第4話 犯罪組織
『アロンゾ様は今なら森の奥の廃墟におられる』
という情報を俺たちは男から聞き出した。
俺たちは早速森に向かうことにした。
「名乗り遅れていたな。俺の名前はヴァイス。王都騎士団の副団長だ」
「団長じゃなかったのね」
こんなに偉そうにしているから最低限団長だと思っていたのだが、どうやら見込み違いだったようである。
「ユカインを滅ぼせば俺は団長になれるだろう。そして現在の団長は更に上へと向かう」
ぐぐぐっと拳を握りしめていた。
「こんなつまんない現場からもおさらばだ。キャリアを積んで次はより上の騎士団に潜り込んでやるぜ」
こいつの中ではいわゆるキャリアプランがあるらしい。
俺にはよく分からん話だけど。
俺は今までに騎士なんていう職に就いたことがないしな。
勇者をやめてからはいわゆる底辺みたいな生活しかしてこなかったし、騎士団に入ることすら雲の上の話に感じる。
ま、実際俺は年齢で無理って言われたとこなんだが。
「ところでおっさん。あんた実務経験は?なんでもいいよ。とにかく剣を振ってた期間を教えてくれ」
「3年ほどだったかな」
「ぷぷぷっ」
口元に手を当てて吹き出していた。
「短っ。そんなんで王都の仕事が勤まると思ってたの?甘すぎだよマジで。頭チョコレート?」
王都の事情は細かいことは分からんが、相変わらずムカつく奴である。しかし、今のこいつは俺よりも間違いなく立場が上のやつだ。
下に出ておいて持ち上げておくのが得策だろう。
「やれやれ、おじさん。俺が上司になったときはビシバシ鍛えてあげるから覚悟してなよ?泣くなよ?」
「今から鍛えてくれるのを楽しみにしてますよ」
そんな会話をしながら森の方に向かっていった。
もちろん、俺たちの後ろには沢山の騎士たちが追従している形だ。
チラッ。
うしろを見た。
同じ顔に見えるこんなモブ騎士たちですら、俺より立場が上なことを考えると内心落ち込んでくる。
「さて、ここからは俺たちが先導するよおっさん。最後尾を歩いてるといいよ」
「はいよ」
俺は騎士団の最後尾に着くことになった。
すると、モブ騎士が話しかけてきた。
「おっさん、あんたかなり軽装だが、それで大丈夫なのか?」
「問題ないよ」
勇者時代から俺は軽装である。
鎧を装備してたこともあったけど結局重くて動にくくてムカついたので装備するのをやめた。
「敵から攻撃をもらえば痛いぞ?」
「貰わなかったらいいだけだ」
「はっ。戦場に立ったことのない者の理想論だな。現実はそんなに甘くないぞ」
その後もぺちゃくちゃと説教をしてきた。
誰も頼んでないのに、うぜぇ。
そうやってぺちゃくちゃ話していた時だった。
俺が発動している【気配察知】のスキルに続々とエネミー反応が追加されていた。
「おい、囲まれてるぞ」
「なんの話だ?」
「あと三分ほどで敵に囲まれる」
「なにを言っているのだ?」
聞く耳を持たない。
「俺の【気配察知】にエネミー反応があるんだって」
「デタラメ言ってんじゃねぇぞおっさん」
そのまま騎士たちは歩いていく。
しばらくしたら。
ガサガサガサ。
あちこちの茂みから人間が飛び出してきた。
「敵襲だ!」
「応戦しろ!」
「ぶっ殺してやるぜ!!」
騎士たちが戦闘を始めた。
その時モブ騎士のひとりが叫んだ。
「副団長!ここは俺たちに任せてください!」
「先に行ってくだせぇ!俺たち騎士団の強さ見せつけてやりましょうよ!」
ヴァイスは森に響く位の声で叫んだ。
「では、任せたぞ!おまえたち!」
ヴァイスは数名の騎士を引き連れて奥へと向かっていった。
「おらっ!どうだっ!」
騎士達の奮戦。
言うだけのことはあった、一人で2人を倒したりしていた。
(俺が何もしなくてもなんとかなりそうだな)
そう思っていたのだが……
(なんだ、これ。新たなエネミー反応?)
超高速で迫ってくるエネミー反応をひとつ確認出来た。
速度は今応戦しているヤツらの数倍……いや。
10倍くらいはあるか。
「ふぅ、あっけなかったな」
騎士たちは今襲ってきていた敵をすべて倒しきっていた。
騎士たちは戦闘が終わったと思い込んで納刀していた。
(それじゃ、次の奴に対応できない)
俺は騎士たちに声をかけた。
「待て。武器を出せ!構えろ!来るぞ!」
ゲラゲラ笑い出す騎士たち。
「何言ってんだよ?おっさん」
「なんもいねぇって」
「気を貼りすぎだろ?」
そのとき、図体のデカい騎士が俺に向かって暴言を吐いてきた。
「おっさん、いい加減にしろよ。酒飲み過ぎて頭でも狂ってんじゃねぇのかよ?ばかじゃねぇの?」
「「ギャハハハ」」
それから畳みかけるように男はこう言った。
「ユカインで気をつけるべきはアロンゾだけだ。それ以外は取るに足らない雑魚。アロンゾ以外に気をつけるべき敵の目撃情報なんてねーのっ!」
そのときだった。
夜の闇の中を、一陣の風が吹き抜ける。
俺は咄嗟にバックステップで回避行動を取った。
しかし、何もしなかった騎士たちは膝を着くことになった。
「え?」
「いたっ……」
「なんだ?立ってられないぞ?」
ドサッ……ドサッ……。
全員膝をついて行く。
「さよなら、にゃ〜っ!」
その一瞬の後。
ザン!
その後騎士たちの頭は一人残らず地面に転がった。
一瞬の出来事だった。
生き残っているのは俺だけ。
地面は真っ赤に染まっており、無数の首が転がっている、正に惨劇と言える状況。
それを引き起こした者が目の前にいた。
14歳くらいの猫耳の少女。
近くの岩に座って呑気な声で話しかけてくる。
「あれれぇ?今ので、全員やったつもりだったんだけどにゃ〜?」
血まみれのナイフをポーン、ポーンと上に投げて、落ちてくるところをキャッチして遊んでいる。
そして、数度繰り返したところで逆手で持って、構えた。
「おじさん、ひとつ聞きたいんだけどいいかにゃ?」
「……」
「今のはまぐれ?たまたま?それとも、狙って回避したの?」
俺は勇者時代色んなやつを相手にしてきたが
(この速度、その中でもトップクラスに食い込むくらいヤバいやつだ)
四天王、魔王。
いろいろ相手にしてきたが、目の前の女の子は歴代でもトップクラスの力を持っている。
そのことは見ただけで理解出来た。
そして【ユカイン】の要注意人物としてこの子の情報がなかった理由も、今はハッキリと分かる。
(目撃者は皆殺しか。だから目撃情報も出ないってことか)
猫耳はニタリと笑っていた。
「今のがまぐれじゃないなら嬉しいにゃ〜。ちょっとでも長くいっしょに遊んで欲しいにゃ〜。壊れにゃいでね♡」
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