ファートルド事変:3 失われし深淵の色
リアナは目を覚ます。
いつの間にか、リアナは倒れていた。
倒れる前の記憶は曖昧だ。
そのせいで、上手く頭が回らない。
でも、確認できるのは、ぼやけた光、天井だった。
(ん…?天井?)
その時、リアナは勢いよく体を起こす。
「おや。お目覚めですかな」
そこには、少し老けたお婆さんと子供が居た。
それを追うかのように、一人の、少し老けた筋骨隆々のお爺さんが出てきた。
「ん?おぉ!起きたか!」
「わぁあ!ビックリした!」
リアナは思わず声を上げた。
なんせ、老いている割に筋肉が凄いのだから。
「いやはや、白竜騎士団団長様が深淵狂気の森前に倒れていたとは…何かありましたか?」
男は、話ながら座る。
「え、あぁ。それが……」
リアナは、一部始終を話した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「な、なんと!そんなことが…」
「はい、それで…此れからどうしようかと…」
「でしたら、我々ハルカラ村が騎士団長様を手助けしましょうぞ!」
「本当ですか!?って、…ハルカラ村って…」
「ああ、すいません。申し遅れました。私は、この村の村長、ベルドです。このハルカラ村は、ナスカラディアの近辺にある小さな村で御座います」
「あ!思い出した。確か、デッドスケルトンの……」
言葉を口にした瞬間、ベルドは暗い表情を見せる。
「…………娘と、一人の青年が、デッドスケルトンに殺されました……」
「あ、すいません。つい……」
「良いんです。過ぎたことはもう戻りませんので…」
ベルドは涙を流す。
「あなた…」
「お父さん…」
奥さんらしき老けた女性がベルドの背中をさする。
「とにかく、ナスカラディアがそんな状態であれば、我々も動かなければ、此方にも危害を加えてくるかも知れない」
ベルドは立ち上がる。
「是非とも、協力しましょうぞ!」
「そうしてくださると、とても有難いです!」
リアナは立ち上がり、ベルドと手を取り合う。
そして、本格的なハルカラ村騎士団作戦が決行されることとなった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
目の前には、真っ暗闇。
そこで、俺は目が覚める。
だが…。
俺は…何をしていたんだ?
目の前には、不思議な城が見えてくる。
ここは…何処だ?
俺は…ガヴ…何だっけ?
俺は、何だ?
俺は………………
「おい!ゴミ!」
ご…ゴミ?
ブラックは俺の頭を蹴る。
「早く働きやがれ!クソ野郎」
ゴミ…それが、名前?
「ゴミ…それが、俺の名前……?」
「あぁ…?」
ブラックは、首を傾げる。
すると、ブラックは俺をあざ笑う。
「あぁそうさ!ゴミ!お前はゴミだよ!ハッハッハッ!」
なるほど、俺は、「ゴミ」と言う名前なのだな?
「そうなんですか、それでは、俺は何をすればいいのですか?」
「あー?見りゃわかんだろ。働くんだよ。ゴミ、早く行け!」
働く…あぁ、なるほど。
「建物を建てれば良いのですね?」
「あたりめぇだろバカが」
「バカ…それも俺の名前?」
すると、ブラックは俺のことを睨む。
「…お前頭おかしいんじゃねぇか?オラ!早く行けや!」
俺は、背中を蹴られる。
何だろう。
この心苦しさは……。
こんな、こんな生活は、当たり前の筈なのに。
何故か、もの凄く嫌だ。
そして、何か大切なものを失っているような…。
………でも、今の俺は、この仕事をやらなければ。
俺は鉄柱を持って、城の中へ運ぶ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
システムローズは、混乱に陥っていた。
ナスカラディアが、一夜にして壊滅したのだ。
そして、こんな緊急時に長が居ない。
余りにも急すぎる緊急事態に、シリウスは五芒星を集める。
四人、シリウス、アルファード、アーク、ベガが揃っているところに、カノープスがドアを壊すような勢いでノートの部屋のドアを開ける。
「ねぇ!主君様がナスカラディアにまだ居るって本当なの!?」
すると、ドアがバタン!っと取れる。
それに連れてカノープスは「あ…」っという言葉をこぼす。
「はぁ…全く。なんで貴方はそこまで乱暴なのよクソビッチ」
「は、はぁ!?ビッチじゃないわよ失礼ね!」
二人のやり取りに他三人は苦笑いをする。
「で、皆を集めた理由なのだけど…」
すると、シリウスはもう一つの扉の方を向く。
その時、一人の女性がドアを開ける。
シルフィードだ。
「誰…?」
アルファードが呟く。
「五芒星の皆様、初めまして。私は、マスター。ガヴァ・ノート様に宿りし精霊で御座います」
シルフィードは、青と白透明のスカートを両手で少し持ち上げ、お辞儀する。
「主殿の…精霊」
「ともかく、そう言うこと。それで、シルフィードから聞いた話によると、ブラック、バードルと名乗る者達にナスカラディアは支配されている。それで、主様は現在……現在………」
シリウスは不味そうな顔をしながら下を向く。
「彼奴らの…配下になってるわ」
「「「「っ……………!?!?」」」」
「な、なんで!?」
ベガが一歩前に出る。
「それが…私にも分からない。影から出てきてみれば、ゴミだの何だの言われ放題で、命令に従ってマスターは動いてた」
シルフィードが俯き呟く。
「………ともかく、私達の目的は、システムローズ全勢力を持ってしても、主様を奪還すること」
「……でも、なんで?主君様にすればあんな奴等…」
「なにか、策略…みたいな物なのでしょうか。アークちゃんはどう思う?」
アークは手を組む。
「…それか、なにか弱味を握られてるのかも」
「「「「「っ……!」」」」」
「だとしたら、主君様は…もう、戻ってこないって事…?」
「とにかく!とにかくよ!まずは主様に一度話をしましょう。それで、ベガ」
シリウスはベガの方向を向く。
「は、はい!」
「主様に、現在の状況を話してきて。それで、主様自身の身になにが起きているかを聞いてきてちょうだい」
「は、はい!分かりました!」
そして、ベガは廊下へ出て、走り出す。
「……主人様、無事でいて」
ベガはそう小さく呟いた。
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