2 - 3 ヘイキチと老翁(出会い)

「お待たせいたしました。キーとお車は、こちらの方で……」

 頑丈そうな門の前で、ヘイキチとアキナが待っていると、警備員が出てきて自動車の鍵を預かった。

「このまま、先に歩けばいいんですね? 有難うございます」

「へえ、ここ、敷地内に庭が幾つかあるんじゃないのか。大きいなあ。こんな所が本当にあるんだなあ」

「大企業の創業者一族ですもの」

 しばらく歩いて、或る建物に辿り着くと、

「こちらでございます」

 おしとやかな和装の女が洋室へと案内した。

 入ると、奥のソファに、白い髭の男が坐っていた。彼は、ゆっくりと立って、

軒先莞爾ノキサキ カンジと申します。ようこそ、遠い所をお越しくださいました。有難うございます」

 お辞儀した。

 ヘイキチとアキナは、挨拶が終わるとソファに坐って、探偵事務所としてカンジからの依頼を受けた。

「……と、すると、そのお孫さんのボディーガードをすれば良いのですね」

「おっしゃる通りです。美桜ミオは、この春から大学生になっておるのですが……」

「バタバタバタ」

「何?」

 アキナが不審で目を細めたとき、ドアが開いて、若い娘が入ってきた。茶色っぽい髪を左右二つ結んでおり、ネック部分が大きく開いた白いTシャツにデニム・スカートという姿だ。胸の谷間も健康的な脚も目立っている。

「おじいちゃん。だから、言ってるじゃないッ! ボディーガードなんて、いらないって。わたしはフツーに大学に通いたいのッ」

「お、おっと、こちらが、お孫さんですね」

 ヘイキチが言うと、初めて存在に気づいたかのように、若い娘は彼を見て、目を見開いて声を小さくした。

「あなた、あなたが今度のボディーガードなの?」

 アキナは、それを見ると何処か不満そうな、ツーンとした顔をして、

「これだけ、お元気なら、わたくしたちは必要ないかも知れませんね。今回の御依頼は……」

 ミオが、アキナに向かって手をパーに開いて制止するポーズで、

「ちょッ、ちょっと何なのよ!? ムカつく言い方ね。分かったわよ。お試しに警護させてあげるわよ」

 声を荒らげた。

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