モナリザの怪
はくと「なつ、ここの部分どうすればいいと思う?」
中学2年生、美術部の川田 博斗(かわた はくと)は切り絵の下書きを隣に座っている同級生の芹本 夏津(せりもと なつ)に見せた
なつ「これでもいいと思うけどな〜」
はくと「でも何か物足りないんだよ!何かいい案ない?」
なつ「うーん…これフクロウだろ?枝に止まらせるだけでもちがうんじゃないかな?その枝に葉っぱをつけたりとかさ」
はくと「確かに…!ありがとう!!」
はくとは枝と葉っぱを書き足す。すると、もう部活終了の時間になってしまった。はくととなつは片付けをする。部員はさっさと帰ってしまった
顧問「川田と芹本、戸締りよろしくな!鍵は閉めたら職員室に戻してくれ!」
はくと「はーい!わかりましたー!」
先生は職員室へ戻っていった
なつ「切り絵ってむずいよなー」
はくと「うん、難しい!」
なつ「僕下書きは描けるけど不器用だから結局ガタガタになっちゃうんだよ」
はくと「僕もだよ〜…器用でありたかったな〜」
そう言っている間に片付けが終わった
はくと「よし!帰ろう!」
なつ「そうだね!」
はくととなつはカバンを持って、美術室を出ようとした。その時、なつが立ち止まり、美術室の奥の壁を見つめた
なつ「…気のせいか」
はくと「どうしたの?」
なつ「いや、あのモナリザの目から黒いのが流れていた気がして…」
はくとは奥の壁に飾ってあるモナリザの贋作を見る
はくと「何もなってないよ」
なつ「うん、たぶん見間違いだ!帰ろ!」
はくと「そうだね!」
2人は美術室を出ると鍵を閉めて、職員室へ向かった
翌日の放課後、はくとは部活へ行くと真っ先になつのところへ向かった
なつ「おぉ、はくと!どうした?」
なつははくとが勢いよく来たため驚き、目をぱちぱちさせた
はくと「昨日帰る時にモナリザの目から黒いのが流れていた気がしたって言ってたじゃん?」
なつ「う、うん、それがどうしたの?」
はくと「僕ね、気になっちゃって調べてみたんだ!そしたら"モナリザの怪"っていう都市伝説があるって掲示板に書いてあったんだ!」
なつ「へ、へぇ〜」
なつは、はくとの勢いに戸惑っている。はくとはそれに気づいた
はくと「ご、ごめん、びっくりしたよね」
なつ「うん、びっくりした…でも大丈夫だよ!」
はくと「本当にごめん!」
はくとは、なつの隣の席に座り、切り絵の準備をする
なつ「本当にそんな都市伝説があるの?」
はくと「わからないけど、目から黒いものが流れるってところが一緒だったからもしかしたらそうかもって思って」
なつ「そんなのただの冗談だと思うよー?しかも多分昨日のは見間違いだし!はくとは見てないんでしょ?」
はくと「う、うん」
なつ「じゃあ見間違いだ!切り絵進めないと!来週には提出だよ!」
はくと「そ、そうだね」
はくとは納得しきれていないが、あきらめて切り絵をした
しかし、はくとはなかなか集中できなかった
はくと(なんでだろう…)
さっきのことをまだ気にしているのだろうか
はくと(でも、あんまり気にしてるつもりないんだよなぁ)
しかしなぜか心がモヤモヤする。何かの視線を感じ、わずかに後ろを向いた。後ろの壁にはモナリザが飾ってある
はくと(これか〜…)
ずっと、視界の端っこにわずかにいたモナリザが原因だろう。モナリザが見えないように身体の角度を変えるが、後ろから見られている感じがして落ち着かない
結局、集中できずに部活が終わってしまった
はくと「はぁ…来週に間に合いそうにないよ〜」
なつ「意外と細かいもんな〜」
部員「先生!先輩!さようなら!」
はくと「あっさようなら〜!」
なつ「さようなら〜!」
顧問「さようならー!気をつけて帰れよ〜!」
片付け終えた部員たちがどんどん帰っていった
はくと「え、みんな早くね?!」
なつ「僕たち喋りながらだからペースが遅くなっちゃってたんだよ!」
2人は急いで片付ける
顧問「また川田と芹本が最後か、戸締りよろしくな!昨日と同様に鍵は閉めたら職員室に戻してくれ!」
はくと「はーい!」
なつ「わかりましたー!」
先生は職員室へ戻っていく
なつ「はくと、片付け終わった?」
はくと「今ちょうど終わったよ!」
2人はバッグを持つと、窓や忘れ物などを確認する
はくと「大丈夫そうだね!」
なつ「電気消すよ〜!」
なつは電気を消す。するとはくとは美術室を眺める
はくと「暗いとちょっと怖いね」
なつ「都市伝説のこと考えてるからじゃない?あんなの嘘だって!帰ろ!」
はくと「うん、そうだね!ごめんごめん!」
2人は美術室から出ると鍵を閉め、職員室へ向かおうとした。その時___
カタッ…カサカサッ…
はくと「え…?」
なつ「なんだろ…?」
はくと「何かが落ちたのかな?」
なつ「確かに、そうかもね」
2人は気にせず職員室へ行こうとした
?「ウゥゥ〜…アァァ…」
次はうめき声が聞こえる
はくと「どういうこと?」
なつ「中に誰かが残ってるのかな?」
はくと「でも最後僕たちだけだったよね?」
なつ「確かに…」
なつは美術室のドアの方へ歩き出した
はくと「あっ待ってよ〜!」
なつ「やっぱ美術室の中だ。入って確かめよ」
はくと「えぇ、まじ?」
なつは鍵を開け、中に入る。はくともためらいながらも入った。なつはパチッと電気をつける。すると、衝撃な光景が広がっていた
なつ「え…なにこれ…」
はくと「何があったんだ…?」
美術室の後ろのほうの机や椅子、作品などが散乱していたのだ
はくと「泥棒?」
なつ「でも入った痕跡なさそうだよ」
はくと「じゃあなんで?」
なつ「はくと!あれ!」
突然、なつが声を上げて壁に向かって指をさした。そこにはモナリザがある。そのモナリザは目が真っ黒になって、そこから涙のようにねっとりとした黒っぽいものが流れている
はくと「なつが昨日見たのってあれ?」
なつ「うん、あんな感じだった…」
はくと「流れてるのってなんなの…?」
2人はじっとモナリザを見つめる。するとはくとはハッとした
はくと「あれ、血だよ!通ったところが赤黒い!!」
なつ「ほんとだ…!!」
モナリザ「ウゥゥ〜…」
モナリザからうめき声が聞こえた。その瞬間、電気が消え、辺りが薄暗くなった
はくと「うわぁっ!」
なつ「停電?!」
なつは電気のスイッチをカチカチする。しかし電気は全くつかない
はくと「なつ!ドアが開かない!」
はくとが逃げようとしたらドアが開かなかったのだ
なつ「そんな!閉じ込められたってこと!?」
はくと「そういうことだよね?!どうしよう!」
2人はパニックになる
ギギッ…ギィィ…
突然何かがきしむ音がした。音のした方を見ると、モナリザの首から上が絵から飛び出していた
なつ「あいつ抜け出そうとしてるよ…」
はくと「あんなことってあんの…?」
モナリザ「アァァ…アァァァァ!!」
モナリザの顔が飛び出し、手が勢いよく伸びてなつの首を掴んだ
なつ「うっ…!」
モナリザ「フフフ…」
モナリザはなつを絵の中へ引っ張る
はくと「なつ!!」
はくとは慌ててなつの足を掴んだ
なつ「はく…と…!」
はくと「離せぇ〜…!!」
はくとは必死に引っ張る。しかし、モナリザの力が強く、ジリジリとはくとも引っ張られてしまう
はくと「はぁぁっ…!!離せーー!」
モナリザ「キィィ…!」
必死に引っ張るはくとを鬱陶しく思ったモナリザはもう片方の手を伸ばし、はくとの首を掴んだ
はくと「うぅ…や、やめろぉ…」
なつ「はな…せ…!」
2人はモナリザの手を離そうとするが全く動かない
モナリザ「フフフフ…」
2人はどんどん絵に向かって引っ張られる
2人は意識が朦朧としてきた。もう目の前にモナリザの顔がある
「もう大丈夫だよ」
誰かの優しい声が聞こえたのを最後に意識が途切れた
目が覚めるとはくととなつは美術室前の廊下に座っていた
先生「あぁ!目が覚めたか!」
先生「よかったー!」
2人の周りを複数の先生たちが囲んでいた
はくと「え…なに…?」
なつ「僕たち、なんでこんなところに…?」
2人は訳が分からず、顔を見合わせる
顧問「なかなか職員室来なかったから心配して来たんだよ!そしたら2人とも廊下で気を失っていたんだよ!」
はくと「…モナリザは…?」
顧問「モナリザ?それがどうした?」
なつ「僕たち、モナリザに襲われてたんです!」
顧問「そんなことあるわけないだろう!おそらく夢を見てたんだよ」
先生「川田さん、芹本さん、保護者の方に迎えにくるように頼むから休んでいてね」
はくと「はい…」
なつ「ありがとうございます…」
先生達は職員室へ戻って行った
はくと「…どうせ信じてくれないよね」
なつ「僕らだけの秘密にしておこうよ」
はくと「そうだね」
2人は、この出来事について誰にも話さないことにした
数時間後、ある少年が美術室のモナリザを見つめていた。その少年にはツノが生えていて赤い瞳の左目には十字架が刻まれている。ワザワイだ。
ワザワイ「なんであの子らは助かったんだ…?こいつに捕まったら離れられないのに」
ワザワイは怪訝な表情を浮かべる
ワザワイ「呪いも消えてるし…まぁいい、次のところで上手くやればいい」
ワザワイはそう言うと美術室から去って行った
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます