだっけ。
すっかり忘れていた。
なんか特別なスキルとか使えればいいのだが、相変わらず自分のステータスを見る事も出来ないから、いったいどんなスキルを持っているのかも全く分からないままだ。
よし。分かっていることをいったん箇条書きにしてまとめてみようか。
【使えるスキル】
・シールドバッシュ(対象をノックバックしてスタンさせる)
・シールド(上昇率小って言ってたし、使えたとしてもかなり低い習得率とかそんなのだと思う)
・セーブ(風呂場にあるシャンプーを使って洗髪することでセーブが出来る。残りは九回だ)
ふむ。たった三つだ。
まぁ最後のセーブにいたってはスキルと言うかアイテムの機能だと思うが、あの風呂自体が俺のスキルとして換算できるとするならば、セーブ機能ももちろんスキルという事になる。ので、一旦スキルとして計算しておく。
あとは、同じく風呂場にあるリンスとボディーソープだが、あれもシャンプーと同じように使うことで特殊な能力が俺に付与されるのだ。
ある意味、というかまんまマジックアイテムと言える。だったらシャンプーもマジックアイテムだろうって? まぁそれも一理ある。が、今は置いといて。
とするならば。
同じようなものがこの世界に複数存在するとすれば、魔法が有る可能性は結構高い気がする。
果たしてどうだろうか。
俺は思考を巡らせながら、ミィナがお茶を持ってきてくれるのを待つのだった。
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