1 - 2 ヒカルの決心(旅)
ヒカルは、とりあえず自転車の旅を続けるしかないと思った。あまりにも周囲の状況が自身の記憶とは異なっていたからだ。おそらく、家に帰ろうにも、この世界には自分の思う家、両親のいる家は無いであろう。タクは嘘をついていない。
例えば、コンビニエンスストアも確かに存在している。しかし、それは見たことのない看板であった。行き交う人々は携帯電話を持っていた。しかし、それはスマートフォンではないようだった。タクに訊いてみたが、二人は携帯電話自体、所有していなかった。
ヒカルとタクはテント等の荷物を付けた自転車に乗り、タクの言っていた、
道中の様子は、ヒカルにとって初めてのものだったが、奇異なものではなかった。日本であるならば、あり得る風景であった。
何台もの自動車が行き交っていた。ガラス越しの顔を見ても、変わった人はいなかった。
ヒカルとタクは主に歩道を走ったのだった。町中ではないので、歩く人はほとんどいなかったと言って良い。
途中、郊外型ショッピングセンターがあって、休憩がてら、中に入ってみた。ヒカルから見て、特別おかしな点はなかった。田舎の町によくあるショッピングセンターと言ってよかった。
彼は本を読むのが好きだったので、書店に入ってみた。書店の様子そのものに奇異な感じはなかったが、やはり並んでいる書籍には違和感があった。見たことのない雑誌、聞いたことのない著者の本ばかりがあった。
その後、自転車に乗りながらも、ヒカル自身のこれまでの記憶と現実のズレの不思議を思っていた。
暗くなってから、東屋に入った。タクが、
「予定通りに到着して良かったですね」
「うん……」
タクの雰囲気は、ヒカルの知っているそれである。しかし、ヒカルの違和感を話しても、冗談として受け取っているようだった。
天気も良いし、気温も高い。この日は、躰的には穏やかに眠りについた。
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