悪夢

「ん…あ…?……ここは……」


男は、目を覚ました。

そして、目の前に広がる光景は、見たこともない病室。

そして、横には美人な獣人の女の人だった。


「あ、起きた。今主人様に伝えます」


「あ、えっと。は、はい?」


なにも分からずに返事をしてしまった男はボーッとする。

すると…。


「おい!起きたって本当か!?」


黒い服を着た男がやってきた。

その黒ずくめの男は、ズタズタとこっちへ近づいてき、片手を差し出してきた。


「やぁやぁ。私はこの国、オーバーローズの支配者ガヴァ・ノートだ。おめでとう!君が初の入国者だ」


「あ、有難う御座います…?」

二度目もなにも分からずに返事をする。

そして、手を取り握手を交わす。


「さてと、君は何で深淵の森に足を踏み入れた?死にたかったのか?」


その時、男の頭の中で何かが覚醒した。


「そ、そうだ!……!?ここは、ここは何処だ!?オーバーローズ?そんな国聞いたことないぞ!」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


お?どうやら正気に戻ったようだ。


まぁ、驚くのも無理はない。


「無理もないよ、だって、公式に国を設立はしていないからね」


「お、お前は誰だ?」


「さっきも言っただろう?この国の支配者ガヴァ・ノートだ」


すると、隣から殺気のような、重い圧を感じた。


「貴様を救ってくださった御方に何という態度……」


「ひぃ……!」


男は、ベッドの布団を握りしめ少し後ずさる。


「ま、まぁまぁベガ、それくらいにしていけ。せっかくの入国者だ。手荒な真似をしたら許さぬ」


「……はい。分かりました」


すると、ベガは一歩後に下がる。

そして俺は一つ質問をする。


「君、白竜が…とかなんとか言ってたが、シリウスに何か要か?」


「は、白竜様が居るのか?!」


「あぁ」


「……!?あ、会わせてくれ!頼む!」


焼けに熱心に頼んでくるな。

まぁ良いけど、なんでそんなに?


「まぁ良いが、何故そんなに?」


「よ、用事がある!頼む!会わせてくれ!」


「分かった。待ってろ」


俺は念話でシリウスを呼んだ。


(シリウス、今何処に居る)


(はい、疾風から深淵狂気の森の偵察をしております)


(今からオーバーローズフロア五十二に来て欲しい。大丈夫か?)


(はい、問題ありません)


そして、シリウスがフロア五十二、つまり病室関係の部屋が色々ある所、その中で俺達が居るところに来た。


「主様、何か御用ですか?」


「この男がお前にようがあるみたいだ」


「あ、貴方が白竜様ですか?」


「えぇ、如何にも」


「ね、願いがあるんです!頼みます…どうか…」


「………?」


シリウスは少し首を傾げる。


「私の愛人をこの世に蘇らせてください……!」


男は土下座をしながら言う。


「……無理ね」


「………!?」


男は顔を勢いよく上げた。


「私にそんな力は無いわ。それに、深淵狂気の森で私の怒りを買うなんて嘘、更には『白竜私の血を使って人を蘇らせる事ができる』なんてものもね」


「………………」


男はシリウスの方をずっと見たまま放心状態だった。


「そんなの、ただのお伽話に過ぎない。深淵狂気の森は土地が広く、木々が茂っていて昼なのに夜のような暗さ。その上磁場も狂って、地下には硬魔石こうませきがいくつもあり、魔力の痕跡を追うことも出来ない。毒植物もあって、一度足を踏み入れると戻れなくなるってのは、方向感覚が狂って、出口の方向へ進んでいる筈なのに奥へ奥へ進んでいってしまう。その逸話から、私の血を使うと人を蘇えらせれると言うのも、一種の幻覚性の毒を持つ植物のせいで、私の幻覚と私の血の幻覚をみて、そのまま友人や恋人が蘇がえった幻覚も見たのでしょう」


「あ…あ、アアアアアアァァァァアア!!!」


男は頭を抱えながら発狂した。


「お、おぉ俺は、何のために…あんな思いをしたんだ…!」


男は、泣き出した。悲しみも、怒りも、全てを涙に込めて。


「フェリア……フェリア…もう一度、君に……!」


「「「……………」」」


シリウスと俺とベガは、黙ってその男を見守った。

そして、数十分後のことである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「……もう大丈夫ですか?」


「あぁ、すまない」


ベガは男に夜食を渡す。

食器にはパン、ミルク、ステーキ、野菜がバランスよく置かれていた。


「……すまない、シリウスは本当に力が無いんだ。まぁ、そりゃそうだと思う。人を蘇らせるなんて、そう簡単にできる物でも無い」


俺は扉を開け、男に向かい言葉を放つ。


「良いです。俺もあのような迷信を信じた事が間違いでしたから」


男は、少しうつむいて、考えた後、言葉を放つ。


「助けて下さり有難う御座いました。俺はこの後森を抜けて、町へ帰ります」


「そうしたいなら好きにすれば良い。が、その前に、君の過去に付いて少し聞きたい。良いか?」


俺は目を細めた。

男は一瞬ハッとすると…。


「分かりました」


すると男は話し出した。

辛い辛いなその過去を。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


男は、一人の女性に好意を抱いていた。

それは、フェリアと言う村長の娘。


男は村長とは仲が良く、娘をくれてやる等と言っていた。


「いやぁ~、フェラン君とフェリアが結ばれる事を願っているよ」


「村長さん、冗談はよしてくださいよ、はは」


最初の入国者の男、フェラン・スティーンは冗談と言いながらも、それを本気にしていた。


「もう、お父様やめてくださいよ!フェランさん困ってるじゃないですか」


声のする方には、金色の髪色をした美しい女性がいた。


「ハッハッハッ。フェリアもフェラン君の事が好きなんだろう?お父様は知っているんだぞ~?」


「…え?」


「ちょ、な、何を言い出すんですか!?」


フェリアは頬を少し赤くしながら言う中、フェランは驚いていた。


そして、勇気を振り絞り一つの誘いをした。


「フェリアさん!」


「フェランさん、どうしたんですか?」


「あ、あの…今夜近くの隣国に行って、一緒に食事…なんてどうですか…?」


「……………」


フェリアは、無言のままフェランを下から覗いていた。

少し気まずい空気になっている事に気づいたフェランは、慌てて空気を正そうとする。


「あ、い、嫌なら別に良いんですが…」


「いいですよ」


フェリアがフェランの言葉を遮って言葉を放った。


「…え?」


フェランは、驚いた。

あの空気から絶対無いと思った言葉がフェリアの口から出たのだ。


「それじゃあ今夜、うちの馬車で行きましょうか」


フェランが視線を向けた方には、可愛らしい笑顔のフェリアが居た。


そして……。


◆◇◆◇◆夜◇◆◇◆◇


「「……あ」」


二人は、下を向いたまま歩いている途中、集合場所に付いてしまった。


フェリアには、ビシッとした格好いい服を着たフェランが目に映り、フェランには、ドレスのようなヒラヒラとした可愛らしい服を着たフェリアが目に映る。


「そ、それじゃあ行きますか…」


最初に話し始めたのはフェリアだった。


「あ…うん…」


そして、二番に話すフェラン。


(俺!しっかりしろ俺!)


心の中で頬を両手で叩く。


そして馬車での移動中。


「……あ!」


フェリアは空を見て何かに気づく。

フェランは続いて空を見上げると、そこには、言葉では表せないような美しい夜空が広がっていた。


「わぁ……凄いね」


フェランはフェリアに向けて言う。


「私、この世界が好きなんです」


フェランは、イマイチその言葉が分からなかった。


「だって、こんな綺麗な空があるんですから、それに…」


フェリアは、フェランの方に向く。


「フェランさんも居ますし」


「………!?」


フェランは、一瞬フリーズしたが、すぐに立て直した。


そして、二人は微笑み合った。




その時だった。


馬が悲鳴を上げたのだ。

その後すぐに悪夢は始まった。


悪魔の生き骨デッドスケルトン、ただの生き骨スケルトンとは、違い、驚異的な知能、力を持つ魔物。


そのデッドスケルトンが、二匹の馬を切り刻む。


デッドスケルトンは、四体ほどの小隊で襲撃して来た。


「キャァァー!!」


「フェリアさん、下がって」


フェランは護身用のナイフを取り出し、構える。


そして、デッドスケルトンが真っ直ぐ剣を構え、勢いよく下ろす。


その途中、フェランはデッドスケルトンの胸辺りにある赤いコアをナイフで貫く。


デッドスケルトンの動きが止まり、ホッとした後、すぐに二体目が襲ってくる。


「フェリアさん!逃げて!」


「で、でも…!」


「良いから早く!」


「っ……!……ごめんなさい…」


フェリアは隠れていた馬車から出て、村の方へ走る。


そして、三体目、四体目が連携攻撃をしてくる。


間一髪避けたのもつかの間、二体目が後から右腕を剣で刺す。


「…グア……」


フェランはナイフを手放し、ヨロヨロと後に下がる。

そして、二体目が一体目と同じ構えをしたとき。


「誰が一本しか持ってないって言ったよ…!」


フェランは左腕に持ったナイフでコアを貫く。


「はぁ…はぁ…」


二体目を倒したとしても、残り二体。

フェランは諦めていた。


だが、悪足掻きのつもりで後に下がる。


ノロノロと下がるフェランとは裏腹に、デッドスケルトンはスタスタと向かってくる。


三体目と四体目、二体のデッドスケルトンが剣を構え、下ろしたその時だった。


「………え?」


フェランは目を開けると、驚きの光景が広がっていた。


フェリアだった。


剣はフェリアの左胸、右の横腹に刺さっている。


「……え?フェリア……さん?」


「……ヴぅ………フェランさん…私、フェランさんが…居ない世界で…………生きたいとは…思い、ません」


「…………」


フェランは目を大きく開いたまま、目の前の光景に呆然とする。


「………フェランさん……私……お食事に、誘ってく…れた事…、とっても嬉し…かったです」


「お、俺も、フェリアさんが居ない世界で生きたいとは思わないですよ!」


「……フェランさん…」


フェリアは今にも死にそうな目でフェランを見る。


「……フェランさん…早く……逃げて、下さい…」


「嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!君を置いて逃げたりなんかしない!」


「……お願いします!……ゲホッ……私の…一生の、お願い…です」


フェリアは力を振り絞り、大声を放った。


デッドスケルトンは、剣を抜こうとするも、フェリアが掴む。

フェリアの手のひらから赤い血が流れる。


「フェランさん……大好きですよ・・・・・・………」


フェリアは最後の力を振り絞り、最後の言葉を言う。


「っ……!?………」


フェランは走り出した。

左手を押さえ、絶対に


「ん…あ…?……ここは……」


男は、目を覚ました。

そして、目の前に広がる光景は、見たこともない病室。

そして、横には美人な獣人の女の人だった。


「あ、起きた。今主人様に伝えます」


「あ、えっと。は、はい?」


なにも分からずに返事をしてしまった男はボーッとする。

すると…。


「おい!起きたって本当か!?」


黒い服を着た男がやってきた。

その黒ずくめの男は、ズタズタとこっちへ近づいてき、片手を差し出してきた。


「やぁやぁ。私はこの国、オーバーローズの支配者ガヴァ・ノートだ。おめでとう!君が初の入国者だ」


「あ、有難う御座います…?」

二度目もなにも分からずに返事をする。

そして、手を取り握手を交わす。


「さてと、君は何で深淵の森に足を踏み入れた?死にたかったのか?」


その時、男の頭の中で何かが覚醒した。


「そ、そうだ!……!?ここは、ここは何処だ!?オーバーローズ?そんな国聞いたことないぞ!」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


お?どうやら正気に戻ったようだ。


まぁ、驚くのも無理はない。


「無理もないよ、だって、公式に国を設立はしていないからね」


「お、お前は誰だ?」


「さっきも言っただろう?この国の支配者ガヴァ・ノートだ」


すると、隣から殺気のような、重い圧を感じた。


「貴様を救ってくださった御方に何という態度……」


「ひぃ……!」


男は、ベッドの布団を握りしめ少し後ずさる。


「ま、まぁまぁベガ、それくらいにしておけ。せっかくの入国者だ。手荒な真似をしたら許さぬ」


「……はい。分かりました」


すると、ベガは一歩後に下がる。

そして俺は一つ質問をする。


「君、白竜が…とかなんとか言ってたが、シリウスに何か要か?」


「は、白竜様が居るのか?!」


「あぁ」


「……!?あ、会わせてくれ!頼む!」


焼けに熱心に頼んでくるな。

まぁ良いけど、なんでそんなに?


「まぁ良いが、何故そんなに?」


「よ、用事がある!頼む!会わせてくれ!」


「分かった。待ってろ」


俺は念話でシリウスを呼んだ。


(シリウス、今何処に居る)


(はい、疾風から深淵狂気の森の偵察をしております)


(今からオーバーローズフロア52に来て欲しい。大丈夫か?)


(はい、問題ありません)


そして、シリウスがフロア52、つまり病室関係の部屋が色々ある所、その中で俺達が居るところに来た。


「主様、何か御用ですか?」


「この男がお前にようがあるみたいだ」


「あ、貴方が白竜様ですか?」


「えぇ、如何にも」


「ね、願いがあるんです!頼みます…どうか…」


「………?」


シリウスは少し首を傾げる。


「私の愛人をこの世に蘇らせてください……!」


男は土下座をしながら言う。


「……無理ね」


「………!?」


男は顔を勢いよく上げた。


「私にそんな力は無いわ。それに、深淵狂気の森で私の怒りを買うなんて嘘、更には『白竜私の血を使って人を蘇らせる事ができる』なんてものもね」


「………………」


男はシリウスの方をずっと見たまま放心状態だった。


「そんなの、ただのお伽話に過ぎない。深淵狂気の森は土地が広く、木々が茂っていて昼なのに夜のような暗さ。その上磁場も狂って、地下には硬魔石こうませきがいくつもあり、魔力の痕跡を追うことも出来ない。毒植物もあって、一度足を踏み入れると戻れなくなるってのは、方向感覚が狂って、出口の方向へ進んでいる筈なのに奥へ奥へ進んでいってしまう。その逸話から、私の血を使うと人を蘇えらせれると言うのも、一種の幻覚性の毒を持つ植物のせいで、私の幻覚と私の血の幻覚をみて、そのまま友人や恋人が蘇がえった幻覚も見たのでしょう」


「あ…あ、アアアアアアァァァァアア!!!」


男は頭を抱えながら発狂した。


「お、おぉ俺は、何のために…あんな思いをしたんだ…!」


男は、泣き出した。悲しみも、怒りも、全てを涙に込めて。


「フェリア……フェリア…もう一度、君に……!」


ベッドの布団をつかみ号泣する男をみて、俺たちは邪魔はしなかった。


「「「……………」」」


そして、シリウスと俺とベガは、黙ってその男を見守った。

そして、数十分後のことである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「……もう大丈夫ですか?」


「あぁ、すまない」


ベガは男に夜食を渡す。

食器にはパン、ミルク、ステーキ、野菜がバランスよく置かれていた。


「……すまない、シリウスは本当に力が無いんだ。まぁ、そりゃそうだと思う。人を蘇らせるなんて、そう簡単にできる物でも無い」


俺は扉を開け、男に向かい言葉を放つ。


「良いです。俺もあのような迷信を信じた事が間違いでしたから」


男は、少しうつむいて、考えた後、言葉を放つ。


「助けて下さり有難う御座いました。俺はこの後森を抜けて、町へ帰ります」


「そうしたいなら好きにすれば良い。が、その前に、君の過去に付いて少し聞きたい。良いか?」


俺は目を細めた。

男は一瞬ハッとすると…。


「分かりました」


すると男は話し出した。

辛い辛いなその過去を。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


男は、一人の女性に好意を抱いていた。

それは、フェリアと言う村長の娘。


男は村長とは仲が良く、娘をくれてやる等と言っていた。


「いやぁ~、フェラン君とフェリアが結ばれる事を願っているよ」


「村長さん、冗談はよしてくださいよ、はは」


最初の入国者の男、フェラン・スティーンは冗談と言いながらも、それを本気にしていた。


「もう、お父様やめてくださいよ!フェランさん困ってるじゃないですか」


声のする方には、金色の髪色をした美しい女性がいた。


「ハッハッハッ。フェリアもフェラン君の事が好きなんだろう?お父様は知っているんだぞ~?」


「…え?」


「ちょ、な、何を言い出すんですか!?」


フェリアは頬を少し赤くしながら言う中、フェランは驚いていた。


そして、勇気を振り絞り一つの誘いをした。


「フェリアさん!」


「フェランさん、どうしたんですか?」


「あ、あの…今夜近くの隣国に行って、一緒に食事…なんてどうですか…?」


「……………」


フェリアは、無言のままフェランを下から覗いていた。

少し気まずい空気になっている事に気づいたフェランは、慌てて空気を正そうとする。


「あ、い、嫌なら別に良いんですが…」


「いいですよ」


フェリアがフェランの言葉を遮って言葉を放った。


「…え?」


フェランは、驚いた。

あの空気から絶対無いと思った言葉がフェリアの口から出たのだ。


「それじゃあ今夜、うちの馬車で行きましょうか」


フェランが視線を向けた方には、可愛らしい笑顔のフェリアが居た。


そして……。


◆◇◆◇◆夜◇◆◇◆◇


「「……あ」」


二人は、下を向いたまま歩いている途中、集合場所に付いてしまった。


フェリアには、ビシッとした格好いい服を着たフェランが目に映り、フェランには、ドレスのようなヒラヒラとした可愛らしい服を着たフェリアが目に映る。


「そ、それじゃあ行きますか…」


最初に話し始めたのはフェリアだった。


「あ…うん…」


そして、二番に話すフェラン。


(俺!しっかりしろ俺!)


心の中で頬を両手で叩く。


そして馬車での移動中。


「あの……」


フェランは少し気まずい空気を直すため、話をかける。


「はい?」


「そ、村長が言ってたあの事、本当ですか?」


フェリアは驚く。だが、何も言わない。

フェランはフェリアの顔を見ることも出来ないほどの気まずい空気に心の底から後悔していた。


その時だった。


「……あ!」


フェリアは空を見て何かに気づく。

フェランは続いて空を見上げると、そこには、言葉では表せないような美しい夜空が広がっていた。


「わぁ……凄いね」


フェランはフェリアに向けて言う。


「私、この世界が好きなんです」


フェランは、イマイチその言葉が分からなかった。


「だって、こんな綺麗な空があるんですから、それに…」


フェリアは、フェランの方に向く。


「フェランさんも居ますし」


「………!?」


フェランは、一瞬フリーズしたが、すぐに立て直した。


そして、二人は微笑み合った。




その時だった。


馬が悲鳴を上げたのだ。

その後すぐに悪夢は始まった。


悪魔の生き骨デッドスケルトン、ただの生き骨スケルトンとは、違い、驚異的な知能、力を持つ魔物。


そのデッドスケルトンが、二匹の馬を切り刻む。


デッドスケルトンは、四体ほどの小隊で襲撃して来た。


「キャァァー!!」


「フェリアさん、下がって」


フェランは護身用のナイフを取り出し、構える。


そして、デッドスケルトンが真っ直ぐ剣を構え、勢いよく下ろす。


その途中、フェランはデッドスケルトンの胸辺りにある赤いコアをナイフで貫く。


デッドスケルトンの動きが止まり、ホッとした後、すぐに二体目が襲ってくる。


「フェリアさん!逃げて!」


「で、でも…!」


「良いから早く!」


「っ……!……ごめんなさい…」


フェリアは隠れていた馬車から出て、村の方へ走る。


そして、三体目、四体目が連携攻撃をしてくる。


間一髪避けたのもつかの間、二体目が後から右腕を剣で刺す。


「…グア……」


フェランはナイフを手放し、ヨロヨロと後に下がる。

そして、二体目が一体目と同じ構えをしたとき。


「誰が一本しか持ってないって言ったよ…!」


フェランは左腕に持ったナイフでコアを貫く。 

 

そして、腕を、頭を、足を切り刻む。

だが、コロコロと音を立てながらコアへ集まり、形を取り戻すデッドスケルトンに対し、確実な死を覚悟し、絶望しきっていた。


「はぁ…はぁ…」


二体目を倒したとしても、残り二体。

フェランは諦めていた。


だが、悪足掻きのつもりで後に下がる。


ノロノロと下がるフェランとは裏腹に、デッドスケルトンはスタスタと向かってくる。


三体目と四体目、二体のデッドスケルトンが剣を構え、下ろしたその時だった。


「………え?」


フェランは目を開けると、驚きの光景が広がっていた。


フェリアだった。


剣はフェリアの左胸、右の横腹に刺さっている。


「……え?フェリア……さん?」


「……ヴぅ………フェランさん…私、フェランさんが…居ない世界で…………生きたいとは…思い、ません」


「…………」


フェランは目を大きく開いたまま、目の前の光景に呆然とする。


「………フェランさん……私……お食事に、誘ってく…れた事…、とっても嬉し…かったです」


「お、俺も、フェリアさんが居ない世界で生きたいとは思わないですよ!」


「……フェランさん…」


フェリアは今にも死にそうな目でフェランを見る。


「……フェランさん…早く……逃げて、下さい…」


「嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!君を置いて逃げたりなんかしない!」


「……お願いします!……ゲホッ……私の…一生の、お願い…です」


フェリアは力を振り絞り、大声を放った。


デッドスケルトンは、剣を抜こうとするも、フェリアが掴む。

フェリアの手のひらから赤い血が流れる。


「フェランさん……大好きですよ・・・・・・………」


フェリアは最後の力を振り絞り、最後の言葉を言う。


「っ……!?………」


フェランは走り出した。

左手を押さえ、絶対に後を向かず、ただただ村へ向かい。


村へ付いたフェランは、かつて聞いたことのある、白竜伝説の第4章『蘇生の儀』をするため、荷物をまとめ、深淵狂気の森へと向かった。

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