第12話 結果
ツンツン。
肘で俺の脇腹を突っついてきたアレシア。
「兄さん、この王都で一番偉い方です。粗相のないように」
「あ、そうなんだ」
やばいのきたーーーーーー。
バイトの面接行ったらいきなり本社の社長が出てきたようなものだろうか?
そこまで心の準備をしていなかったので驚いてしまった。
こんな大事になっているとは思わなかった。
「アレシアが推薦するような男と聞いたのでどんな男か気になっていたのですが、割と普通の男性なんですね」
「普通ですいません」
そう答えると笑っていた。
「普通の人ならそんな返答もせずに黙っているんですけどね、面白い人だ」
フブキはこう言ってきた。
「試験内容を変更しましょうか」
「「「?!!!」」」
周りは驚いていた。
「サトウ ユースケ。こちらを」
フブキは俺に向かって模擬刀を投げてきた。
地面に落ちた。
言われた通り模擬刀を拾った。
何の変哲もないもの。
向こうは木の枝を拾っていた。
ビシッと俺に木の枝を向けてきた。
「試験内容、私に一太刀浴びせてください」
(木の枝で戦うつもりなのか?)
いくらなんでも、舐められすぎじゃないか?って思ったけど。
そのとき、アレシアが呟いた。
「兄さん、フブキ様に勝てた者は誰もいません。彼女は天才です」
曰く、生まれつき剣の天才だった。
曰く、剣を握るために生まれてきた存在。
曰く、万戦不敗。
それがフブキという女らしい。
「ですが、兄さんなら……きっと」
いくらなんでもそれは買いかぶり過ぎじゃないか?
って思ったけど。
「そこまで言われるなら一太刀浴びせてみたくなったな」
俺は模擬刀を構えた。
そのとき、ヴァイスが詰所から出てきた。
赤旗と白旗を持っていた。
「話通り俺が審判でいいんですか?フブキ様」
「もちろん。あなたの言葉で試験を始めて」
ヴァイスは俺たち双方を見て軽く最後のルール説明。
「両者、スキルや魔法などの使用をいっさい禁ずる。己の剣技と体術のみを使い試合せよ」
すぅ……息を吸い込み、吐き出した。
「始めっ!」
一気に距離を詰めた。
そして、俺は模擬刀を下から上に振り上げた。
フブキはバックステップで避けようとしていたが……
ハラり。
髪が数本切れた。
トッ。
フブキは着地した。
そして、俺を見て言った。
「私の負けです。一太刀入りました」
木の枝を捨ててた。
剣に携わるものが武器を捨てるなどあってはならないことだ。
それを捨てた、ということは己の完全なる敗北を認めたことになる。
「あなたを見くびり申し訳ない。ユースケ。木の枝では話にならなかったね。なるほどアレシアの言うことも納得できた」
今度はヴァイスを見た。
「ヴァイス、試合の判定を」
プルプル。
手が震えていた。
「今のでなんで負けを認めるんですか?フブキ様。あなたは避けた。一太刀なんて入っていない」
「違う。一太刀はたしかに入った」
ヴァイスは叫んだ。
「今のであなたが負けるなんて俺が納得できない」
「納得しなさいヴァイス。私が負けを認めた。勝負はついたのだ」
「……くそっ!」
ばっ!
やけくそ気味にヴァイスは俺の陣営の旗を上げた。
どうやらこれで試験は終了のようだ。
「さすが、兄さん。信じておりましたとも!」
アレシアが俺の周りにやってきた。
そのとき、ヴァイスがギリッと歯を食いしばった。
「おっさん、俺とも決闘をしてくれ」
相変わらずこいつは睨むように俺を見ていた。
「今の試験納得できない。それに元々の試験官は俺のはずだ。言ったよな?俺に面接をして欲しいって」
(別に面接官なんて誰でもいいけど……)
でも、少し考える。
俺が推薦されているのはこの騎士団の団長である。
つまり俺はこいつの上官になるはずだ。
嫌な話だがこいつとの付き合いは長いものになると思う。
(ここで、白黒はっきりさせた方がいいかもな)
「逃げるなよおっさん」
「逃げないさ」
俺がそう答えたらヴァイスが叫んだ。
「フブキ様。抜刀許可をお願いしますっ!」
あのプライドの高そうなヴァイスが頭を下げながら頼んでいた。
「抜刀許可?模擬戦だろ?模擬刀を使え」
「違う。これは、決闘です。俺とおっさんの、サシの真剣勝負、俺は今の試合を認めない!」
一息ついてヴァイスは言葉を吐いた。
「レギュレーションはなんでもあり。実戦だ。殺す気でかかってこい、おっさん。俺もあんたを殺す気でかかるから」
「死んでも文句言うなよ?」
「言わないさ」
俺たちの会話を聞いてアレシアはフブキに泣きついていた。
「止めなくていいんですか?フブキ様」
フブキは笑っていた。
「止めないよ。面白そうだし」
「面白いって、冗談言ってる場合ではないですよ?」
「男の子達が始めた喧嘩だよ。止めれるわけもないよ」
フブキは俺にだけ聞こえる声量で言った。
「ユースケ、ヴァイスは殺すな。キミになら出来るはずだ」
(言われなくても元々殺すつもりは無いかな。だって殺しちゃったらこいつイビれないし)
俺はそろそろこいつの上官になれる。
そんな面白そうなことを前にしてるんだし。
殺すわけない。
俺とヴァイスの話し合いが終わったあと、フブキは周りの騎士に声をかけていた。
「お前たち、近くの魔法団を適当に呼んできてくれないか?彼ら殺し合いするみたいだから、戦闘後の回復する人は必要だよね」
・
・
・
そうして、回復魔法使いが集まってきた。
舞台は整った。
フブキが口を開いた。
「じゃあ、泣いても笑っても最後の決闘、始めよっか」
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