襲いかかる影

ある日、中学2年生の瑞夢 サイワイ(ずいむ さいわい)と桜井 翔(さくらい かける)と紺青 瑛人(こんじょう えいと)は学校が終わり、一緒に帰っていた


えいと「今日の英語まじで地獄だったよな!」


かける「本当に地獄だった!」


サイワイ「まさかの説教から授業始まったもんなー」


えいと「2人だけが課題出せなかっただけであんなに怒るか?」


すると苛つきながらそう言っているえいとにサイワイとかけるは呆れた視線を送る


サイワイ「その2人のうちの1人はえいとだけどな」


かける「元はといえばお前のせいじゃん」


えいと「そ、そうだけどさ〜!わざわざみんなを巻き込むなって話!!」


それを聞いた2人は「はいはい」と呆れたように同時に言った


えいと「ほんとごめんって!」


かける「ちゃんと課題出せよ〜?」


サイワイ「次巻き込んだら許さないからな〜!」


えいと「はい!すいません!次からは忘れないよう精一杯努めます!!」


するとサイワイとかけるは「よろしい」と声を揃える。そして3人は顔を合わせると同時に吹き出した


かける「よし、これから秘密基地行くんだっけ?」


サイワイ「そうそう!ちょっと整理したいなって思ったんだ!」


えいと「確かに物多くなったよな〜!」


3人は最近秘密基地を作り、遊ぶ時はいつもそこで遊んでいた。

集まるたびにゲームやプラモデルやお菓子など、いろいろな物を持っていき、それをそのままにして帰るため、今は秘密基地の中に物が溜まってしまっているのだ


かける「だからもう一つバッグ持ってこいって言ってたのか」


サイワイ「そういうこと〜」


えいと「サイワイって特に目立ってはないけど綺麗好きというか、ちょっと几帳面なところあるよな。」


サイワイ「そうかもだけど、流石に秘密基地はそろそろ足場なくなるよ?」


かける「確かに。足場なかったら遊べないもんな!」


会話をしているといつの間にか公園裏まで着いた。3人は少し奥にある小さな林へ入った。そこから1分ほど歩いたところに小さな小屋がある。それが秘密基地だ。サイワイは小屋の扉を開ける。そして小屋の中を見た3人は一瞬言葉を失った


えいと「うわぁ…」


かける「サイワイ、そろそろ足場がなくなるじゃなくてもうなくなってるよ…」


サイワイ「うん、ごめん…思っていたより物に溢れてたみたいだ…」


3人は顔を合わせて苦笑いし、また小屋に視線を戻す


えいと「整理じゃなくて掃除だな」


サイワイ「手前から片付けるか!」


かける「そうだね〜」


えいと「入れなかったら話にならないもんな〜」


3人は入口付近に置いてある物を全部それぞれのバッグに入れていく


サイワイ「このカードゲームどっちの?」


かける「俺の!」


サイワイ「このカードは?」


えいと「あっ!それ俺の!ずっと探してたけどここにあったんだ!」


かけるとえいとはサイワイからカードを受け取る


かける「誰だよ、漫画に俺らの写真挟んでしおりにしてる奴?」


サイワイ「あっそれ僕!」


えいと「おい〜、なんでしおりにしてるんだよ」


サイワイ「別にいいだろー!漫画読むたびにこの写真見ることできるんだし!」


サイワイは少し頬を膨らませ、少しえいとを睨む


えいと「なに可愛こぶってんだよ?」


サイワイ「はぁ?可愛こぶってねぇし!」


かける「戯れあってないで早く片付けろよー!」


サイワイ&えいと「ごめんごめーん!」


3人は必死に片付けをするも、一向に片付かない


えいと「もー、俺片付け苦手なんだよな〜!」


サイワイ「僕たちみんな苦手だよ」


かける「この床みたら一目瞭然だな」


かけるの言葉に同感したサイワイとえいとは思わず笑う


えいと「…にしてもよくこんなに物溜めたなぁ〜」


かける「サイワイが片付けようって言わなかったらこのままだったな」


サイワイ「それはやばい」


えいと「疲れたよ〜、ちょっと休もうよ!」


かける「まだ片付け始めたばっかりだろ」


サイワイ「もうちょっとやったら休もう。だから頑張ろーぜ」


えいと「は〜い」


えいとは口を尖らせながらも周りのものを片付けていった






2時間後…


サイワイ「やばっ、いつの間にか暗くなってるじゃん!」


えいと「終わりにしようよ!」


かける「そのほうがいいよね!」


3人は小屋の中を見回す


えいと「半分片付いたからいいよね」


かける「こんなにやったのにまだ半分なのか…」


サイワイ「僕たちどれだけ物溜めてるんだよ…」


3人は同時に「はぁ…」とため息をつき、ヘラッと笑った


サイワイ「もう半分は明日やろう!」


かける「そうだな!」


えいと「よーし!帰るぞー!」


3人は荷物を持つと小屋を出て、林の中を歩く


かける「暗いと林って怖いね」


サイワイ「幽霊出るんじゃね?」


えいと「サイワイは幽霊とか都市伝説とか信じる?」


サイワイ「信じな〜い!でも本当にあったらちょっと面白そうじゃない?」


そう言ってサイワイはニッと笑う


かける「俺もそう思う!」


えいと「だよなー!しかも今春だけど暑いから涼しくなるにはちょうどいいかもだな!」


かける「あっ、でも俺あんま怖いの好きじゃないから嫌かも…」


それを聞いてサイワイとえいとは驚いた


サイワイ「かける怖いの苦手なの?!」


えいと「意外だな…!」


かける「俺そんなイメージ持たれてなかったんだ、初めて知った」


かけるがそう言った時、3人は林を出た。道は街灯がいくつか付いているため、林よりも明るかった


えいと「おー、安心!」


かける「この道夜でも明るいのいいよな!」


サイワイ「ね〜!帰りも安全だな!」


そう言って3人は歩き出す。その時、かけるが立ち止まった


サイワイ「かける?」


えいと「どうした?」


かける「あそこに黒い人がいる」


サイワイとえいとはかけるが指さすほうを見る。すると街灯の下に顔がない全身真っ黒な人の形の影が歩いていた


えいと「なにあれ…影か?」


サイワイ「でも街灯の下にいるのに人が見えないよ?」


かける「歩き方が異様だよな?しかもなんか速くなってね?」


黒い影はどんどん近づいてくる


サイワイ「これ、逃げた方がいいやつだよな?」


えいと「多分そうだよな?!逃げようぜ!?」


サイワイとえいとは走り出す。するとサイワイはかけるが着いてきていないことに気がついた


サイワイ「かける?早く!」


サイワイが振り向くと、かけるは足がすくんでしまい、動けなくなっていた。黒い影はどんどん近づき、かけるの前で止まると、影が異常なほど大きくなり、かけるを襲おうとした


サイワイ「かける!!」


サイワイは慌ててかけるのもとへ戻るとかけるを突き飛ばす。そして黒い影の方を見ると、影は壁のように大きくそびえ立っていて、上から飲み込むようにサイワイへ襲いかかった。

その瞬間、サイワイの目の前が真っ暗になった













____現在、ある高校の理科室にワザワイが立っていた


ワザワイ(そうだ、瑞夢 サイワイは僕の名前だ…!ってことは僕は元々人間だったってことか…?!)


ワザワイは今まで消えてしまっていた記憶が蘇り、戸惑いながらも目の前にいる3人の男子高校生を見る。その高校生はワザワイが先ほど『マダム・コイコイ』から救った相手、かける、えいと、ひかるだ


かける「君、瑞夢 サイワイなのか…?」


えいと「俺も気になったんだ、なんかサイワイに似てる気がする。教えてくれ、君はサイワイか…?」


ひかる「えっ、この人がサイワイって人なの…?」


恐る恐る尋ねるかけるとえいと。ひかるはそれに戸惑っている。

ワザワイはかけるとえいとを見つめた


ワザワイ(かける…えいと…)


今まで忘れてしまっていた大事な親友が目の前にいる。ワザワイは問いに対して「そうだよ」と言おうとしたが、その言葉を飲み込んだ。そして首を横に振る


ワザワイ「たぶん人違いだよ。僕の名前は怪夢 ワザワイ…全くの別人だ」


かける「…そっか…ごめんな」


えいと「あの…本当に助けてくれてありがとな」


ひかる「あ、ありがとう!」


ワザワイは少し微笑んで頷くと理科室から出た


ワザワイ(これでいいんだ…僕が一緒にいたら危険だから…)


自分にそう言い聞かせると職員玄関へ向かう。するとそこには戸惑った表情のキヨラが立っていた


キヨラ「お前…人を助けることできるんだな」


ワザワイ「…ここにはもう都市伝説はいないよ」


キヨラ「なんでいなくなったんだ?逃げたのか?」


ワザワイはそれには何も答えず、無言で玄関から出ていった。キヨラは急いで追いかけたが、もうワザワイの姿は無かった

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