1 - 6 ヒカルの友好(成長)

 ヒカルとタクは三、四日、この際歳サイサイの公園に留まることにした。

 ゴウが毎日来て、魔法マホウを教えてくれるという。暗くなり始めてからの練習だから、日中は日向ぼっこでもして過ごすことにする。

 ゴウは、地龍モグラの死体をそれが出てきた植え込みの辺りに移動させた。そして、夕方にまた来ると言ってから何処かへ行ってしまった。

 ヒカルとタクも、公園内の東屋近くの方に移動した。

 だいぶ時間が経ってから、パトカーとトラックが複数台来たようだった。地龍モグラの死体を調べて持っていったのだろう。テレビカメラを持った取材をする人々も来ていた。しかし、ヒカルとタクの所まで聞きに来る人は、一人もいなかった。

 夕方になると、ゴウが約束通りにやって来た。

「タクはバンド状が得意のようだから、それでいい。問題はヒカルだが、あまりやったことがないのなら、おれのやり方を教える。ボール状だ」

 コーラの入っていた缶を地面に置いて、離れた所にヒカルが立つ。ゴウが言った通りに人差し指を立て、その先に意識を集中する。

 驚いた。

 卓球の球くらいの光のそれが発現したのだ。

「よし、飛ばしてみろ」

 ヒカルが前方に腕を伸ばすと、光の球が空き缶の方へと進んでいった。ひゅるひゅると頼りなく、最後は空き缶に掠っただけの感じだ。それでも倒れた。

 ゴウは、

「上出来だ……」

 次の日の日中、公園の芝生で寝っ転がっていると、女の子が近づいてきて、

「あのー、すみません」

 タクが気づいて、

「ああ、昨日の。怪我はなかったでしょうか?」

「はい。有難うございました。お礼を言いたくて……」

 ヒカルも思い出したことがある。

「ちょ、ちょっと待ってて」

 彼は、自転車の方に走っていき、急いで戻ってくる。

「これ。どうしたらいいかと思っていたところなんだ」

 彼女が昨日、風で飛ばしてしまったキャップである。

「あ、有難うございます。……この帽子、お気に入りなんです」

「良かった……」

 三人でしばらく話したのだった。

「わたし、魔性マセイの人たちって、怖い人たちかと思っていました……」

 彼女は、何度も礼を言ってから去った。

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