第20話 会議の報せ
「そういえば、ご主人様。ポストにこんなものが届いてにゃよ」
手紙を俺に渡してくるルーナ。
「誰からだ?」
手紙を見てみるとフブキから、と書いてあった。
【定例会議のお知らせ】
「なんだ、そんなのあるんだな」
手紙を開封して中身を見てみることにした。
「なるほどね。各地区の団長を集めてちょっとした会議を行うのね」
それがたまたまこの時期にあるらしい。
「開催は、明日か。えらい急だな」
そう思っていたらフブキから謝罪があった。
"いつも手紙出さなくてもみんな集まるから出すの忘れてた。ユースケが今回初めてだから出さないといけないの忘れてた。間に合ったから許して"
だそうだ。
ギリギリ間に合ったから許すことにしよう。
それに俺はどうせ暇だから明日集合な!でも集まれるし。
(それに定例会議ならクープンも間違いなく出席する。その時にアングラへ招待してやろうか)
◇
翌日。
フブキの指示した場所にやってきた。
王城に近い場所にある集会所だった。
既に他の参加メンバーは既に集まっていた。
よって、空席なのはひとつだけ。
「よく来てくれたな、ユースケ。ま、座りなさい」
俺はフブキの言葉に頷いて席に着いた。
チラッ。
クープンの方を見てみたが右腕は包帯が巻かれていた。
(ヴァイスにつけられた傷を隠してるっぽいな)
「ではこれより定例会議を始めます」
フブキの言葉で会議が始まっていった。
内容は想像していた通り自分達の担当地区の現状を報告し合うだけの簡単なもの。
「特に異常ありません」
「こちらも特には」
俺はフブキにこの前の件を報告することにした。
「死体が出ました」
「それは災難だったな。まだ一週間だと言うのに」
「困ったもんですよ。ほんとに」
「私が手伝ってやろーか?ユースケ」
にまにまして聞いてくる。
どうやら先輩として俺の事を手伝いたいみたいだが。
「なんとか解決してみるんで大丈夫ですよ」
「無理はするなよ?」
「もちろん」
そのときクープンが口を開いた。
「フブキ様お気になさらず。俺が少しばかり手伝っていますので」
「おぉ、クープンが?」
フブキは無邪気な顔を浮かべていた。
どうやらクープンの裏の顔は知らないようだ。
「新人のケツ拭いやらというのは先輩の役目ですからね。ははは」
クープンは笑っていた。
それから……
「ところでフブキ様。俺の昇進などをそろそろ考えてもらえませんでしょうか?」
「んー、無理かな」
「まだ、足りないのでしょうか?」
クープンの顔は穏やかだが、心情はなんとなく分かった。
フブキのことを良くは思っていないのだろう。
「お前はまだ昇進に値する人間では無い。もう少し団長として育てるべきだと思っている」
「もう5年目なんですけど」
「私に歯向かうのか?」
そう言われると返す言葉もないらしい。
ギリッと歯を食いしばっていた。
「そうですね、自分はまだ未熟者かもしれません」
クープンは落ち着きを取り戻していた。
それから俺に目を向けてきた。
「お互い頑張ろうな。ユースケ。ははは」
・
・
・
会議が終わった。
ゾロゾロと他のメンバーは会議室から出ていった。
俺は新人として最後に出ようと思ったのだが。
「ユースケ」
「どうしました?フブキさん」
「なにか企んでおるようだね?」
「さぁ、なんのことやら」
「私に隠し立ては通用せぬぞ。むっふっふ。殺気が漏れておる」
俺が今日の会議でクープンを公開処刑しなかったことについては色々と理由がある。
ここでフブキ達にクープンを引き渡すのは最悪の手だと考えているからだ。
フブキたちにクープンの身柄を引き取られたあと、こいつらがちゃんとクープンを始末してくれるなんて保証は無い。
俺としてはクープンはここで確実に始末しておきたいので、あいつの運命を他人の手に委ねるつもりはない。
確実にアングラで殺す。
(だから、ここでフブキになにかを勘づかれる訳にはいかない)
そこで俺はこの場を切り抜ける方法として、とりあえず誤魔化す方法を選んだ。
「フブキさんはどんなパンツ履いてるんだろうなぁって考えてただけですよ」
「んなっ?!」
年相応の赤面を見せてくれる。
(剣の天才と言ってもこの手のことは初心ってわけか)
俺が部屋を出ようとしてると、ギュッと裾を掴んできた。
振り返ると赤面しながら口を開いた。
「その、見たいのか?」
「冗談に決まってるじゃないですか」
俺は「ははは」と軽く笑いながら部屋を出ることにした。
◇
団長室に戻るとルーナも帰ってきていた。
「ルーナ、指示したことはできたか?」
「ばっちりにゃ」
俺が会議室にいる間にルーナにはダクトを通って準備室に入り込んでもらった。
準備室には俺たちの荷物が置いてある。
その中にはとうぜんクープンのカバンも置いてある。
やつのカバンに【アングラへの招待状】を出してもらった。
【死の風】や【ユカイン】などのワードを言葉巧みに使って奴を慌てさせるような手紙を作った。
あいつが読めば思わずアングラへ来たくなるような手紙である。
やることはやった。
あとは、アングラ当日を待つだけだ。
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