第6話 勇者の剣を見せてやろう

目の前にいる、アロンゾという男を見た。


「お前がアロンゾか。さっきの猫よりはずいぶんと弱そうだ」


「貴様ぁっ?!何者だ!まさか【死の風】を倒してもうここまで来たのか?」


アロンゾの目が泳いでいた。


俺は横で寝ているヴァイスから剣を奪い取った。


「借りるぞ、これ」


「おっさん、剣はどうした?持ってたよな?」


「壊れた」


俺はアロンゾを見つめてスキルを発動させた。


「下手に動くなよ?狙いが逸れて余計に苦しむだけだぞ」


俺は横向きで剣を前方に突き出した。


左手を刀身に添えてスキルを発動させた。


「【勇者の剣ザヒーローズブレイド】」


ピカァァァァァァァァァァァァァッ!


刀身から眩い光が放たれた。


「な、なんだっ?!この剣は!光り輝く剣なんてこんなもの見たことも聞いたこともないぞ?!」


アロンゾが後ずさる。


「【スラッシュ】」


ブン!


俺が剣を振ると俺の視界の先、前方30メートルほどが一瞬にして扇状に切り裂かれた。


俺の剣の軌道上にあったものはすべて消滅した。


建物の壁はもちろん、その先に広がっていた森林地帯も、焼き払われたように草木が消えていた。


もちろん、アロンゾもその例外ではない。


断末魔をあげる暇すらなく蒸発するように消えた。


プスプスと土から煙が上がっていた。


「これがSランク冒険者崩れか。弱かったな」


まぁ、それもそうか。


Sランク冒険者としての実力があるならこんな犯罪行為せずに、真っ当に稼ぐわな。


ヴァイスに目を戻した。


「おっさん、なんなんだよ今の攻撃は」


「企業秘密だ」


剣を返した。


「それよりずいぶんとボコられたようだな?ヴァイス副団長殿」


スっ。


手を差し出してみたが、


「貴様の助けなどいらん」


そう言って立ち上がっていた。


「おっさん、一人で来たみたいだが、俺の仲間は?」

「全員死んだよ」

「おっさんはよく無事だったな」

「無事?そんなわけあるかよ」


やれやれ。


俺は肩をすくめた。


「怪我とかはないように見えるが」


「見て分からんのか?」


「どこも変わってないように見える」


「俺が長年愛用してた300イェンのシャツに大穴が開いた。買いなおさないといけない。俺の財布は瀕死だな」


「分かるかよっ!」


ふぅ〜。


一旦息を吐き出して俺は会話をリセット。


「ところで、これで一件落着ってことでいいんだよな?副団長殿?」


「そうだな。仲間を失ってしまったのは痛いが、犯罪組織を潰せたのはデカい」


「じゃあ、俺帰っていいよね?」

「好きにしろ」


「お先失礼しまーす」


俺は部屋を出た。


すぐそこには例の猫耳がいた。

地べたに転がっている。


「ふぎゃー、解いて欲しいにゃ〜」


ロープで体をグルグル巻にしているので動けない。


猫の声が聞こえたのかヴァイスも部屋から出てきた。


「おっさん、なにしてるんだ?」


「なにもしてないよ。これからこの猫連れて帰るんだよ」


「そいつは危険な奴だぞ?」


「危険なのは分かってるよ。相手したんだから。でも、俺が勝った。つまり敗者は俺が好きにしていいってことだよな?」


猫が声を上げた。


「アロンゾが死んだんなら私はもう悪いことしないにゃ。解いて〜」


「とか言われて信用出来るわけないよな?猫ちゃん」


「にゃにゃにゃ〜」


俺はとりあえず猫を下ろした。


それから猫の頭に手を触れた。


「【テイムEX】」


スキルを発動させた。


【テイムに成功しました】


ガシャン。


猫耳に首輪がついた。


これはテイム成功の証である


これでこいつは俺の言うことを聞くだけの奴隷だ。


「こんなことしなくても言うこと聞くにゃ。おじさんが勝って私は負けた。本来死んでるとこ生かして貰ってるのに恩知らずなことしないにゃ」


俺は猫からロープを外した。


「ん〜にゃっ!」


背伸びしていた。


縛れていたのがよっぽど窮屈だったのだろう。


「ありがとにゃ〜。ご主人様」


ヴァイスがおそるおそる聞いてきた。


「おっさん、ところでその猫にどうやって勝ったんだ?少し聞かせて欲しいんだけど」


「ご主人様、話さないで欲しいにゃー」


話そうかと思ったけど恥ずかしそうに身をくねらせたので、俺はやめておくことにした。


「じゃ、俺らもう帰るから」


「んにゃっ!」


俺は猫を連れて未探索の部屋に入っていくことにした。


部屋の中を探していると金庫がある部屋があった。


「猫、ピッキングできないか?キャラ的にできそうな感じだけど」


「できるにゃ」


「中のもの拝借するか。追加のバイト代だよ」


「にしし、お任せにゃ〜」


その辺に落ちていた針金を使ってピッキングを始めた。


それからやっと、名乗ってきた。


「ところで名前は猫じゃないにゃ。ルーナっていう名前があるにゃ」


ルーナね。


名前も聞けたことだし俺はピッキングを任せて他の部屋の探索をすることにした。


他の部屋に入ってみると……


「お?何だこの部屋は」


壁際に沿うようにたくさんの檻が配置された部屋に入った。


檻の中には人が閉じ込められている。


何度も見てきた光景である。


「あー、奴隷か」


そういえば最初に尋問した男が吐いてたな。

奴隷にするやつを捕まえてるって。


この子達がどうやらその奴隷らしい。


俺は奴隷を解放してからルーナのところに戻ることにした。


部屋に戻るとちょうど、カチャンという音が鳴るところだった。


「開いたにゃ〜。ご開帳〜にゃ〜」


中にはカネっ!カネっ!カネっ!


「今日はひさしぶりに豪遊することにしますか」

「にゃーは鳥が食べたいにゃー、ふしゃー」


こうして俺は追加の報酬を手に入れた。





【補足】

猫ちゃんとの戦闘シーン諸事情で飛ばしてます。

いずれ公開するかも?って感じです

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