2 - 6 ヘイキチと元兇(成長)

 ヘイキチはミオに頼み、彼女の自宅に泊まらせてもらうことにした。寝るときと風呂・トイレ等以外は、できるだけ行動をともにし、軒先ノキサキ家の関係者に探りを入れてみたのだった。

 そして、この日の朝、ヘイキチは洋室にいた。カンジおうだけでなく、彼が信頼する男女も集められていた。そこへ、

「お待たせいたしました」

「失礼いたします」

 ヘイキチが最初に訪れたときに案内してくれた和装の女。そして、いつも門にいる警備員の男が入ってきた。

 ヘイキチが説明する。

「お二人にも来ていただいたのは、ほかでもありません。ミオさんを或る男に襲わせようとした犯人を突き止めたからです。警備員の須之内スノウチさん、あなた、親しくしているヤクザものに金を渡して地龍モグラを大学の土地に放させましたね。また、以前に門にまで来たことのある、軒先ノキサキ家に恨みをもったあの男に、今回の犯行方法を吹き込みましたね。……同僚の警備員の、あなたがギャンブルで作った借金に困っているという証言もあります……」

 警備員の男は、何も言わないが、その表情はもうそれらを認めている。

「……そして、そちらの栃見トチミさん。金を払って、スノウチさんに頼んだのはあなただ」

 カンジおうは悲しい表情で、

「トチミさん、なぜ、そんなことを……」

 和装の女は、

「それは、ミオさんが、この家の娘として相応しくないからでございます。わたくしにも、娘がおりますが、彼女の方がよほど清く正しく成長いたしております」

 カンジおうは表情を変えずに、

「トチミさん。娘さんはわたしの……」

 和装の女は震えて、

「ですから、ですから、それならば、なぜもっと大切にしてくださらないのです?」

 この日を最後に、ヘイキチはミオのボディーガードを終えることにした。

 ミオは悪い娘ではないが、軒先ノキサキ家のごたごたを見るのは、あまり良い気分ではなかった。

 和服姿の似合う、あのトチミという女の娘の父親は、ミオの父親であるらしかった。カンジおうにすれば、娘は孫にあたる。彼もそれは知っていて、様々な支援をしてきたらしい。しかし、トチミにすれば、それらでは全く足りないということなのだった。

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