1 - 5 ヒカルの傾聴(魔法)

「ヒカルさん、大丈夫ですか」

「タクの方こそ、どうしちゃったんだよ」

「どうしちゃったッて……」

 二人の会話を見ていた男はタクに、

「何だ、なんだ? こいつも魔性マセイなんだろ」

 こいつと指を差されたヒカルは、

「マセイ……?」

 タクが、

「そうです。ぼくたちは、赤貝アカガイ施設シセツを勝手に出てきたんです。先輩センパイに会いに行くために……」

「その先輩センパイ魔性マセイなのか?」

「はい。手戸テトにいるらしいんです。もう、施設シセツでの管理カンリ労働ロウドウは嫌なんです」

「いや、しかし見たところ、施設シセツでの生活はそろそろ終わりなんじゃないのか? 高校生なんじゃないか」

「ええ。でも、ヒカルさんがあと一年も待っていられないッて。それに、どうせ何処かまた管理カンリのある所に引き渡されるに決まってるッて」

「はっはッ。おれは、その管理カンリのある所から逃げたタイプだよ」

 タクは意外そうな顔をして、

「そうなんですか……。そういう人も案外多くいるのでしょうか」

魔法マホウの訓練は受けているのか?」

「いいえ。むしろ、魔力を抑える薬を毎日呑まされていました」

 それを聞いて、男は深刻そうな表情になって、

「それで、そこの……」

 ヒカルは、自分の方を見られたので、

「ヒカルです」

「……ヒカルは、魔法マホウを使う自信がなかったんだな?」

「はあ……」

「そうか。それじゃあ、ここにいる間に魔法マホウの練習をしろ。簡単にだが、おれが見てやる。たまにとは言え、さっきみたいなこともあるからな。おれたちは、ああいうときに、ほかの人間をも助けることができる。変な目で見る奴もいるから、普段は隠しててもいいし、どうしても助けたくなきゃたすけなくてもいいけどな。……しかし、それにしても、さっきの地龍モグラは早く手を打てて良かったな。魔法マホウでぶっ倒してくれたから、おれも攻撃できたが、あれはもっとスピード出せた奴だったぜ。最近、増えてることはふえてるんだよな。人工的に凶暴なのを育てている組織があるなんて陰謀論もあるらしいが……」

「ぼくは、白石卓シライシ スグルと言って、タクと呼ばれているのですが……」

「ああ、ごめん。おれの名前は、合原剛ゴウハラ ゴウだ。ゴウと呼んでくれていい」

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