1 - 7 ヒカルの貫徹(別れ)

「パアーン!」

 空き缶が弾け飛んだ。

「よしッ。うまくいった。免許皆伝だな」

 ヒカルは、最初から比べれば、かなり大きな光の球を操れるようになっていた。

 ゴウが教えてくれたのは、魔法マホウを使うときの或るである。意識の集中の仕方、それの抜き方。理解するのは大変だったが、繰り返す内に自然とできるようになったようだ。

 ヒカルは始め、積極的に魔法マホウを練習する気はなかったのだが、成り行きでやり始めると、どんどんうまくなるのが愉快になってきて、四日間でここまできた。

 タクも、ゴウから習うことで、コントロールがうまくなったようだった。地龍モグラを横倒しにしたときのは、火事場のクソ力のようなもので、本当はそんなにうまくなかったのだ。

 この数日の間に、ヒカルはゴウからは色々な話を聞いた。見た目はもう少し若いが、彼は三〇歳を過ぎている。

 幼少期には喧嘩っ早い性格であったらしい。小学校高学年で魔法マホウを発現。擦り傷程度とは言え、周囲の子供たちを傷つけてしまった。施設シセツに送られた。魔法マホウを発現できるように子供たちを収容するための場所だ。確かに勉強の時間もあるが、農作業をさせられる時間も長かった。

 中学校部を卒業になると、外部の高等学校に施設シセツから通うことになった。彼は、もう少しの辛抱だと思い、卒業まで頑張った。

 しかし、その後に行かされたのも、やはり自由のない場所であった。当然、魔力を抑える薬は毎日呑まされた。彼によると、

「あの薬、最悪だよなあ。おれの場合の副作用は食慾だった。でも、決まった食事しか出ない」

 ゴウは、或る日、そこから脱走した。

 いまは、この際歳サイサイの地域に住んで生活している。知り合いが何人かできたので、仕事を手伝わせてもらえているそうだ。

「それじゃあな。旅、続けるんだろ」

 タクが、

「はい。色々、有難うございました」

 ヒカルも

「お世話になりました。明日、明るくなったら出発しようッて、話しています」

「そうか。おれは見送りには来ないからな。じゃあな……」

   (第1話 おわり)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る