3 - 7 トモカが決意(魔法)

 問. 魔法マホウを使えることに気づいたのは、いつ頃か?

 S・S 小学校二年生のとき。兄弟喧嘩の最中に発現させた。

 Y・H S・Sによれば、小学校二年生のときらしい。しかし、Y・H本人には分からない。なぜなら、Y・Hには最近より前の記憶と現実に齟齬があるからだ。もっと言えば、いまは違う世界に来てしまっていると感じている。Y・Hは元いた世界に戻りたいとも思っているようである。

 T・H 小学校四年生の秋。学校で生徒にからかわれたとき、反射的に発現させた。言葉少なであるが、どうやらY・Hと同じように、違う世界に来てしまっていると感じているようだ。


「はあー」

 トモカは自宅の自室で、書き終えたメモを見ながら、ため息を漏らした。それは現状への生活に対する不安を表すようなものではなく、緊張が解けたときの動作だった。

 昨日、トモカはミホやヒロトと一緒にヘイキチの所属している探偵事務所に再度赴いたのだった。

 彼女は、始め信じられなかった。自分が話すことのできた魔性マセイの男性三人の内、二人が元々にいた世界と現在いる世界は違うという認識をもっているなんて。

 彼らは、やはり一般に言われているように、小学生のときに魔法マホウを使えることに気づかされたようである。これは、トモカの姉もそうだったから意外ではないが……。

 もしかしたら、姉も、この世界に存在していることに違和感を覚えていたのであろうか。

 彼女らは、本当に、こことは違う世界から意識が移ってきた人々なのだろうか。それとも、それは魔性マセイが罹りやすい一種の「やまい」なのだろうか。

 メモには「Y・H」と書いたヒカルは、元いた世界に戻りたいとも思っているようである。

 ヘイキチも含め、ヒカルもタク(スグル、S・S)も悪い人のような雰囲気は全然しなかった。

 彼らが日々、苦悩してきたことは間違いないと、トモカには感じられた。彼らを助けたいという気持ちになった。

 トモカは、魔性マセイに関して研究したいという気持ちを叶えるために、大学院へ進むことを決意した。

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世々界々――違う世界を生きる者たち 森下 巻々 @kankan740

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