魔国前哨戦編

おめでとう!君が初めての入国者だ!

(あぁ、死んだ、のか我は…)

バハムートは、心の中で呟いた。


だが、目を開けることに気がつき、目を開けると…。


生きていた。


そして、目の前にはノートの姿が。


「生きて…居るのか?」


「あぁ、俺が殺さないようにしてやった」


バハムートは、ノートの言葉に唖然とした。

なんだろう?この気持は、恐ろしいとは、また違う何かを感じる。


(あぁ、私も、この時が来たか…)


バハムートは、一つ、何かに気づいた。


「支配者ノートよ、貴殿の強さには到底敵うまい。そこで、我を貴殿の配下にさせて貰うことは出来ぬだろうか?」


「………え?」


俺は、突然の言葉に驚いた。


え?え?バハムート…が、俺の配下?

ま、まぁ、遊び相手とか国の戦力にはなるとは思うから……まぁ良いだろう。


「ま、まぁ良いだろう」


「感謝する」


だけど…バハムートみたいな巨大すぎる奴を連れて帰ってると……。


俺は頭の中で、シリウスがよろよろと倒れるシーンが浮かび上がった。


うん。シリウスが死んでしまう。

だが、どうしようか…。


「む?そろそろ時間か……」


その時、バハムートの体が白く光り出した。


「どうした?」


「あぁ、あの封魔の錠から封印者の任意なしで抜けると、十分後に聖なる魔法ホーリーマジックが強制的に発動し、一度封印された魔物はこの世界から存在を消される」


「……!?」


な、マジか…。


俺は、自分の犯してしまった失態に気づいた。


「す、すまない……。そんなつもりは無かったんだ」


「よい、どうせこの先何千年もあの錠に縛られながら朽ちるよりかは、良かったものよ」


バハムートは、地球を見ながら言った。


「所で、このままでは我は朽ちてしまう。そこで提案だ。我を貴殿のスキルにさせてくれ」


………は?


ごめん、ちょっとまて。どういうことだ?


「どういうことだ?スキルにする?そんなことが出来るのか?」


「ああ。貴殿、精霊が宿っているな?」


ん?何故分かった。

魔力波から感知したのか?


「あぁ。だが、それが?」


「それもスキルの一部も同然である。我は宿っても精霊ではないので受け答えなどは出来ぬが、我を一時的に召喚や、我の力の一部を使うことが出来る。そすれば我は朽ちぬし、貴殿は力を得る。一石二鳥という物ではないか?」


「確かにそうだが、そんなことが可能なのか?」


「あぁ、……いずれも、もう時間がない。百聞は一見にしかずである。我を貴殿の中に入れることに関しては、良いな?」


「あぁ、そこに関しては疑問はない」


「そうか、それでは始める」


バハムートの光が、また別の光へと変色する。


すると、俺の中に吸い込まれるように、光と化したバハムートは俺のスキルの一部となった。


《報告、アルティメットスキル最恐の壊竜アルティメタルデトノイドを入手しました。》


ほ、本当にスキルになった……。

マジか、まぁ強そうなスキルだしな。

使えるときに使っとこう。


 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


深淵狂気の森。


そこに足を踏み入れると、白竜の怒りを買い、二度と出れなくなるという逸話がある。


だが、森の中へ入ると、貴重な回復草、鉱石などが採取出来るという話もあった。


欲望や興味で足を踏み入れた者は数知れず。そしてその全員は未だに帰還出来ていない。


そして、その森へ一人、今ここに足を踏み入れた者が居た。


「はぁ…はぁ…。クソ、食料も水もなくなっちまった!来た道も分からねぇ。このまま、俺は死ぬのか…?」


男はフラフラと、木の根の上、岩の上を乗り越え、歩いて行く。

見た目は三十後半位だろうか?大きなリュックサックを背負っている。  


すると、一つ。巨大、今まで見たことないくらい巨大な岩が男の前に立ちはだかった。


「もう少し…なんだ…はぁ…、白竜様に、この願いを……はぁ…、叶えて…貰うために…!」


男は、上へ、上へと、細く、痩せ細った手足で登る。

もう何日も食べていない様子だ。


「はぁ…フェリア!…待っててくれ……今、会いに行くから…!」



「………あ……」



その時、男は落ちた。



この高さだと、もう助からないくらいの高さから。


男は涙した。


恋人ともう一度、『あの世』なのではなく、彼女が愛したこの現世で、もう一度愛し合いたいと。

この願いを叶えて貰うために白竜へ会いに来た。だが、ここで終わってしまったのだ。


(あ、あぁ…フェリア……君ともう一度…この世界で会いたかった…)



男は気を失った。


…………………。

……………。

…………。



その時、黒きロングパーカーを着た男が、男を受け止めた。



「せっかくのお客様を事故に遭わせたりなんかしたら、国の評価が下がるじゃないか」


黒きロングパーカーを着た男は、そう言い、黒き翼を広げ、天へ飛び立った。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


ノートは宇宙空間で一人、瞑想をしていた。


その理由は…遊びだった。

無重力空間で遊んでただけだったのだ。


さてと…帰るか。


俺は黒い翼を広げ、地球へと向かう。

大気圏は、結界による防御でどうにか大丈夫。


う~ん。暇になっちゃった。

バハムートと闘って楽しかったけど、本の一瞬だったな。

ちょっと散歩して帰るか。


すると、俺の魔力認知により、一つの反応をキャッチした。


ん?これは…人の反応だ。


え?人?って事は…。


この時、ノートは壮大な勘違いをする。

だが、これが上手くオーバーローズの一つの戦力となったことは、ノートでも知らずのことだった。


初めての入国者か!?


やっとか…!


よしよし、なら、お持てなししないといけないな!

だけど…今からは無理だと思うだよな…。

とりあえず、盟主的な俺が出ておこう!


あら?なんかヘトヘト。

……これ、やばくね?


俺は全速力で飛び降り、間一髪キャッチした。


「ふぅ…まったく。せっかくのお客様を事故に遭わせたりなんかしたら、国の評価が下がるじゃないか」


そして俺は、黒い翼を広げ、空へ飛び立った。

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