第3話 クエスト内容


3人で近くの森までやってきた。


「クエスト内容はなんなんだ?」

「森でキノコを取ってきて欲しいってさ」

「報酬は?」

「3000イェン」

「小遣い程度だな」


まぁ、これでもキノコ取りにしては奮発してくれてるけど。


森の中に入った。


中は木々がうっそうと茂っており中々薄暗い。


ふと誘拐事件の話を思い出していた。


「ふたりとも、俺から離れるなよ。誘拐事件があったらしいからな。怖〜いお兄ちゃんが狙うなら絶好のシチュエーションだな」


目をぱちぱちさせてたグルー。


「俺もう18だけど」


「じゃあお前はいいやグルー、自分の身くらい自分で守れるよな。でもスイレンは離れるなよ?」


「は、はい!」


こっちは素直だった。


かわいいもんだ。


ということで今回の依頼は3人1組でひとつずつキノコを回収していくことになった。


「つーか、酒くせぇんだけどユースケ」


「そんなにニオウ?」


鼻つまみながらグルーは縦に首を振っていた。


その後も俺たちはキノコを取っていった。


「よし、こんなものか」


頼まれていた量のキノコの回収を終えた。


あとは帰るだけだ。

その時になってスイレンが不安そうな顔をしていた。


「ユースケさん、なんか、見られてる気がするんですけど、気のせいですかね?」


「見られてるね、具体的に言うと君の右にある茂み45度くらいのところから」


「そんなに正確にわかるんですか?」


驚いているようだが、なんでそんなに驚いてるんだろ。


(それより、こっち見てる奴はなんなんだろ。手を出してこないなら、こっちも手は出さないけど)


見られてるだけで敵認定からの即断罪、というのは中々過激派だと俺は思う。


ギュッ。


スイレンが俺に抱きついてきた。


「怖いですぅユースケさん」

「ちゃちゃっと帰ろっか、面倒事に巻き込まれないウチにね」


歩き出す。


そのとき……。


ガサァッ!


茂みから人が出てきた。

全身真っ黒の人間だった。


「死ねやぁぁあぁぁぁぁ!!!!」


手にはナイフ。


俺は素早く近付くとそのまま、相手の顎に向けて掌での打撃を行った。


「ぐごっ……」


顎の骨が割れる音と共に感触も伝わってきた。


今の相手の突進速度、それから俺の掌の攻撃の速度と威力を考えれば割れたのは確実だろう。


そういうふうに……





「ひっ!」

「うわっ!なんだなんだ!」


その時になってやっとスイレンたちが反応を示した。


「今更になってビビったの?もう終わってるけど」


「「へっ?」」


2人は倒れている男を見た。


「な、なんだよこいつ。今の俺の動きに合わせるなんて。見た目冴えないおっさんなのに」


男は顎を抑えながら俺の方を見ていた。


男はギリッと歯を食いしばって魔法を放ってきた。


「くそ、魔弾!」


いや、魔法を使おうとしたという方が正しいか。


「魔弾、魔弾、魔弾!あれ、なんで出ねぇんだ?」


俺が顎を掌で殴ったのには理由がある。


魔法を使うには脳が正常に働いている必要がある。


逆に言えば、脳が正常に働いていなければ魔法は発動しない。


「頭ん中シェイクされてる感じだろう?」


こいつの体には今軽い脳しんとうが起きている。


そんな状態で魔法なんて満足に使えるわけがない。


「俺に手を出そうとしたんだ。全部吐いてもらおうかな?」


「くっそ……」


男はその場で気絶した。


脳しんとうによるダメージが今になって重くなってきたんだろう。


「グルー、そこの葉っぱを適当な量拾って、それからそのひも状の長い雑草抜いてくれ」


「こいつらのことか?」


グルーはすぐに支持したものを集めて持ってきた。


長い方は【ロープ草】と呼ばれるものである。


ロープのように使い勝手のいい雑草。


男の手足を縛り付けてから、雑草の方はボールみたいに丸めて口の中に詰めた。


「なんの意味があるんだ?」


「魔法を使うのには言葉を吐く必要がある」


魔法対策は顎の破壊で十分ではあるのだが、念には念を入れる。


「すげぇ、歴戦の冒険者みたいだ」


目を輝かせているグルー。

やはり俺がかつて勇者だったことは信じていないらしい。



村の広場の真ん中にあるデカい木に男を巻き付けた。


これで村の全員で監視ができる。


怪しい動きも出来ない。


バケツに入った水を頭からかけてやった。


閉じていた男の目が開いた。


「おはよう。悪いがおねんねの時間は終わりだ」


「っ!!」


拘束されているのに気付いた男は暴れ始めた。


「無駄だ。絶対解けないよ」


俺はその場に用意していた拷問道具を見せた。


本当は拷問なんてしたくないのだが、見せることに意味がある。

見せれば相手はビビるからだ。


「さて、キミは爪何枚で吐いてくれるかな」


「やめてくれ!何が聞きたい?!なんでも話す!」


話が早いやつで助かった。


「なぜ俺たちを狙った?」

「狙ったのは女の子だ」


スイレンのことか。


「奴隷にしようと思ったんだ。誘拐すれば元手0で売れるからな」


「もちろん一人での犯行じゃないよな?どこの組織だ?」


そのときだった。


ヴァイスの声が聞こえた。


「犯罪組織【ユカイン】」


俺の横に来た。


「王都でも随分と好き勝手やってくれたようだな。貴様らのことは調べがついている。案内してくれ」


ヴァイスに目をやった。


ヴァイスも俺を見ていた。


「それにしてもなかなかやるじゃないかおっさん。メンバーを生きたまま連れてきてくれるなんて」


スっ。


資料を渡してきた。

口元だけ歪めてる。


「あんたも一応大人なら分かるだろ?今は俺たちで争ってる場合じゃないって」


頷いた。


資料を受け取って目を通した。


そこには【ユカイン】の概要があった。


まぁ、よくあるような犯罪組織の概要である。深く語る必要は無いだろう。


(リーダーは元Sランク冒険者崩れのアロンゾっていう、人間か。これは少し厄介だが、警戒すべき点はこれくらいか)


そのときだった。


男が笑った。


「はははっ。それにしてもかわいそうだな。あんたら。アロンゾさんに喧嘩売るなんて」


ブルっと震えていた。


「あの人は恐ろしいぜ?手を引くなら今のうちかもな」


ヴァイスはゲシッと蹴りを入れていた。


「御託はいい。早く案内しろ」


俺は内心では無駄なんだろうなと思いながらもヴァイスに聞いてみた。


「自分、帰っていいですか?」


「だめだ。この男を連れてきた実力は認める。金を払うからついてこい」


(知ってた)


と、諦めた瞬間だった。


「面接の件も今なら考え直してやらないでもない」


お?

これは、ひょっとして期待していいやつかな?


「でも、年齢制限の話はどうなるんです?」

「話くらいは通してやろう。今からおっさんは俺の出世の役に経つんだしな」


ニンマリ笑っていた。

どうやら機嫌がいいらしい。


仕方ない。

雲の糸だと思うことにしよう。

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