3 - 2 トモカが関心(相棒)

 トモカは同級生の萌井美保モエイ ミホと向き合って、学食でランチしていた。そこに、通りかかった学生が、

「こんにちは」

 二年生の西野裕人ニシノ ヒロトだ。トモカは、

「あ、こんにちは」

「カシワギさん……。久しぶりです……。お昼御飯ですか」

「ええ……」

 会話は続かず、ヒロトはその友人と奥の席へと坐った。

 ミホが小声で、

「なに、何、あの子、トモカと話すのに震えてたよ。だいたい、お昼御飯食べてるに決まってるのにね」

「うん」

 ヒロトを顔見知ったのは、武藤充ムトウ ミツル教員のゼミナール授業のときだった。同じ教員の心理学の講義を履修している学生たちから希望者を募り、そのゼミ授業に招待した回があったのだ。

 授業後に皆で話していたとき、トモカの同級生の男が「トモカちゃん、ヒロトくんとお似合いじゃん」などと冗談の口調で言ったとき、彼女は、

「わたしには、もったいないです」

と返したのだが、ヒロトはまんざらでもない顔をしているようにも見え、少し怖く感じたのを覚えている。

 トモカは、高校生のとき校舎の裏で告白されたことがあった。自分には興味がなかったので断ったのだが、その後、彼女の悪口を吹聴されるということがあって、好意的な雰囲気を出してくる男性に警戒心がある。

 彼女らが食べ終わって、学食を出ようとすると、

「あッ、ちょっと待って……」

 ヒロトとその友人の男子学生が一緒に近づいて、

「……ぜひ、一度遊びにきてください」

 ビラを手渡してきた。

 受け取らないのも悪いかと感じ、トモカは手にして目礼すると歩き出した。

 並んで歩くミホが、

「何、それ」

 紙を取って、

「ああ、キラキラ部ねー。」

「うん、そうみたい」

「確かに、トモカも可愛いけれど、キラキラ部って感じじゃないのにね」

「わたし、そんなに……」

「もう、謙遜しないッ。可愛いよ」

「有難う」

「そう言えば、この前に地龍モグラに襲われたのが、キラキラ部の一年生だったよね」

「そうなの? 魔性マセイの人に助けてもらったんでしょ」

「らしい」

「わたし、ちょっと興味あるなあ」

「えー、やめときなよ。さっきのがいるんだよ」

「うーん。でも……」

「分かったよ。わたしも付いていくね」

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