支配者に仕える者

~異世界、ガヴァ十六歳~


そんなことを思い出していると、目的地に着いた。


俺は、紫色の魔力で出来たファスナーを磁石のようにひっつけ、コートを被る。前を閉じても、ロングパーカーなので、ヒラヒラとマントのように揺れている。


そこには何と、白竜が倒れ込んでいたのだ。


は、白竜!?


ヤバイ、白竜を慕えている白竜騎士団に見つかると面倒なことに…、取りあえず調べてみるか。


俺は白竜を調べる。


《種族白竜の心臓、脳は生きていますが、重傷の怪我により、一時事的に停止しています。》


それじゃあ回復魔法をかければ治る?


《はい》 


よし、それでは…。


「回復魔法発動、対象は白竜だ」


すると、白竜の体が緑色に光り出し、みるみる回復していく。


そうすると、目を覚ました。


「あ、貴方は…」


え?竜が喋った。


《私、シルフィードによる言語解読です。》


ドラゴンとかも出来るんだ。便利すぎるな、精霊の補助スタッフスピリット


っと、白竜の前でも設定のままにしておこう。


「おれ…私は、縛られし世界を解放する者…ガヴァ・ノートである」


「貴方が私を助けてくれたのですか?」


「あぁ、おれ…いや、私がお前を救ってやったのだ。所で、白竜が何故あそこまでの負傷を?」


「……貴方になら教えましょう、私は、魔王に捨てられたのです」


魔王に捨てられた?この世界の魔王は結構部下を乱暴に扱うんだな。


「魔王に捨てられる事になって、私は抵抗しました。ですが、魔王の幹部との戦闘で敗れ、回復呪文もかけて貰えず追放されました」


おぉ、結構闇が深い…。


「なるほど、これからはどうするのだ?同種族の場所へ戻らないのか?」


「私は、同族からも裏切られました。今まで育てくれていた母は、自分が魔王の下から離れるために私を利用したのです。もう、帰る場所なんて……何が、何が「魔物のルール」だ!信じていたのに、お母様だけだったのに…そんな、「魔物のルール」なんかあるのでしたら、私はその「ルール」から縛られない生き方をしたかったです!」


っ……!。


そうか…こいつも…。


「…お前、私と一緒に来るか?」


「…え?」


「私の目的は、この世界の支配統一だ。その理由は、我が望みの為…。人手が足りないのだ。帰る場所がないなら、私と、この世界を支配し、我々の世界を共に見ようではないか?」


白竜は、沈黙の中考える。

そして、心の中でこう呟く。


(本当に良いのだろうか…死ぬ直前だった私を救ってくれただけでなく、居場所まで与えて下さるなんて…)


人手が足りないと言う理由でも、白竜は嬉しかった。自分を求められた事に。


「……良いのですか?瀕死の私を助けて下さっただけでなく、居場所まで…」


「…あぁ」


俺は、初めてだった。


ルールなんか無くなれば、ルールなんか守らなく生きていきたいという同じ考えの人に会うのは。


まぁ、人っていうのか分からないが…。


そして、いずれか使うって思ってこっちに来てから考えていた組織、団体名、その名は…。


「私達が創設者だ、その団体は…組織支配者システムローズ!」


組織って書いてシステムである。結構これでも考えたんだぜ?気に入ってくれなきゃ泣く。


「システム…ローズ…」


白竜は、その名前、そして、新たなる自分の主人、ガヴァ・ノートに見とれていた。


「そして白竜、お前の名はなんだ?」


「わ、私に名前など…」


「そうか…それでは、お前は今日から「シリウス」だ」


船員、組織を大きくするためにはもっと人が必要、星の光の強い順の名前をつけることにした。


まぁ、名前が長すぎたりしている物は省略して、これからもしも増えるのなら、名付けをするだろう。


「シリウス…いい響き…」


白竜シリウスは、俺の方に頭を下げた。


「私、シリウスは、貴方を新たなる主と認めます」


その時、シリウスが人の姿になっていった。


「主様は、こっちの方が話しやすいでしょ?」


白髪で、緑色の美しい瞳、まさに白竜だ。ちなみに髪型はロングヘアである。


「あぁ、そうだな」


俺は、シリウスに、魔力水で水色のロングパーカーに、水色のズボン、ブーツ、手袋、俺と同じシャツを用意し着せた。


「これは…」


「戦闘服だ。服は着ておく物だ、防御力が上がる。そして、白竜ならば流水操作位は持っているだろう?」


「はい、持ってます。けれど、それでどうやって?」


「これは魔力水だ。流水操作での操作ができる。もし攻撃されても再生が可能だ。使いこなせて見せよ」


白竜はここまで優しくしてくれた事はなかった。


少し涙がこぼれたが、主に見せぬように手で拭いた。


「あ、ありがとう御座います!」


俺は少し歩いた。

そして止まり、シリウスへ言葉を放った。


「案内しよう、我がアジトへ」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


俺達は森を抜け、飛行艇の下に行った。


「ここは、何もないけど…」


俺は風操作で体を浮かせる。


シリウスは少し動揺気味だ。


そうして、飛行艇の前まで来た。


「何をしているの?何もないけれど…」


俺は結界魔法を解く。


シリウスは感動した。


改めて、主の偉大さ、強さ、格好良さ、全てに。


「これが…」


「この船は「疾風」、我々の隠れ家だ」


《飛行艇の命名、名を「疾風」、登録します。》


よし、これからは仲間を増やしていきたい、せめてシリウスを入れて五人だ。


まぁ、いずれは手に入れる国々には使える者も居るだろう。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


~ある狐の見た景色~


「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ」


人化している狐が雪道をかける。


彼女は何を見たのか、何をしたのか、誰も知らない。


彼女の見た目を見ると、裸足で雪道を走っている。


赤く染まり、傷が付いている。


髪型はロングヘア、巫女の服装をしていて、薄い黄色の髪に同じく一つの尻尾も同じ色である。


「居たぞー!!」


「っ……!?」


狐は驚き、更に駆けてゆく。


その瞬間。


「うわぁ!」


雪が崩れ落ち、彼女も落ちる。


それに兵隊は下を覗く。


「あれはもう無理だ。諦めよう」


「そうだな」


兵隊達は雪山を下りてゆく。


その時。


「……あ?う、うわぁぁぁあ!!!」


雪崩が起き、兵隊達は悲鳴を上げながら雪の重さを感じながらこの世を去ってゆく。


狐は、雪がクッションになり、大事には至らなかった。

しかし、魔力が一定の量無くなったのか、元の薄い黄色の狐の姿になった。


そして、狐は眠ったのである。

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