アンサーさん
たつき「あぁもう!なんで解けないんだよ!」
中学3年生の横山 龍樹(よこやま たつき)は机に広げられている問題集を睨んでいた
たつき「あぁもうやだっ!一旦休憩!!」
たつきはベッドに飛び込んで仰向けになった
たつき「こんなんで受験受かるのかよ…俺…」
そう呟いてため息をつく。たつきは行きたい高校があるのだが、三者面談のとき、先生に「あと100点は必要だから少し厳しいかもな」と言われてしまった。諦めるのが嫌だったたつきはそれから必死に勉強していた。しかしわからない問題だらけで最近は自分に苛ついている
たつき「なんで俺ってこんな勉強できないんだろう…」
その時、コンコンッとドアをノックされた
たつき「誰〜?」
なな「私〜!入って良い?」
たつき「あぁ、姉ちゃんか。いいよ〜」
2歳上の姉の奈々(なな)がドアを開け、顔をひょこっと出した
なな「勉強の進み具合はどう?」
たつき「全然進まないんだよ…こんなんで受かるのかな…」
なな「きっと大丈夫だよ。だって勉強誰よりも頑張ってるじゃない」
たつき「…まぁね。でも解けないやつばっかりなんだよ!」
なな「不安な気持ちはわかるよ!私だってたつきと同じ感じだったよ」
するとたつきは起き上がってベッドに座るとななを見て少しムスッとした
たつき「姉ちゃんはもともと勉強できるだろ」
なな「そんなこと無いわよ!」
たつき「そんなことあるだろ!いつも400点は普通に超えてたじゃん!」
なな「それは…そうだけど…」
するとななは困った顔になってたつきを見つめる。それを見たたつきは申し訳なさそうな顔になった
たつき「あ…ごめん姉ちゃん…」
なな「大丈夫。勉強しすぎてイライラしてるんだよね!お疲れ様!」
たつき「あ、うん、ありがとう」
するとななは部屋から出ようとドアを開けた。その時、ふと立ち止まって振り返った
なな「あっそうだ、もしどうしても受験に受かるか知りたいならその方法教えてあげるよ」
たつき「えっ?!なにそれ?!」
勉強机に戻ろうとしていたたつきは驚いて目をまんまるにした
なな「知りたいっ?」
たつき「知りたい!教えて!」
なな「え〜どうしよっかな〜」
たつき「はぁ〜?!姉ちゃんが言い出したのに?!」
ななはいたずらっぽく笑う。それを見てたつきは再びムスッとした表情になる
なな「明日火曜日ってことは数学の小テストだよね!」
たつき「うん、そうだけど」
そこまで言った時、ハッとした
たつき「まさか!」
なな「ふふっ、90点以上取れば教えてあげる」
たつき「言うと思ったぁ〜!」
なな「たつきならいけるでしょ!」
たつき「無理だよ!数学は大の苦手なんだよ!」
するとななは目を細める
なな「知りたくないんだ〜」
たつき「し、知りたいよ!」
なな「なら頑張って〜!」
そう言って手を振りながらななはたつきの部屋を出ていった
たつき「くっそ〜、あいつ〜!」
たつきはななにむかつく。しかし、正直者のななは本当に90点以上取らないと教えてくれなさそうだ。
たつき「まぁ、成績も上がるだろうし一石二鳥って考えるしか無いか」
たつきは再び勉強をすることにした
翌日の数学の時間、たつきは小テストの丸付けをしていた
たつき(えっ今のところ半分正解してる!)
最後まで丸付けをして点数を数えた
たつき「よっしゃ!」
たつきは点数をみてつい大声で叫び、立ち上がってしまった
先生「どうした?そんなにいい点数だったのか?」
たつき「あははっ、すいませ〜ん!初めて90点取ったんですよ!!」
先生「おぉ〜、すごいじゃないか!頑張ったな!」
たつき「まぁやるときはやる男なんで」
先生「そっかそっか。いつもやってほしいけどな」
するとクラスが笑い声に包まれた
家に帰るとたつきは真っ先に姉の部屋へ行った
たつき「姉ちゃ〜ん、入って良い?」
しかし返事がない。すると玄関から「ただいま〜」と姉の声が聞こえた
たつき「なんだよ、今帰ってきたのかよ」
たつきが玄関へ行くとななはビニール袋を持っていた。近くのコンビニで買い物していたらしい
たつき「姉ちゃんおかえり〜」
なな「ただいまー。小テストどうだった?」
たつき「ギリギリ90点だった!」
なな「お〜!やればできるじゃん!じゃあ約束通り教えてあげる。私の部屋で待ってて!」
たつき「ほ〜い」
たつきはななの部屋へ行くと床に座って待った。しばらくして、部屋のドアが開いた
なな「お待たせ〜。たつきもお菓子食べる?」
たつき「うん!食べる!」
ななは持ってきたポテトチップスを開けて、小さな机に広げた
たつき「ねえ、受験に受かるか知る方法ってなに?」
なな「たつきは“アンサーさん”って知ってる?」
たつき「知らない」
知らないし、聞いたこともなかった。ななは「そっか」と言うと、アンサーさんについて話し始めた
なな「アンサーさんは公衆電話に関する都市伝説で、お金を入れずにある番号にかけるとアンサーさんに繋がるんだって」
たつき「えっお金入れてないのに繋がるの?」
なな「そうらしいよ。それが都市伝説っぽいよね!それで、アンサーさんはどんな質問にも答えてくれるの!」
たつき「そうなの!?アンサーさんすげぇな」
たつきは都市伝説や宇宙人など不思議な話が好きで、興奮していた
なな「だけど注意が必要だよ!質問は3回までしかしちゃいけないの!」
たつき「もし3回以上質問したら?」
なな「そしたら電話の中に引きずり込まれちゃうらしいよ」
たつき「まじかよ!」
なな「でもそれ守れば安全だから!アンサーさんに聞けば受験に受かるかどうかすぐわかるでしょ!」
たつき「そうだね!姉ちゃんありがとう!」
たつきはななから電話番号が書いてあるメモをもらうとポテトチップスを1枚口の中に放り込み、自分の部屋へ行った
たつき「部活引退したし、明日アンサーさんに聞きに行くか!」
そう思ったが、あることに気がついた
たつき「そういえばこの町に公衆電話ないな」
この町に限らず、最近公衆電話が少なくなっていて、なかなか見かけない
たつき(隣の町にあったりしないかな?)
たつきはあまり隣の町を歩いたことがないためどんな町か知らないが、もしかしたらあるかもしれないという希望を持っていた
たつき「電車で5分くらいだし、行ってみるか!」
するとさっそく明日の出かける用意をした
翌日の夕方の4時ごろ、たつきは隣町を歩いていた
たつき「公衆電話ないなぁ〜」
1時間くらい探しているが全く見つからない
たつき「もう帰ろっかな」
このまま歩いていても見つかる気がしなかった。それに、1時間も歩いていて足が疲れてきていた
たつき「ちょっと休も〜!近くに公園ないかな?」
1分ほど歩くと小さな公園を見つけた。そこには誰もいなかったためブランコに座った
たつき「まったく…公衆電話どこにあるんだよ〜…」
ワザワイ「君、公衆電話探してるの?」
たつき「え?」
突然前から話しかけられ、顔を上げるとそこには同じくらいの歳の見知らぬ少年が立っていた。その少年は2本のツノが生えていて赤い瞳で左目には十字架が刻まれている。ワザワイだ
ワザワイ「もしかしてアンサーさんやろうとしているの?」
たつき「なんでそれを?!」
ワザワイ「だって、今時公衆電話使う人なんていないでしょ。特に君みたいな学生はね」
たつき「それもそっか。ってか君はアンサーさん知ってるんだね」
するとワザワイはふっと笑った
ワザワイ「こういう都市伝説はよく知ってるよ」
たつき「そうなんだ。そういうのってどうやって知るの?」
ワザワイ「どうやってか…」
ワザワイは少し考えると再びたつきを見た
ワザワイ「僕は元々知識があったけど…大体は学校とかネットにある噂からじゃないかな」
たつき「へ〜、まあそうだよね!」
ワザワイ「それで、アンサーさんに何質問するの?」
たつき「俺今年高校受験があるんだけど志望校に受かるか聞きたかったんだ」
するとワザワイは「ふーん」と相槌を打った
ワザワイ「じゃあアンサーさんに聞く時のコツを教えてあげるよ」
たつき「ほんとか?!」
ワザワイ「コツというかやった方がいいことだけどね」
たつき「教えて!」
たつきは前のめりになる。するとブランコに座っていたことを忘れていてそのまま前へ倒れてしまった
たつき「いってぇ…」
ワザワイ「大丈夫?」
そう言いながらもワザワイは少し呆れたような視線を送っていた。たつきは立ち上がると苦笑いをしながらワザワイを見た
たつき「悪い、俺昔からドジなんだ」
ワザワイ「そうなんだ」
ワザワイはそんなことには興味なさそうな反応をした。
たつき(なんか、こいつ無愛想だな…)
そう思いながらもワザワイに尋ねた
たつき「やった方がいいことってなに?」
ワザワイ「本当にアンサーさんか確かめることだよ」
たつき「確かめるの?なんで?」
ワザワイ「もしアンサーさんじゃない人に繋がったらどうするの?」
たつき「確かに、わかんないよな」
ワザワイ「それに、やり方を間違えると電話の中に引きずり込まれてしまう。だから本当に3回までなのか、あとどんな質問にも本当に応えてくれるのか確認した方がいいよ」
たつきはそれを聞き、「なるほど」と納得した
たつき「ありがとう!これで安心してアンサーさんに聞くことができるよ!」
たつきはそう言って歩き出そうとした。その時、ワザワイが口を開いた
ワザワイ「ちなみにだけど」
たつき「ん?なに?」
するとワザワイはたつきの前方を指さす
ワザワイ「公衆電話、目の前にあるよ」
たつき「えっ?!」
驚いてワザワイの指がさす方をみると確かに緑色の公衆電話が設置された電話ボックスがあった
たつき「なんだ、目の前にあったじゃん!全然気づかなかったよ!ありがとう!」
ワザワイ「はぁ…君は抜けてるところが多すぎて呆れるよ」
たつき「あはは〜、ごめんなー」
たつきはまた苦笑いをした
たつき「よし、聞くぞー!」
メモを見て「よしっ」と小さく言うと電話ボックスへと入っていった。そしてメモに書いてある電話番号を打とうとした。そのとき、ワザワイが外から話しかけてきた
ワザワイ「電話番号打つのは受話器を取ってから」
たつき「そうなの?知らなかった!」
ワザワイ「まったく…」
たつき「ちょっと君ここにいてくれない?」
ワザワイ「いるつもりだよ。君だけだと色々心配だ」
たつき「よかった〜!困ったら頼るね〜」
ワザワイ「はいはい…」
ワザワイはため息をつき、少し哀しげな表情でたつきを見守る。たつきは受話器を取ると、今度こそ電話番号を打った。そして受話器を耳に当てる
たつき「何も聞こえない…」
ワザワイ「…そのまま待っていればきっと出るよ」
たつき「わかった」
深呼吸をすると受話器にしばらく耳を澄ます。やがて小さくプツッと電話に出たような音がした。すると低くて太い男の人の声が聞こえた
?「もしもし…?」
たつき「も、もしもし!アンサーさんですか…?」
アンサーさん「はい」
たつき(やった!出た!)
たつきは振り返ってワザワイを見る。それに気づいたワザワイはうっすらと微笑み、頷いた。たつきは再び受話器に耳を当てる
たつき「えっと、質問は3回までですよね?」
アンサーさん「はい」
たつき「本当にどんな質問にも答えてくれるんですか?」
アンサーさん「はい」
たつき(うわ、本当だったんだ!)
たつきはちらっとワザワイを見る。ワザワイは真剣な表情でたつきを見つめていた
たつき(この人、たぶん俺のこと応援してくれてるんだろうな)
ぎゅっと受話器を握り直し、深呼吸をすると受話器に耳を当て、息を吸った
たつき「俺は、志望校に受かることが出来ますか?」
シーン…
アンサーさんからの回答がない
たつき「あれっ、アンサーさん?います?」
たつきは何度もアンサーさんを呼ぶが、全く返信がない
たつき(いなくなった?)
そう思い、耳から受話器を離した瞬間、その受話器から大きな黒い手が出てきた
たつき「うわぁぁ!」
驚きのあまり受話器から手を離す。すると黒い手はあっという間にたつきの顔を掴んだ。
その瞬間、ワザワイは電話ボックスの扉を開け、その黒い手に向かって手のひらを向けた。すると公衆電話から黒いモヤが現れ、ワザワイの左目にある十字架が光る。すると黒いモヤはワザワイに吸収されていった
ワザワイ「あとはアンサーさんを消せば…」
ワザワイは呪文を唱えようとする。しかし、それを止めた
ワザワイ(キヨラくんを待った方がいいのか…?)
ワザワイは最近都市伝説を消した時、気づいたことがあった。それは都市伝説を消すとかなりの体力が消耗されてしまうことだ。
前回消した時は攻撃をされた後だったため、ふらついてしまい、歩くのも一苦労だった。この力を使わないことが身のためだろう
ワザワイ(でもこの子は…)
そのままにしておくと、たつきは受話器に引きずり込まれてしまう。どちらを優先するべきか、ワザワイに迷いの表情が浮かんだ
しかし、突然ワザワイの中で何かのスイッチがパチっと切れた。すると、ワザワイはかざしていた手を下ろし、ふっと笑った
ワザワイ「まぁいいや、諦めよ」
そう言うと、受話器の中に引きずり込まれているたつきを見た
ワザワイ「危険な目に合わせた僕に助ける権利なんてないよな」
すると、その場から歩き出した。その時、黒い手とたつきの姿はすっかりと無くなってしまった
夜、ある公衆電話の前にキヨラが立っていた。キヨラは地面を見つめている。そこには電話番号の書かれたメモが1枚落ちていた
キヨラ「アンサーさんをやった人がいるんだ…」
険しい顔でメモを見つめる。すると、2台ほどのパトカーが近くにやってきた。そのパトカーの中には家族らしき人たちが乗っている。誰かを探しているようだ。それを見てキヨラは悟った
キヨラ「もう手遅れだったか…」
苦い表情を浮かべ、公衆電話を見る。するとそこに手をかざした。そしてキヨラの青い瞳が光る。すると、公衆電話は光る。しばらくするとその光はおさまった
キヨラ「早くワザワイを止めないと…」
そう呟くと道の先を睨み、歩き出した
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます