第9話 王都での出会い

まずは王都の広場に向かった。


王都の真ん中には目立つ噴水。


そして、その噴水なんだが勇者から水が出るようになっている。


でその水の出方なんだが、勇者が持つ剣から出ている。


もちろんだが、勇者像のモチーフは俺ではなく、当時功績を譲った王様の息子である。


「この銅像ずっとあるんだな」


「これが勇者像ですかー。初めて見たー」


スイレンはこの銅像を見たのが初めてらしく、物珍しげに見ていた。


「にゃふふ、豆知識。この銅像には実は高値がついてるんだにゃ」


「いくらくらい?」


「一億くらいにゃ」


「誰が買うんだよ」


呆れながら俺は噴水の縁に座った。


ちなみにだが

この銅像には折をささげに来る人間が後を絶たない。


今もちらほらこの銅像の前で祈っている人を見かける。


「勇者様、いつも街を守り下さりありがとうございます」

「ありがたや、ありがたや」


と祈りをささげている声が聞こえてくるほどである。

これも10年前から変わらない景色だった。


こんな光景を見ているとふと考えてしまう。


「功績を譲らなかったら今ここにあったのは俺の像だったのかな」


こうやって街の真ん中で銅像になって飾られていたのは俺だったかもしれない。

でも、なんか嫌だな。

自分の銅像がこうやって噴水になっているのは。


うん。

功績を譲って正解だったとすら思えてくる。


「功績を譲ったってどういうことにゃ?」


「なんでもないよ」


さて、


「そろそろ、なにか食べたりする?食べてみたくない?王都のご飯」


「私は普段から食べてたからべつにいいにゃよ」


「スイレンは?」


「私はせっかくだから色々食べてみたいかも」


ルーナに金を渡す。


「俺とスイレンで町の観光でもするから、これで適当に遊んでくるといい」


「にしし、私から目を離して大丈夫かにゃ?」


悪そうな顔で笑っているけど


「その首輪があるうちは悪いことできないよ。それに、別にするつもりもないよね?」

「もちろんにゃ。これからはご主人様と行動することになるし、嫌われるような行動はしないにゃ」


数日この子といてなんとなく分かったけど根っからの悪人ではないと思う。


(ま、俺としては悪人でもどっちでもいいけどね)


というわけでルーナとは別れることにした。


スイレンと何か出店でも身にいこうとした時だった。


「誰か!そいつ捕まえて!!!」


女の声が聞こえた。

目を向けてみると


「へへへ、俺が捕まるわけねぇだろ!」


男がかばんを持って走ってきているのが見えた。


(ひったくりか)


「邪魔だ!どけ!」


ひったくり犯が走ってくる。

走ってくる方向は運が悪いことに俺たちの方向だった。


男と俺の目が合った


「おい!どけ!殺すぞ!」


「やってみれば?」


「ヤロウ!」


ナイフを抜いて俺に襲い掛かってきた。


「ざんねん」


俺は男の横をすれ違うように移動して、通り抜けるときに足を引っかけた。


「おべ!」


顔面ダイブ。


「いたそ~だね~」


「うぐっ」


男は鼻を激しくぶつけたようで起き上がってくる様子が見えない。

これで無力化は成功かな。


そのとき


「はぁ、はぁ、ごめんね。手間を取らせちゃって」


ひったくられてた方の女の子が俺の方に来ていた。


「気にしないでよ。大したことないから」


俺がそう言ったとき、女の子は俺の顔をまじまじと覗き込んできた。


銀色の髪の毛、それからフレアスカート。

そして、武器は杖。


見るからに魔法使いです、みたいな顔をしていた。


「あれれ?」


女の子は俺の顔を見て首をかしげていた。


「どこかで会ったことがあるような?ないような?」


「気のせいじゃないか?」


少なくとも俺の方にはこんなかわいい女の子の知り合いはいない。


いないはずなんだけど、こういう思考、直近でした気がするんだよなぁ。


俺が顔をしかめていると、

女の子は顔を明るくした。


「あ、思い出した。ユースケだよね?」


(あーやっぱ、アレシアと同じパターンか)


で、やっぱり俺はこの子の名前が分からなかった。


「ふふん、やっぱりユースケはかっこいいなぁ」


すっごい聞きづらいけど、このあとずるずる名前思い出せないのはやばいと思った。


ので、もう名前を聞こうか。


「ええっと、誰だっけ?」


「私はエリスだよ。やっぱ覚えてなかった?」


俺は申し訳なさそうに頷いた。



そのあと俺はエリスを加えて三人でぶらぶらと街を散歩することにした。


歩きながら俺はエリスのこれまでのことを聞いていた。


「へぇ、じゃあ。今は魔法軍団の軍団長を務めてるんだ」

「うん、すごいでしょ。えへん」


胸を張っていた。

奴隷から軍団の軍団長まで登ってしまうなんてすごいんじゃないだろうか。俺みたいな豆腐メンタルだとたぶん軍団入りした時点で、向上心をなくしてずるずる堕落していくだろうしな。ははは。


「ぜんぶ、ユースケに認めてもらえるようにがんばったんだ。へへ」


10年前の自分の行動なんかほとんど覚えてないけど。どうやら俺はエリスにもなつかれていたようだ。


まさか、10年越しにハーレム(?)が始まることになるとは思わなかったものである。


まぁ、俺のハーレム生活の話はとりあえず横に置いといて、だ。


「エリス、頼みがある。スイレンが魔法軍団に入れるように少し教えてあげてくれないか?」


「うん、任せて。っていうか元からそうするつもりだったよ」


エリスは事情を話し出した。


どうやらアレシアからはすでに話が届いており、アレシアにスイレンの面倒を見るように頼まれてここに来たらしい。


だが、来たはいいけどさっきのひったくりにカバンを盗まれてしまい、アンラッキーガールになってしまったそうだ。


(なるほどね。そういう流れだったわけだ)


エリスはスイレンに目を向けて言った。


「ようこそ、魔法軍団へ。歓迎するよ。うちも人手不足だからね」


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