終末の対岸

　少し先の未来。不安定さを残した世界で天瀬哲己は三年の日々を暮らしていた。

　哲己には三年より前の記憶がなく、瀕死の状態で倒れていた哲己を天瀬夕里亜に助けられたのだった。覚えていたのは、自分の名前と誰かと手を繋いでいたという掌に残る感覚だけだった。

　一命を取り留めたあと、哲己は夕里亜の家に引き取られるが、三年も世話になっていることへの感謝と罪悪感から、高校卒業後は天瀬家を出ることを決めていた。だが、夕里亜から反対を受けて喧嘩になってしまう。

　そのあと哲己は自身が見つかった海の浜辺で一人の少女と出会い、哲己は少女に促されて手を交わす。
　その瞬間、世界の景色が一変し、哲己はもう一つの世界へと誘われた。そこで自分が何者かを断片的に思い出す。目の前の少女は哲己の妹の夕葉だった。
　彼女は…続きを読む