2 - 4 ヘイキチと令嬢(別れ)

 男女問わず学生たちからの視線が苦しい。

 ヘイキチの腕にミオが絡んで躯をくっつけて歩くのだ。

「ちょっと、どうにかならないのか」

「あなたは、わたしのボディーガードでしょ。しっかり守ってくれなきゃ……」

 ミオが授業を受けている間、ヘイキチは一緒に教室に入る訳にはいかない。外で待っているしかないのだが、教室の場所によってはそうすると目立つ場合もあった。キャンパス内を散歩して時間を潰した。緑が多いことで有名な大学だから、歩くと気持ちが良かった。しかし、これが夏休みまで続くと考えると、ヘイキチはため息が出るのであった。

「これは、タイミングのいいときに止めさせてもらうしかないかな……」

 学生が休憩をとる建物の入口で待っていると、ミオが女子学生たちと別れて出てきて、

「ヘイちゃん、待ってくれて有難う」

「いつから、ちゃん付けになったんだ。みんな、見てるじゃないか」

「いいじゃない、別に……」

 実際、そういうやり取りを羨ましそうに遠巻きに眺める学生たちもいた。

 ミオがヘイキチの腕を取って、くっつこうとしたとき、少し離れた先から、

「キャアー!」

「アヤカーッ、あやかがー」

「何だ、なんだ!?」

「おい、地龍モグラだ。モグラが、あの子を……」

 ミオが、

「アヤカって、もしかして、わたしの友達……」

 走ろうとするのをヘイキチは止めて、

「いいな。この場所から動くんじゃないぞ」

「うん」

 彼が走って、騒ぎの起こっている方へ行くと、若い娘が一人うずくまっており、椅子を掲げた若い男が、地龍モグラと対峙していた。

 ヘイキチは、

「おい、そこのッ、地龍モグラから逃げろ。早く! 他の奴は、救急車を呼ぶんだ! 早くしろ。おれは魔性マセイだ」

 椅子を持っていた若い男を含め、皆、この場から静かに離れていった。

 ヘイキチは横に走って、地龍モグラを誘導すると、右のこぶしをその方向に向けた。直ぐにこぶしが光を放つと、それより一回り大きな輪っかが次々と飛び出していく。

「キー、キキ、キキ、キキ……」

 この地龍モグラは、そんなに大きくなかったこともあるからか、直ぐに動かなくなった。

 ヘイキチは、大きな声で、

「おいッ! もう大丈夫だから、誰か来てくれ。救急車が来るまで、そのに付いてあげてやってくれ」

 何人かの若者たちが集まってきたので、彼は、その場を離れた。

 ミオが待っているはずの場所へ戻ってみると、

「いない!? ミオがいない」

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