第13話
俺とヴァイスは見合っていた。
そんな中フブキが口を開いた。
「ルール説明。致命傷になるような攻撃は禁止。分かってると思うけど、回復魔法で回復できる傷には限度があるから」
となると【英雄の剣】は出せないな。
あれは殺傷力ランクSSSランクくらいのものだ。
使えば相手を即死させられるようなスキル。
俺みたいな無能でも魔王を討伐できるようなスキルだ。
(どのスキルで戦うか)
悩んだのだが、ヴァイスは言ってきた。
「おっさん、早くあの剣を出せよ」
「あれは出せない」
俺はそう言って生身の剣を構えた。
「これでも一応剣は触っていたからな。これで相手するよ」
「後悔するなよ?俺はこれでも王都剣士学校で上位の成績を収めてたんだ。純粋な剣技で勝てるわけが無い」
(それは怖いねぇ、気を引き締めていくか)
フブキは俺たちの戦闘準備が整ったのを確認すると……
「では、決闘開始」
戦闘が始まった。
先に動いたのはヴァイスだった。
「【風圧波】」
飛んでくる無数の風圧。
「ははは、台風みたいな強さだろう?どうする、おっさん?」
俺は風圧波を切り裂いた。
風がやんだ。
「えっ?」
その隙に俺は走り抜けた。
そして、ザンッ!
「か、はっ……」
鎧ごとヴァイスを切り裂いた。
一瞬のことだった。
(今のはこいつにとってみれば牽制のようなものなのだろうが……本命を出す前に叩き潰す)
よく漫画で牽制のしあいがあるが、あんなもの意味が無い、時間の無駄だ。
相手が牽制で弱い技を出している間に俺だけ強い技でねじ伏せればいい。
フブキに目をやった。
「勝負はつきましたよね?」
ばっ!
フブキは旗を上げた。
「やるじゃん。あのヴァイスをここまで一方的にボコボコにするなんて」
「弱い技を出して牽制して舐め腐ってるから悪いんですよ」
「へ?」
キョトンとするフブキ。
「弱い技?」
「今の技には殺意を感じなかった。ただの妨害系の技でしょう?あんなもの出すよりもっと攻撃性の高い技を出した方がいいでしょう」
そのとき、アレシアが駆け寄ってきた。
「見たでしょう?フブキ様。これが兄さんの強さなんです」
胸を張っていた。
「たしかに強いやつだ。末恐ろしいな。こんな奴が辺境の村でぐーたら生活していたなんて」
はははっと笑ってフブキは俺の目を見て言った。
「ユースケ、お前をこの守衛騎士団の団長にしよう」
「ってことは合格ってことですか?」
「もちろん、即採用。街の平和を守って欲しい」
ガッツポーズ。
グルー、見てるか?俺王都で就職っぽいの決まったよ。
「給料とかの労働条件はあとでアレシアの方からよろしくな」
「ちなみに拘束時間とかってもちろん長いんですか?」
「ふっちゃけそんなにだよ。騎士団のヤツらなんか普段は詰所かこのグラウンドで遊んでるだけ」
「そうなんだ」
「うん。そんな気構えなくていいよ。適当にやってくれたらいいよ」
けっこう緩くやっても許されそうだな。
とは言え、最低限はやるつもりだけど。
フブキはその後色々と指示を出して言った。
まずは負傷したヴァイスの応急処置。
それからヴァイスを詰所の医務室へと運ばせていった。
「んじゃ、私たちは詰所の案内なんかをしようか」
フブキはウキウキ顔で俺を詰所まで連れていった。
フブキとアレシアに俺は詰所を案内されていた。
「まず、ここが団長室」
扉を開けて見せてくれるフブキ。
団長室と言うだけあってそこそこキレーな部屋だった。
「基本はここでユースケはふんぞり返っていればいいよ。団長は優雅に余裕を持って欲しいからね」
と、フブキに言われた。
ふんぞり返ってるだけじゃ給料泥棒だけど、本当にそれでいいんだろうか?
そのあともフブキによって俺は詰所を隅々まで案内された。
そして最後の部屋の案内が終わった。
「鎧なんだが、着たい?」
突然の質問だった。
「もしかして着なくてもいいんですか?」
「ぶっちゃけ雰囲気出しなとこあるから、普段は別にいいよ」
(ゆるいな、ここ。そんなんでええんか?)
「普段は外には出ないし、ここでふんぞり返ってヴァイスの奴にでも『あれやれ、これやれ』って指示を出していればいいからな」
「なるほど」
考えてみればヴァイスのやつはこれから俺の部下になるもんな。
それに村ではあれだけ絡まれたし、心置きなくパシリにできるな。
ミスはあいつの責任、功績はすべて俺のものってムーブもできるんだよなぁ。
そう考えてみればこれからの騎士団生活もなかなか楽しみになってくるな。
「町で問題が起きた時くらいは働いてほしいけど、ほんとそれくらいでいいよ」
「わかりました。普段はふんぞり返っておくことにします」
「うん、ほんとにそれでいよ」
フブキは一通り説明が終わったので帰っていった。
あの人普段は王城で勤務しているらしい。
見た目以上に凄い人だよな。
そのあと俺は軽くだけど、アレシアに仕事内容を教えてもらうことにした。
それから鎧の装備方法も教えてもらうことになった。
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