第14話【ヴァイス視点】勝てない
ヴァイスは夕方になってようやく目を覚ました。
「目が覚めたようだな。帰るついでに身に来て正解だったかな」
ヴァイスの寝かされているベッドの横にはフブキが立っていた。
「どうだった?ユースケの剣は」
「飾らないで答えると、勝てませんよあのひとには」
「まぁそうだろうね。私も何万人と剣士を見てきたが、あそこまでの剣士は見たことがなかった」
ヴァイスは驚愕した。
「そんなに見てきたんですか?」
「もちろん。だからこそ向かい合ってすぐに気付いた。この男はただものではないと。ま、それでも私には及ばんだろうがな」
腕を組んで頷いているフブキ。
「具体的にどこが他の剣士と違いましたか?」
フブキは自分の感じたことをヴァイスに語る。
まず、雰囲気が違ったこと。
普通の剣士だと、数十年かかっても出せないような落ち着いた空気を纏まとっていたこと。
曰く、
「あの男は我々では想像のできないほどの死線をくぐっているはずだ。そういう人間でしか出せないオーラが出ている」
「いったい、どんな経験を?」
「それは分からない。しかし、喜べヴァイス」
フブキはいったん区切りこう続ける。
「お前の上官になる男はとても優秀な男である。私のおすみつきだ」
「あなたがそこまで言う男なのですね」
「もちろん。ところで私からも聞きたいことがあるんだが」
「なんです?」
にんまりと笑うフブキ。
「あの男はお前が使ったスキルを『ただの弱い牽制』と言っていたがそれについてどう思う?」
「そりゃ、勝てませんよ。あんな大技をただの弱い攻撃だと思うなんて」
ヴァイスの中では自信のあった大技だった。
それだけに彼は弱いと評価されたことが信じられなかった。
それからフブキは質問を重ねた。
「これから彼の部下になることに対して、どう思ってる?」
「俺より強い人間の下で働くんです。不満なんてこれっぽっちもありません。むしろうれしいくらいですよ。今ではぼこぼこにされてすっきりしてます」
ヴァイスはそう答えた。
それからヴァイスはこう言った。
「あの人結局俺のこと本気で殴らなかったし。なんだかんだいい人ですよね」
「あーあれな」
「やっぱり気付いていましたか?あの人が俺の体を半分くらい切り裂いたところで『やっべ、このままじゃ殺してしまう』って呟いて、完全に力を抜いたこと。あのまま切り裂かれたら俺死んでました」
ヴァイスは呟いた。
「どんな反応速度してんだよ。ほんとに人間かよあの人」
どうしようもなくてヴァイスは「ははは」と笑うしかなかった。
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